見出し画像

艶女は不滅なり? 雑誌NIKITAの考察

艶女

さて、何と読むでしょうか。

正解は

アデージョ

でした。正解したあなたには、10マツコポイントをプレゼント。2兆ポイント貯めて、100円と交換してください。という冗談はどうでもよくて、さてはあなた、雑誌NIKITAをご存知ですね?

2004年、かの有名なちょい不良(ワル)オヤジの教科書「LEON」とともに華々しく創刊された女性ファッション誌「NIKITA」。30代女性の肉食性を前面に押し出し、「モテ」や「SEXY」にこだわったリッチでゴージャスで相当眩しい雑誌だったという印象を持っています。キャッチコピーは「コムスメに勝つ!」。久々に思い出して検索し、「懐かしい~!」と検索結果の画像を眺めていました。独特な造語も印象深いですね、モテる中年女性を表す「艶女(アデージョ)」、20代の若い女性を指す言葉「コムスメ」艶尻(あでじり、SEXYなお尻のこと)、地味女(ジミータ、地味服の女性のこと)、アニマリータ(アニマル柄を着こなす女性)…。
刺激的な造語の数々に、「私もコピーライターになりたい!」と思ったほどでした。

「LEONはOver40の男性をターゲットにした雑誌で、NIKITAはOver30の女性ターゲット。それぞれの読者は不倫関係にある、というコンセプトらしいよ」と、私の師匠が教えてくれたのも忘れられません。現代ならばSNSで大炎上、市中引き回しの上打ち首獄門ですが、約15年前はぎりぎりセーフだったのも、時代を感じます。

さて、NIKITAを懐かしむのもこのくらいにして、ここからは文体もである体に変えて私の考えたことを綴っていきます。
スタートとなる問いは、「NIKITAはなぜ3年強で廃刊となったのか。」

※統計データの調査や十分な時代考証ができていません。あくまで個人の感想、経験、思い込み上の分析であることを最初にお断りしておきます。お含みおきの上、お読みください。※

大々的なプロモーションにより登場したことで知名度は抜群にあった雑誌だったので、廃刊と聞いた時はとても驚いた。あのゴージャスなNIKITAが、なぜ。定期購読者ではなかったが、淋しい気持ちも少しあったと思う。

この度改めて考察し、「①変化する女性のライフステージと、②変化する市場のニーズ(価値観)に合致しなくなっていった」のではないかと結論付けた。

①変化する女性のライフステージ
 ご存知の通り、女性のライフステージは大きく変化する。学生時代を経て就職し、結婚、出産、子育て、など。NIKITAがターゲットとしていたover30の女性たちは、この変化の、特に結婚や出産といった大きな変化の真っただ中ドンピシャに当てはまる。読み始めたときはシングルで「LEONおじさんとの不倫関係」でよかったかもしれないが、真剣に結婚を考えるならLEONおじさんではいけないなとか、妊娠したら10センチピンヒールなんてはけないなとか、子育てしてたら艶尻なんて言ってらんないわ、と読者が離れて行ってしまったのかも知れない。ようは、「同一読者をとどめておく(一緒に成長していく)コンテンツにはなれなかった」ということ。
 成功例として、時同じく2000年代前半に「蛯原友里・押切もえ・山田優」で女性ファッション誌業界を席巻したCancamを思い出してみる。もともと20代の大学生~職業婦人をターゲットとしていたが、読者とモデルたちが等しく年齢を重ねるも人気は衰えず、ついにアラサー世代向けの「Anecam」(お姉さん系Cancam)を創刊するに至ったのだ。「年齢を重ねてライフステージが変わっても、美しく」という女性の潜在ニーズに寄り添った雑誌となった。

②変化する市場のニーズ(価値観)
 読者とともに成長せずとも変わらずover30女性をターゲットに、という戦略もあると思う。現に、今生き残っている多くの雑誌はそうしている。時代の変化を読み取り、或いはトレンドを提案し作り出しながら同じ年齢層にアプローチしている。NIKITAがそれを実現できなかったのは、少しでも外れるとそれはNIKITAではなくなってしまうほどにコンセプトがガチガチに固まっていたからだろう。「モテ!」「コムスメに勝つ!」「不倫!」というNIKITAの魂ともいえる部分が、時代と合わなくなってしまったのである。
約15年経った今の時代を見てみよう。「肉食系」という言葉の流行は落ち着き、表紙に「モテ!!!!」とでかでかと書いている雑誌は見かけない(モテたい、という需要は常に潜在的にはあるが表現方法が変わっている)。モノ消費よりコト消費、若い女性vs中年女性というキャットファイトはもう古く全女性一丸となって互助会成立してこう、というパラダイムシフトが起こっている。そんな時代のNIKITAってどんなものだろう?「モテ!」「コムスメに勝つ!」「不倫!」というコアの部分から変えなくてはいけない。それはもうNIKITAではなく、他の雑誌でやればよくなってしまう。

NIKITAがもたらしたもの
発行期間が3年強だったとは思えないほど、私たちの心や時代に大きなインパクトを残したNIKITA。賛否はあったし、好き嫌いもあったけれど、over30の女性たちが大きく飛躍するための踏切板になってくれたとも思う。NIKITAだけでなく、この時代の雑誌や書籍や諸々のすべてが飛躍の踏切板になってくれていたが、その中でもNIKITAは「わかりやすく発信する」「堂々と発信する」「存在感を放つ」という役割を担っていた。少々乱暴なやり方ではあったが、表現方法の一つとして存在していたことで、「おばさん(侮蔑の意味での)」や「若年女性至上主義」といった古く歪んだ価値観をブルドーザーでなぎ倒し、新しい道をガリガリと整備し、私たち女性が安心して歩ける道を作る一助になったのではないだろうか。


時代は変わる。価値観も変わる。
そんな中でも、私は単純に当時のキツめの女優メイクやギラギラゴージャスでリッチなファッションは嫌いではない。いつか友人たちとちょっとしたパーティでも開いて(ちょっとしたパーティとは何ぞ、という話はまたどこかで)、チャレンジしてみようかしら。

パーティータイトルは、「NIKITA20XX」で決まりだ。


ながいけまつこ




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?