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薄情な私と愛嬌のある兄


私には双子の兄がいる。


幼い時から集団行動が苦手で、好き勝手に行動しては周囲を困らせていた。


でも愛嬌だけはあるから、親戚や外出先で会う人からも割と可愛がられていた。


一方で私は(兄よりは)「しっかりしてるね」と言われていた。兄が周囲に迷惑ばかりかけるので、せめて私がしっかりしないと!と少しは思ってきたつもりだ。

ある日気に入らない事があったようで、人前でも兄が私を叩いたり蹴ったりしてきた時も、心の中では「やり返してやりたい…!」という気持ちを押し殺して我慢していた。(女の子が男の子相手に仕返しするのも何だかなぁと。)

恩を着せる気は無いが、何だかんだで代わりに謝ったり、さり気ないフォローもしていたつもりだ。


元々の性格と日頃の小さな我慢の積み重ねの結果なのか、私は兄とは反対で、身内に対して無愛想で冷淡だった。


いつも心のどこかでは、親戚の家や外出先で可愛がられている兄に嫉妬していた。


私たちは高校生になり、兄は不登校気味になった。感覚が過敏なせいで、周囲のクラスメイトの会話や雑音が気になったと話していた。


両親は兄を休ませた。

というか、休ませざるを得なかった。毎朝布団の中で唸って動かない兄を、そこそこ歳の行った両親が根気強く起こそうとするのは無理があった。私も自分の朝の支度があるので無視していた。


この頃から、兄に対して嫌な感情を抱くようになった。


小学生時代、クラスで孤立してストレスで胃を壊し吐き気を催しながら登校していた時も両親は私を休ませなかった。


でも、それは私が1度でも休むと2度と登校出来なくなるような性格だからということを分かっていたから、あえて休ませないようにしてくれていた。それは愛情だったと分かっていた。


それなのに、どうしても「私は休ませて貰えなかった、辛さを分かって貰えなかった」という気持ちばかり先行してしまっていた。同時に休んでいる兄が憎たらしかった。


その感情は成人してからも変わらなかった。


ある日両親から「(兄)が困っていたら、アンタも少しは助けてあげてよ。家族でしょ」と言われて、遂に私は頭に来た。


「いつも(兄)ばっかり!私は(兄)がどうなろうと知ったこっちゃない!もう助けたくもない!」と言った。



 兄ばっかりじゃなくて、私だってちゃんと両親に可愛がられているのに。


すると、「アンタって薄情だね。そんな考えの人が家族にいると…」と言われた。


口ではそんな酷い事を言っていても、結局私はそんな兄を助けるのになぁ…。と悲しくもなった。


上手く表現出来ないが、弱者側の人間を助けないと言うだけで薄情者になってしまう。



もう兄は可愛いがられて、私は薄情な悪者でいい。


口では薄情な事を言っていても、必要な時は助けてあげるよ。家族だもん。









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