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ベンチャーディールズ(2)登場人物たち -Venture Deals / Main Characters-

以下、米国VC・Foundry GroupBrad FeldJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。

講師はベンチャーキャピタリスト、聴講者は起業家です。Venture Deals2020年夏のオンラインコースはもうすぐ始まりますが、まだ参加は間に合うと思います。ご興味ある方は是非。

今回は「Main Characters」のセッションを和訳してみました(和訳することについてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております)。他のセッションも順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。

なお、Venture Dealsについては、本でも出版されており、またこちらもベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になる、シリコンバレーVCのバイブルのような本なので、是非ご一読ください。

(以下、講義和訳)

(クリント)起業家は資金調達プロセスでどのような役割を果たしていますか?弁護士に資金調達を外部委託することはできないのでしょうか?

(ジェイソン)まず第一に、この産業が成り立つ理由は起業家がいるからです。起業家なしではベンチャーキャピタル産業は存在し得ないのです。

起業家が資金調達を弁護士にアウトソーシングするなんてことは絶対にあり得ません。 なぜなら会社のレピュテーションを他の誰かにアウトソーシングする合理性がないからです。あなたが雇った人が、あなたの会社の資金調達プロセスにおけるフロントパーソンになるのです。雇われ弁護士がベンチャーキャピタルと交渉するなんて嫌ですし、普通あなたはベンチャーキャピタルと直接的な関係を持ちたいはずです。

(クリント)ベンチャーキャピタル自体はどうですか?ベンチャーキャピタルの中ではたくさんの人々が働いています。資金調達に重要な役割を担うのはどのような人ですか?

(ジェイソン)ベンチャーキャピタルと付き合う場合、常にパートナーレベルの人物とコミュニケーションを取るようにしてください。マネージングディレクターまたはゼネラルパートナーと言う肩書きはそれに該当します。まずはアソシエイトから会話を始めても構いませんが、すぐにパートナーレベルにアプローチしてください。そうしないと、時間を無駄にしてしまう可能性があります。通常、アソシエイトおよびパートナーシップレベル未満の人々はディール意思決定の権限がありません。

(クリント)エンジェル投資家はどうですか?特にシード投資のステージでは、多くのエンジェル投資家が駆けずり回っています。彼らはどのような役割を果たしているのでしょうか?

(ジェイソン)エンジェル投資家は良いですよ。彼らはあなたに早期に資金を提供しサポートしてくれます。彼らはあなたのビジネスにフォーカスできます。

エンジェルとベンチャーキャピタリストの大きな違いは、エンジェルは通常自分自身のお金を投資しているのに対し、ベンチャーキャピタリストは主に他人のお金を原資に投資していることです。

エンジェルとVC両方が参加する取引を行うこともありますが、重要なのは、リードインベスターを見つけることです。犬と猫を飼うのは難しいです。全投資家の手綱を引き「私が条件も交渉も主導するつもりです」と言ってくれる投資家を見つけることです。リードインベスターが見つかることで、時に彼らのオーラが他の投資家を呼び寄せることがあります。

(クリント)資金調達において、良い弁護士と悪い弁護士の違いは何ですか?

(ジェイソン)面白いのは、私は起業家にいつも「良い弁護士を雇っていますか?」と尋ねるのですが、答えは決まって「はい、我々の弁護士は優秀です」と言うのです。そこで私は「どうやって優秀かどうかわかるの?」と尋ねます。実際、私には優れた歯科医や整形外科医がいるかどうかは知る余地もありません(いわんや弁護士をや、です)。優れた弁護士を雇っているかどうか、起業家はどうしてわかるのでしょうか。

まず行うべきことは、業界内に長い間在籍し、信頼できる人から紹介を受けた弁護士を雇うことです。そしてその弁護士に、ベンチャーキャピタルとあなたの間におけるコミュニケーション方法をアドバイスしてもらうのです。

常に思っていますが、起業家は、VCの弁護士を通じてではなく、VCと直接交渉するほうが、より良い結果が得られます。ディールが良い方向に向かうよう、あらゆる場面で弁護士を活用して下さい。

その他、メンターアドバイザーと言う登場人物もいます。大きな違いは、メンターは自発的にその役割を請け負っている人々であるということであり、たまに起業家からもてなされる美味しいチーズとビールを除き、彼らは見返りを求めていません。

一方、アドバイザーについては、弁護士、会計士、専門家のいずれであっても、通常は報酬を受け取りたいと考えています。彼らは非常に役立ちますが、起業家は誰かにお金を払って手伝ってもらうことに慎重になることを勧めます。優れたメンターネットワークを持つことは非常に重要です。これらの人々はあなたがあなたのビジネスを運営するのを手伝い、資金調達の紹介を行い、あなたを事業にフォーカスさせる素晴らしいリソースになります。常に言われますが、CEOはとても孤独です。話せる人を見つけましょう。

個人的には、ネットワーキングを行うのは早すぎることはないと思います(ただし信頼に足る人々との交流に限る)。私たちは、50-60-80%の時間を、我々がお金を出さないであろう起業家との対話に費やしています。それはコミュニティへの知見の還元、エコシステムの構築、ネットワークの拡大において必要な業務なのです。

優秀な人と一緒にいれば、彼らの経験を学び、そして吸収することができ、会社の成功を促します。

一点注意を。もしあなたの会社が、私の投資担当分野のビジネスを展開しており、かつ私が資金提供をしない場合、私に紹介を求めないでください「スーザン、私はこの会社に資金を提供していませんが、おそらくあなたは気に入ると思うよ」と言うのは一番ダメな紹介です。しかし、あなたが自然食品分野で何かビジネスをしているのなら、私はあなたに何かしら紹介できるつてがあるかも知れません(※Jasonはフード業界投資は担当していないため)。

私たちは他人のお金を受け取り、その資金を増やして返すことで稼いでいます。私たちはいわゆるリミテッドパートナーと言う投資家を抱えています。ベンチャーキャピタリストの構造はパートナーシップ制であり、そのため彼ら投資家はリミテッドパートナー(LP)と呼ばれています。LPには年金基金、寄付金、富裕層、保険会社などがいます。私たちの仕事は、彼らから与えられたお金を、大きく増やして返すことです。そうすることで、一般的には、給与を支払うマネジメントフィーとともに、運用益の20%を受け取ることができるのです(※ベンチャーキャピタルのビジネスモデルについては別セッションにて説明)。

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