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第3の選択肢:決断と失敗を恐れない勇気(いなげやとイオンの統合)

■サスティナビリティ

持続的な発展を約束するものなどない。
すべての試みは実験であり、そして結果を約束するものではない。
しかし、踏み出さなければ結果は得られるものではなく、そして必要なのは、未来にひるまない気持ちだけなのかもしれない。

冒険心がなければ誰も見たことのない果実をその手に取ることはできない。

■身近なスーパーのニュース

私が住む谷塚には、スーパーと言えば「いなげや」しかない。もちろんもう少し足を伸ばせば他のスーパーはあるが駅前には「いなげや」が陣取っている。

そんないなげやの名前が載るニュースを見た

○イオン、「いなげや」を子会社に 投資・調達を効率化
2023年4月25日

イオンは25日、首都圏地盤で食品スーパー大手のいなげやを連結子会社化すると発表した。2023年11月メドに出資比率を17%から51%に引き上げる。24年11月にはイオン傘下のスーパー子会社と統合する方針だ。スーパーは新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要の反動減や物価高で足元は低調。ネットスーパーなどデジタル投資も単独では限界だ。イオン連合で投資や調達を効率化し生き残りを図る。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2425Q0U3A420C2000000/

身近な企業なので、時々ホームページで財務情報などを見ている。
コロナの影響もあるだろうし、購買行動の変化による品揃えの対応も難しく、正直ぱっとしないと言うのが印象にある。

しかし、だからといって直ちに「いなげや」が業績不振になるとは思えなかったので意外なニュースである。そもそも、かつての「ダイエー」のように全国展開するという戦略ではなく、限られた経営資源の中で、事業の集中という戦略をとっていると理解しているので、全国チェーンの集団の傘下に入ることは意外ではあった。

■M&Aの事情

M&Aは、当然のことながら「効果」があるからこそ行なわれる。しかし、今回のM&Aはどんな効果があるのだろう?
正直「いなげや」がそれほど追い込まれているとは思っていなかったの最初のニュースには驚いた。

しかし、いくつか解説記事があり、ある程度理解できた。

○イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い、減益が続く事業を拡大する裏事情
2023.4.28

 イオンが首都圏の食品スーパー「いなげや」を子会社化すると発表しました。現在の出資比率の17%を今年11月をめどに51%の過半数に引き上げたうえで、最終的には同じイオン傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)に経営統合する方針です。

イオンが食品スーパーの「いなげや」を子会社化すると発表しました。しかしイオンの食品スーパー部門における営業利益は2年連続で減益し「ほぼ半減」状態です。なぜ、利益が減る事業を拡大するのでしょうか。その裏には3つの狙いがあるのです。

https://diamond.jp/articles/-/322292

すなわち、「いなげや」が望む吸収合併ではなく「イオン」の事情だという。
そして成功の条件として

(1)「全体としては苦境だが、その中にうまくやっている地域や子会社があって、その成功を全体に移植できる場合」

(2)「共通して使える大規模投資が必要なケースでそれが有効な場合」

(3)「これまでの赤字要因の縮小が確実に見込める場合」

を上げている。
しかし。いずれも確約されたものではない。「共通して使える大規模投資が必要なケース」も何がそれであるかを教えてくれるものもない。

そうであれば、イオンはどんな勝算があるのだろう。

■競争地位別戦略

マーケティングの大御所であるコトラーは、質的経営資源(技術力、マーケティング力、ブランド力、トップのリーダーシップ等)と量的経営資源(社員数、資金、生産規模等)の大小により、模倣、差別化、集中化、全方位という戦略的な方向性の違いを示している。

「いなげや」は、大きな差別化はできないものの特徴を持たせた店作りや、集中化を進めて生き残りをかけていると理解している。一方で「イオン」業界のリーダーシップを目指しているのだろう。「いなげや」と「イオン」では立ち位置が違うだろう。地域で見ればカニバリゼーションを起こしかねない。戦略の違いが、どう解消されるのか。

正直に言えば、この選択が正解かどうかは全く分からない。旨く行くかどうかも分からない。分かっていることは、こうした決断は容易ではなく、そして動き始めると簡単には軌道修正はできないだろうと言うことだ。

いなげやが業績に伸び悩みがあることは事実であろう。また小売業自体が優勝劣敗が色濃く出始めていることも否めない。しかし、非成長事業同士を統合したとしても画期的な成果が出るとも思えない。

難しい選択だと思う。

■「失敗」に捕らわれたリーダーシップでは先に進めない

冒険心がなければ誰も見たことのない果実をその手に取ることはできない。
と冒頭で述べた。

このM&Aが成功するかどうかは分からない。こうした合従連衡は成功を約束したものではないし、劇的な成果を出せるとは限らない。多くは「生きながらえる」だけかもしれない。

しかし、戦略がメガ企業を目指すことで成り立つなら、それに従うことも正解の一つであろう。「競争地位別戦略」だけが道を指し示すわけではないが役に立つ。

実行に必要なのは失敗を恐れないリーダーシップだろう。

<閑話休題>

(参考記事)
○イオンがいなげやを買収!鬼門となったイトーヨーカ堂の去就は?
2023-04-28
https://maonline.jp/articles/aeon-inageya-20230428

○スペースXの「スターシップ」は打ち上げ後に爆発したが、試験飛行は決して“失敗”ではない
2023.04.21

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