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【ながおし!④】人に喜ばれる農業を 田中真由美さん

長浜市の最北、余呉町のいわゆる中山間地で農業に取り組まれている女性の元を訪れた。
田中真由美さん。小柄だが、お話をしてみて豪快な方だな、との印象を受けた。
田を3町と、畑(主にニンジン)を1町ほど作られている。
まず、なぜ農業を始められたのか、伺った。

笑顔で取材に答えていただく田中さん

おじいさんが兼業農家として農業に取り組まれており、そんなおじいさんの姿にあこがれがあった、「こういう大人になりたい」という人がおじいさんだった、と話す田中さん。
また、大学生時代、素敵な農家の方との出会いが農業を始める後押しとなったとのこと。
おじいさんには農業を始める前や、始めてからも「止めておけ」と言われたが、農業は性に合っているんじゃないかな、と話す。
農業の面白さは「気づき」が常にあること、また、視点が大きく変わることがあり、それがとても楽しい、とのこと。
ただ、小柄なのでどうしても力仕事はつらいんです、と笑顔。厳しいが、地域の皆さんとの「ご縁」で続けられていると話す。
作られた農作物は、お米は主に直売、野菜はスーパーや給食に出されている。
地域の方に食べてもらいたいとの思いから、給食に出したかったところ、「ご縁」があり、出させてもらうこととなった、とのこと。給食のにんじんは社会人向けの農業学校の先生に教えてもらった品種で、一般にはあまり出回っておらず、とても甘くておいしいと評判だ。

収穫されたニンジン

そんな田中さんに「理想とする農業とは?」と質問をぶつけてみたところ、「地域の中で必要とされる農家、当たり前に地域に組み込まれ存在するのが理想」と答えてくれた。
余呉で生まれ育ち、小さなころから身近なところに農業があった。
ご自身が生まれ育ってきた大切な環境を守りつないでいきたいという思いが感じられた。
ただ、余呉地域での農業、特に野菜作りには苦労が絶えないそう。
例えば、土壌はお米作りに適している水持ちの良い土であるため、水はけが大切な野菜作りにはネックになる。また、気温が上がらないことも野菜の生育の妨げとなる。

農作業の様子

苦労が絶えない中、農業に取り組まれるのは、ご自身の体験にも由来している。
かつてアトピー性皮膚炎を患っておられ、治療のため食事の見直しをされたとのこと。
その際、食べ物の大切さを改めて実感したそう。
この時の経験から、「体に優しいものを作りたい」、「人に喜ばれるものを作りたい」という強い思いが、田中さんが農作物を作る原動力となっている。

農業に取り組まれている原点は自身の経験から

最後に「夢」を伺った。
田中さんは少し考えられた後、まっすぐにこちらを向いて「あれを作ってみたいな、とか、この栽培法を試してみたいとかはありますが、その時その時の「ご縁」を大切に、自分ができることに取り組んで、結果として生まれ育った地域のためになればいいな。」と答えてくれた。
こちらの漠然とした質問にも、まっすぐ、誠実にお答えいただいた。

生まれ育った地域に恩返ししたいとの気持ちが伝わってくる

インタビューの中で田中さんはよく「ご縁」という言葉を使われた。
農業の道に進むきっかけとなった血縁であるおじいさん、農業学校時代の先生、介護のお仕事をされていた時に農園を任せてくれた方、農業をするうえでサポートしてくださった周囲の方、農作物の出荷先の方などなど、偶然もあって、いろいろな人との「ご縁」で助けていただいて今の自分があるとはにかんだ笑顔でお話しいただいた。
その笑顔を見て、偶然ではなくすべての「ご縁」は田中さんが引き寄せた「必然」なのだと感じ、晴れやかな気持ちで取材を終えた。

(とくぞう)