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晴耕雨読:「学習する組織」(表題と目次)

■はじめに
 経営の何かしらに関わる人は、ピーター・センゲの「学習する組織」を読んでいることだろう。しかし、どれほどの人が全文を読んでいるのだろう。
 黒色のこの本は500ページを超え、読むものを拒んでいるようである。
 この書物に全て目を通すと云うことは至難であろう。しかし、最初の数ページを読むだけでこの本を理解することはできないし、断片的な拾い読みでは、組織が学習して成果を出すというプロセスを実現することもできないだろう。
 全てを示すことはできないが、補足的な留意点を整理することで、読書の支援ができることを願う。

■表題の意味するもの

表題は原題として

① The Fifth Discipline
② The Art and Prctice of The Learning Organaization

となっている。
「Discipline」は以下のように本文中に記載がある。

・「強制的な命令」という意味でも「処罰の手段」という意味でも無く、実戦するために勉強し、修得しなければならない理論と手法の体系である。
・あるスキルや能力を手に入れるための発展上の経路である。

もともと「Discipline」は”規制”と言うニュアンスがあるために最初の断り書きがあるのだろう。結局の所「Discipline」とは、手に入れるべき能力の道筋のようなものだと理解される。

したがって、①は「第五の組織能力向上の為の道筋」と云ったところだろうか。
「第五の」と断っているということは、最低でも5つの「Discipline」があることになる。

それは、
・システム思考
・メンタルモデル
・ダイアログ(チーム学習)
・自己マスタリー
・共有ビジョン
である。(P46付近)

そして「第五のディシプリン」として「システム思考」を上げている。
すなわち、この本は「システム思考」の本であると推定される。

②は直訳すると「学習する組織における技巧と実践」であろうか。
ARTには、芸術の他に「名人芸;技巧,熟練」というニュアンスもある。

学習する組織(と思われるもの)を題材にして、「システム思考」をどのように取り扱うのかの指針を示す書籍であると期待される。

■目次

 書籍の概観をつかむために目次を確認することは有効である。
 その例に習って、目次を記載する。

第Ⅰ部 如何に私たち自身の行動が私たちの現実を生み出すか
 ・・・そして私たちは如何にそれを変えられるか

第1章 「我に支点を与えよ。さらば片手で世界を動かさん」
第2章 あなたの組織は学習障害を抱えていないか?
第3章 システムの呪縛か、私たち自身の考え方の呪縛か?

第Ⅱ部 システム思考 - 「学習する組織」の要

第4章 システム思考の法則
第5章 意識の変容
第6章 「自然の型」-出来事を制御する型を特定する
第7章 自己限定的な成長か、自立的な成長か

第Ⅲ部 カクトナルディシプリン-「学習する組織」の構築

第8章 自己マスタリー
第9章 メンタル・モデル
第10章 共有ビジョン
第11章 チーム学習

第Ⅳ部 実践からの振り返り

第12章 基盤
第13章 推進力
第14章 戦略
第15章 リーダーの新しい仕事
第16章 システム市民
第17章 「学習する組織」の最前線

第Ⅴ部 結び

第18章 分かたれることのない全体

付録① 学習のディシプリン
付録② システム原型
付録③ Uプロセス

■最終章「第18章 分かたれることのない全体」

 結びは、その書籍で言いたいことの集大成を表していることが多い。それを期待して「第18章 分かたれることのない全体」を読むと奇妙な感覚に襲われる。

宇宙飛行士の体験を持ち出し、「地球上のすべての生命である生物間はそれ自身が生命体である理論」すなわち「ガイア理論」を持ち出し、下記のようにつづっている。

「自然は、全体の中にある部分で出来上がっているわけではない。全体の中の全体でできているのだ。すべての境界線は、国境も含めて、基本的に恣意的なものである。私たちがそれを作り出し、そして皮肉なことに、自分たちがそれにとらわれて身動きできなくなっている。」

あたかも「システム思考」が万能かのように使われることを懸念し警鐘を鳴らしているかのようである。

■この本は誰のための本なのか

ざっと見た限り、たしかにこの書籍は「システム思考」についての本ではあるが、その技法よりは、そのシステム思考を用いて経営マネジメントをどのように考えるのかについて主眼が置かれている。
答えが書いてあるというよりは、多分に哲学的なようを含んでいるかもしれない。
それは実務家に向けての本ではなく経営者に向けての本かもしれない。

(続く)

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