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戦略人事・記事探訪:複線化する調達戦略(就業者人口も3年内離職率も変わらない)

■マクロデータの不変

20年前の出生率は20年前のものであり、今更変えることはできない。少子化は必然であり、従って就業者人口が増えるわけではない。したがって、皆がこぞって賃上げをしようが自分の会社の新入社員が増えるわけではない。

3年内離職率も2000年頃からの統計データを見ても変わりは無い。一定程度の離職がある。いったん採用した社員が離職することは痛手ある以上対策も必要であり、賃金問題は対応は必然である。

悲しいかな、そうしないと離職が進む恐れがある。

○賃上げ率が平均4.8%を下回ると給与に不満を抱き、4.0%%を下回ると転職や退職を考え始める傾向
2024.03.20

世界的求人サイトIndeedの日本法人であるIndeed Japanは、20~59歳の正社員を対象に「賃上げに関する意識調査」を実施。その結果からわかった「賃上げ率に伴う就業者の意識・行動の変化」を公開した。

就業者全体では約+5%を下回る賃上げ率で給与に不満を感じはじめる傾向にあり、大企業の就業者よりも中小企業の就業者のほうが、不満を感じはじめる賃上げ率が高いことがわかった。

https://dime.jp/genre/1753820/

もっとも、こうした意識調査があったとしても実際にそうするかどうかは分からない。
しかし全ての会社に当てはまるわけではないが一顧する価値はある。

■人事としての調達の選択肢

こうした、ヒトの調達の難しい状況で企業が取り得る戦略は先鋭化してきている。

(1)中途採用

 人事戦略が「生き残り」の色彩が強くなることで、価値の値付けができない人財の排除と高い価値の人材の採用に振り切ってしまう報道が見られる。富士通などは、数年前に大規模リストラを行ない「ジョブ型雇用への移行」を宣言している。

○富士通の「3000人早期退職」が映す人材戦略の課題
2022年3月25日

富士通は「企業や自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援事業の強化」「システム開発を請け負う事業から、データ活用などの分野に絞ってサービスを提供する事業モデルへの転換」といったことを戦略として打ち出しています。

富士通は20年4月から管理職を対象に「ジョブ型人事」を採用していることでも知られています。ジョブ型人事とは、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)に合わせ、適材を雇用・配置し、成果で評価する雇用方式です。欧米で広く普及しており、人が仕事に合わせるのではなく、仕事に合った人間を充てる、また、労働時間ではなく成果で評価するという発想に基づきます。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC22CWN0S2A320C2000000/

これに伴い、「高い専門性や豊富な経験を持つ即戦力人材」に焦点を当てて、”中途採用”を積極的に調達することを宣言している。

○富士通、24年度は中途採用倍増 2000人以上、新卒採用は「ジョブ型」のみに
2024年03月19日

富士通は19日、2024年度の採用計画を発表した。中途採用は計画数を定めずに2000人以上(23年度採用見込みは1000人)とし、高い専門性や豊富な経験を持つ即戦力人材を通年募集する。新卒採用は応募時に職種を定めないコースを廃止し、内定時に職種や配属先を確約する「ジョブ型」人材マネジメント形式のみの募集とする。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024031900680

現在、ビズリーチなどの転職サイトも整備されてきており、今後の人材の流動化を考えるとその動きは止らないかもしれない。

(2)第2新卒

少し驚いたのだが「プライオリティパス」という言葉が就職戦線の記事の中に登場した。

○就活解禁!内定辞退も「プライオリティパス」で優遇?
2024/03/06

「内定後、入社をしなかった学生に関しても今後、転職とかでお付き合いがあるかもしれないので、そういう人間関係を続けるというような企業が増えてきています」

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000339857.html

もともと「プライオリティパス」は、航空会社などが行なう会員サービスことで「プライオリティ・パスでは、空港ラウンジで軽食やドリンクを楽しんだり、オフィス設備が整った環境で仕事をすることができます。」という説明がわかりやすい。

内定辞退と「プライオリティパス」がどう結びつくのかと他の記事を見ていると、どうやら「内定辞退」しても気が変わったり、後日、再就職を希望した場合「最終面接」から始められる得点のようなものらしい。

そこで狙っているのは、いわゆる第2新卒のようだ。

※第二新卒についての生成AIのコメント
・厚生労働省の調査によると、平成25年卒で3年以内に離職した人材の割合は31.9%で、人数では131,763人となっています。
・第二新卒の転職市場では、社会人としての基礎的なスキルとポテンシャルを持つ人材が需要が高まっています。企業の人員戦略上、採用のニーズは高まっており、企業の84.2%が積極的に採用すると回答しています。

(3)アルムナイ

「アルムナイト」は数年前から話題になることがあり、単純に云えば
・いったん退職した人とも関係性を維持する
・退職者同士のコミュニティを支援する
・復職を促す
といった活動の総称のようだ。

一部の企業話題となっていたが、その傾向は続いているようだ。

○マツダが元社員の再雇用を制度化、本格的にアルムナイ採用を開始「復帰後の意欲や士気が非常に高い」
2024/03/19

アルムナイは英語で「卒業生」や「同窓生」を意味し、社風や仕事の進め方を理解しているのが強みとされる。

 自動車業界では、電動化や自動運転といった先端技術の開発競争が進む一方、車体やエンジンなどの知識を持つ人材も必要となる。

 このためマツダは4月に人事制度を大幅に見直す。人事改革推進部を新設して研修や昇給、評価の仕組みを変える方針で、アルムナイ採用はその一環となる。デジタル領域を中心に、専門性の高い人材に高額の報酬を提示することも検討しているという。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240319-OYT1T50030/

○「アルムナイ」の広がりに伴う“さまざまな声”について、私がいま思うこと
2024.3.14
https://diamond.jp/articles/-/340045

離職されたからと云って「さようなら」としてしまえば、育成コストの放棄になる。
友好な人事施策の一つだと思う。

もっと云えば、こうした「アルムナイト」の組織に他社の人間も参画できるようにすると思わぬ採用チャネルになりうる。

■戦略人事

多くの採用チャネルが構築されると従来の人事制度では対応でき無い。すなわち、新卒採用・終身雇用を前提として大雑把な職能資格制度や賃金制度では、高度に流動化した人材市場には不十分である。

まずは、どのような働き方が求められているかを明らかにする「ジョブ型雇用」のフレームワークを策定する。それは賃金は勤続年数や年齢などとは分離せざるを得ない。いつでも参加が可能なレースのメタファーになる。どんなレースがあるかはジョブの種類だけ用意しなければならないだろうし、報酬体系もジョブの数だけ必要になる。

教育訓練も、ジョブの執行能力の向上、移転をサポートしなければならない。従来の階層型研修をしていれば良いという話ではない。

人事部門の社員に関する情報管理を高度化し、彼らとの対話力を磨かなければならない。人材のコントロールの要である以上、それにふさわしい能力開発が人事部門に求められることも自覚しなければならない。

(2024/03/20)

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