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第1章マインド編 心に寄り添う栄養指導に必要な考え方

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今日は第1章マインド編です。

栄養指導に必要なマインド 

栄養指導とは『クライアントがより健康に、より心豊かになるための行動変容をもたらすための関わり』です。その栄養指導に必要なマインドについてこの章ではお伝えします。


 いくらノウハウや知識を積み上げても、このマインドがないと心に寄り添うことはできないと感じます。「受けてよかった」「あなたから指導を受けたい」と思ってもらうには心に寄り添うマインドが土台となるのです。


相手に興味を持つこと…スキルや知識よりも必要なこと

 栄養指導に必要なのは知識でも経験でもなく、相手への興味です。大切なのは、クライントがどうしてその食生活を送っているのか、どうしてその知識を実行しているのか、ということを深く知ろうとすることです。なぜならば誰も不健康になりたいと思ってはいないからです。不健康に向かうその食行動を起こしているのには必ず理由が存在します。


 昼食を食べない中田さんは、食べるとすぐお腹の調子が悪くなってしまうため、仕事に支障をきたしてはいけないと、仕事を全うするために昼食を食べずにいました。コーラを毎日1リットル飲む野田さんは、仕事で初めてプロジェクトリーダーを任され、嬉しい反面極度のプレッシャーから、無意識のうちに毎日コーラに手が伸びていました。

 ”昼食を食べましょう” "コーラを飲むのをやめましょう" そんなことは言われなくても本人が一番わかっていることです。そうではなく、なぜこの食習慣を送っているのかな? それを知ろうとすることから栄養指導は始まり、またそれを知ろうとしないことには本当に相手にとって有益な栄養指導はできないのです。


■信じきること…「後ろにいる」スタンス

 指導、カウンセリング、コンサルティング、コーチングなど対クライアントを支援するための様々な名称、役割があるかと思います。あなたのスタンスは指導ですか? カウンセリングですか? それともコーチングでしょうか? 

  心に寄り添う栄養指導を行う前提として、この"スタンス”を自覚することをお勧めしています。


広辞苑には以下のようにそれぞれ

指導…目的に向かって教えみちびくこと。
カウンセリング…個人のもつ悩みや問題を解決するため助言を与えること。
コンサルティング…専門的な事柄について相談に乗ったり指導したりすること。
コーチング…指導・助言すること。


と定義されています。

 名称よりもそれぞれクライアントと自分の立ち位置でイメージするとわかりやすいかもしれません。指導とはどちらかというとクライアントの上や前にいて引っ張っていく様なイメージ。カウンセリングは隣にいて同じ方向を向いて一緒に進んでいくイメージ。コンサルティングやコーチングは少し離れた横の位置にいて、伴走していくイメージ。コンサルティングが全体的、コーチングは部分的といった関わる範囲が違う。わたしはそういうイメージを持っていますが、みなさんのイメージはいかがでしょうか。

 その上で、あなたの栄養指導での立ち位置はどこでしょうか。前ですか? 隣ですか? それとも少し離れた横の位置でしょうか? これは正解不正解があるのではなく、みなさんそれぞれのスタンスです。わたしはというと、前でも隣でも横でもなく、クライアントの"後ろにいる”というイメージを持っています。

 わたしの栄養指導は1回受けていただけたらそれで十分、くらいに考えています。自立してその方が自分で選んで実行できる力を持ってもらいたい、と考えています。

 ですので、その都度どうしたらいい、ということを一つ一つ指導するよりも、その人がその人らしく人生を楽しめる様に自分自身で決断し、行動してもらいたいと考えています。わたしはそれを後ろでみていて、あまりにも逸れそうであれば声をかけ、本人が自分で修正できる様な関わりを持ちたいと考えています。


 心に寄り添う、とはとことん相手を信頼する力です。何もぴったりと横についていることではなく、クライアントは自分で今よりきっとよくなるし、そのための行動を自分で選び取ることができる。それをとことん信頼して応援することなのです。

■答えに導くこと…もう惑わせない

今のこの情報社会の中で、知識はあふれています。クライアントも本やメディアでたくさんの情報をご存知です。情報をうまく収集し、ライフスタイルを確立している方もいれば、情報が偏り、どうしたらいいか惑わされている方も多くいます。


例えば、わたしが非常勤で行っているクリニックは乳がんの患者様が多く来院されています。乳がんの患者様は、乳がんが発覚したら乳がんについて調べます。


 糖質はダメ、牛乳はダメ、四つ足の動物は食べてはいけない、にんじんジュースを毎日飲まなければいけない、など食事についても様々な情報が氾濫し、中には信憑性に乏しいものや「これさえ食べなければがんにならない」というような突飛な言葉で煽るものも存在します。"怖い”情報をみては、食べてはいけないんじゃないか、これを食べたらもっと病気が悪化するのではないかと食事の時間が楽しめなくなっています。


 栄養を専門にしているわたしたちであれば、加減したり、受け流すことができそうな極端な情報も、がんになった当事者にとっては藁をも掴む思いで実践しようとし、悪とされることは少しでも払拭したいとストイックに思い込んでしまうのです。


 わたしたちがこういった患者様と向き合うために大切なことは何でしょうか? 

 誰をも説得させる最新の論文の内容を提示することでしょうか? 正当な科学的根拠を端的に話し"間違い”を正すことでしょうか?

 
 もちろん、こうした研究成果や科学的根拠をわたしたち指導者が知識として得ておくのは必要なことだとは思います。ですが、AかBかCかと迷っている人に対して「Aだ。いやDだ。」と答えを提示すると、また情報が一つ増え、ますますどうしたらいいかわからない状態になりかねません。答えを提示するのではなく、患者様が自分で、どうしたらいいかを選び取ることができるようになるように導くことが、栄養指導の大切な役割ではないでしょうか。


 食べることに怖さや罪悪感を感じている人がこれほどに多いものかと知らされます。そんな方々に食べる楽しみを思い出してもらいたい。わたしはまずはその人の一番の理解者になって、共感し、賞賛し、励まし、応援したい。こうした思いで、一人の人間として向き合ってきました。


 指導が終わったあと、患者様がほっと安心し、笑顔で診察室を後にされると、続けていてよかったなと感じるのです。


 では、こういった◯◯を食べてはいけない、と思っている方に対してどのように接すればいいでしょうか。


 牛乳は飲んでも大丈夫ですよ、豚肉や牛肉も食べてもいいですよ、とただ言っても、その方には「怖さ」があるのでそれを払拭しない限り食べてもいいという判断にはならず、食べることを試みたとしても怯えながら食べたり、「またこれで悪化するかもしれない」と悪い結果を見ようとしてしまいかねません。

 情報に惑わせないようにするためには、患者様の本音を引き出すこと。本当はその人がそれを食べたいのか食べたくないのか。それを引き出すことです。


 例えば、牛乳は飲まないほうがいいのかと悩んでいる方に対してわたしはこんな風にお話しします。

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