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自炊するサイボーグ絵のメイキング

絵を描きます

久しぶりにしっかりした絵を描くのでモチーフで奇をてらわずに単純かつありふれたカメラアングルや舞台設定を使いたい気分です。

私は現代の日常生活+現代ではありえないキャラクターをモチーフにして時々描くので、今回の絵もこのテーマに沿って作ることにしました。

一例(アーマードコアのホワイトグリント)

テーマ:一人暮らしアパートのキッチン×自炊するSF必殺仕事人

「SF必殺仕事人」は昔々当時のTwitterでもらった同名のお題から想像して描いたキャラクターです。ゆえに絵が下記の一枚しかありません。
これをキャラクターのベースにします。

これがSF必殺仕事人だ!

こんな殺意の高いサイボーグ的な奴がアパートで自炊してたらギャップで面白そうじゃありませんか?面白そうですよね。では描きましょう

構図をつくる

何を描くかが無事決まったので構図を考えます。

あんまり難しい事をしたくなかったので何年も前に集めた一点透視なキッチンの写真を引っ張り出して下書きに使っています(当然見せられない)
パースも家電の配置も写真をなぞってからワンルームっぽくなるように編集するだけなのでめちゃくちゃ気が楽。


とりあえず写真通りの間取りで描く

シチュエーションとカメラ位置がほぼ決まっているのでキャラの位置も自ずと決まりました。写真ベースはこういうところも楽々で助かる。

SF必殺仕事人が身長いくつかは知りませんが腰をかがめて窮屈そうに作業をさせれば狭い部屋・キッチンという要素を強調できそうなのでかなり高身長にしました。

引き続きキッチンにありそうな物を配置しましょう。冷蔵庫、電子レンジはすでにあるので
他には画面に入ってないであろう風呂場のための洗濯物入れ、調味料等をしまうスリムなラックを手前に置いてみました。狭い家に物がぎゅうぎゅうに詰まってる感じを出したいですね。

キッチンの向こう側にある居間の物も何となく置いておきます。演出の都合で色や形がコロコロ変わる事が予想される意外と大事なポジションです。

関係ないカービィを描きこんで遊んでいる

絵全体の色味については仕事人を寒色寄り、仕事人より奥を暖色寄りにすれば寒色の仕事人が目立つだろうという事でそのような色分担を意識した作りになっていきます。
同時に明度もコントロールして仕事人の異形なシルエットがよく見えるように調節します。キャラの顔と垂れ下がった幕辺りのコントラストを上げるようにします。
明度は後でもっと差をつけるように調整すると思います。

それっぽくなってきた!


SF必殺仕事人がナチュラルな人ではない事を
分かりやすくするために脚の形を変えました

サムネイルサイズのラフ

ちなみにラフを描いてる間は超ちっさいサイズで描くようにしています。(たまに忘れる)

このときは約570×840px

描きすぎ防止とこのサイズの段階で絵の印象、特に明度をコントロールしておきたいからみたいな感じです。ブラシサイズも小さくしすぎないように制限してます。
どこに何があるかだけ分かればオッケーということにして詳細が必要なら下書きの段階に入ってから描き足します

日本の家狭すぎ問題

ここまでやっておいて、全然ワンルームらしさのある家具配置になってない事が発覚しました。ついさっきの段落まで偉そうに御託並べてたくせにこのザマです。

SUUMO で色んなワンルームの間取りを見ると基本的にキッチン台の裏に冷蔵庫を置くスペースなんぞない。ラフのキッチンは広すぎたんですね。

ワンルームとか1Kって大体こんなんだよね

猫の額みたいな家で何とかやってる感を出したいのでこの嘘すぎる間取りで突っ切るのもなぁ、うーんどうしよう!?
などと悩んだ挙句渋々描き直すことにしました。すっかり忘れてたけどまだ構図決めの段階だからどんだけ画面の要素ひっくり返してもいいんだった。

見て見ぬふりをしてたけど
あるべき所に洗濯機置いたら手元も全部隠れる

描き直しを渋っていたのは手間がかかることよりも左側がほぼ壁になるので画面が一気に寂しくなるのが嫌だったのですが…


ラックに掃除道具を詰め込みました

風呂のドアを置いて賑やかしにしました。悪くない。
赤い電子レンジが消えたことで鮮やかな暖色が居間のカーテンだけになったので手前にいる仕事人がより際立つかも。

あと演出のためにやや嘘をついてキッチンの手前側のパーティションを排除しています。

大体の要素が出きったのでこれで構図決めを終えて下書きに入ることにしました。

当初の雰囲気からはかなり違う仕上がりになりそうだ

パーツ分けして清書

ラフをそのままキャンバスサイズまで拡大していい感じのところに合わせます。
思ったより横幅が広くてちょい困ったんですがとりあえず全部描くことにして進めます。

しれっとキッチンのレンジフード辺りの形を大改造しています

作業のしやすさを考えて冷蔵庫、キャラ、右の壁、左の壁とそれ以外でレイヤーを分けておきました。
この後も必要ならレイヤーは増えたり減ったりします。

ベタ塗り直後の様子

もう後は資料を見てひたすら物を描いておけば良いので気が楽です。
大きな色の塊※から塗っていって少しずつ小物を描いていきます。
※洗濯機とか床とかカーテンなど面積が大きくて色が目立つもの


ベタ塗りも終わったので手始めに洗剤のそれっぽいシルエットを置いてプレースホルダーみたいな感じにしておきます。柄はあとでam⚫︎zonとか使って調べれば良いし!

1に資料2に資料

…とか思っていたのですが
ここまで来てキッチンユニットの細部の形で迷走しだしました。
今更?

※この記録は絵の作業と並行して書いているので前段の発言と矛盾したことを今やってる可能性もあります。

スチールの白い網網置こうかなとか
突っ張り棒使いたいから
ちょっとだけパーティションつけてみるか!?とか

最終的に縦に長い突っ張り棒をかけてそこに台を置くようにしました。
構図決めの後にあれこれ検討するのがめんどくさかったのでもう変えません。
みなさんはこれを反面教師にしてください。

今見たらキッチンペーパーの位置が高すぎるかも

三悶着くらいありつつ洗濯機横のスリムラックもひとまず全部埋めました。
洗濯とトイレ、風呂掃除の道具が一通り置いてある想定です。
こういう賑やかしの小物は情報量と描画コストが増えないようにベースカラーだけ入れて影や無駄なハイライトは描かないように気をつけています。

元ネタがはっきりしてるものもありますね

全体の途中経過です。
説明しませんでしたが風呂の扉の位置が変わっていたり、床の描画がごちゃごちゃしてうるさかったので一度塗りつぶしたり、床のパースが一時期歪みまくって迷走したりなどしました。

時々画面をグレースケールにして見て
最初の明度計画からずれすぎてないかチェックします

最後まで走り切る


今度こそ残りは描くだけ(の予定)なのでどんどん細々したものを足していきます。
明度(とトーン)だけラフの計画から逸脱しないように、それ以外は説明することがほとんどありません。

片付けてなさそうな居間


来週資源ごみに出すつもりの空き缶


架空の水切りラック
&小松菜的なもの

大体要素は出尽くしたので最後の大物、主役のSF必殺仕事人を清書しなければなりませんね。
最初に書いた通り資料が何年も前に書いた絵一枚しかないのでここまでほぼずっとほったらかしにしていました。
この文を書いている今もノープランです。どうしよう

引きだとギリ誤魔化せそうだけど
少しでも寄ったら無理な感じの書き込み具合
これがSF必殺仕事人の全資料だ!(再掲)



描きました

手首から先は洗濯機で消えるので描いてません。
まじまじ見るとエイリアンぽい

もう気をつけたポイントとか無いです。立体の辻褄が合ってるかとかも分かってません。
資料の仕事人は鎧を多少着込んでいる風だったのでそういったものを取り払ったくらいです。家で仕事着着てることってあまりないですからね


全てを合体


これで本当の本当に全部描いたので最後にレイヤー効果をかけたりエフェクトを入れて味付けしていきます。

私はこういう絵にノイズを乗せるのが好きなのでprocreate内で適当なカラーノイズを作って適当なレイヤー効果で薄く画面に入れます。
これはカメラで暗いところを映すときに光量が足りなくてノイズがいっぱい乗ってしまう現象を真似したものです。なので明るいところは手でマスクしてノイズが乗らないようにいじってます。


Procreateはアプリ内でノイズを作れる
今回のレイヤー効果はオーバーレイでした
こんな感じで良き所にノイズを入れる

実は前々からうっすら入っていた床の写り込みも調節しました。
左の壁と仕事人の脚がちょっとだけ写り込んでいるのが分かるでしょうか?
フローリングのちょっとしたツヤ感を出すために入れてみました。

壁は白っぽく、脚は黒っぽく写っている、つもり

後は初めての試みとして絵をグレスケで表示したまま各パーツを明るくしたり暗くする作業をやってみました。

一時的に画面をグレーにしたいときは無彩色で塗りつぶしたレイヤーを
レイヤー効果「カラー」などにしてレイヤーの一番上に置くと
簡単にグレー<ー>カラーの切り替えができます
グレスケで作業中
このまま多少の色味を乗せることもある

カラーのままだとあまりやらない思い切った操作ができるので結構ありかも

結果的に色調整はこんな感じになりました

やることやって絵がちゃんと終わったので一晩寝かせてまた明日様子を見たいと思います。


あれから一晩経ちました。
特に印象が変わらなかったのでもうちょっと味付けを試して終わりにしようと思います。

まずはぼかし。
一眼カメラの写真とか、新海誠作品の背景美術みたいな感じで景色の一部がボケてるあれです。

居間をピントが合ってない風にぼかす

仕事人を入れて見てみるとなんとなくエモさが増した気がしますね。
良い感じだけどちょっと作為的になったというか、ドラマや映画のような「作品としてこの場面を撮りました」感が出てしまったのでやめにしました。

自分の目指すテーマに合わなかっただけで画自体はいい感じ

もう一つやってみたいのが色収差です。

試しにノイズのレイヤーを抜いた状態で周りに少しだけ入れてみました。色収差は入れても入れなくてもそんなに印象が変わらなかったので自分の好みで入れることに。
程よく端っこの描写がボケてくれるんで私は好きです。

色収差もprocreateで使える
色収差適用後の画面。
画面端でもこれくらいの弱さ

ノイズレイヤーを戻して、最後の最後にアットホームな雰囲気をねじ込みたかったのでカラーバランスをいじり少しだけ画面をオレンジに染めました。

これでこの絵は完成です!
やった~

家で自炊に興じるSF必殺仕事人(独身)


Procreateの統計情報によるとこの絵の作業時間は約13時間。
当然何日かに分けて少しずつ描いています。
構図というか間取りの迷走込みなので仕方ないのかも。

あそこをああしておいても良かったな、とかあれ試したかったな、みたいな反省は幾つかあるのですが次に絵を描くときに覚えていたら実践しようと思います。

ここまでご覧いただきありがとうございました。
最後に見せられる範囲で絵の作業行程を30秒に圧縮した動画を載せて終わりにしたいと思います。



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