見出し画像

Moment 2023 聴講記録 (3)

前回の記事に続き、主だった講演の内容を以下記載したい。

対談:西村康稔 経済産業大臣×ベン・ホロウィッツ

(西村大臣)日本の社会は大きく変化している。大企業から若者がどんどん転職し、スタートアップを起こすという風潮になっている。デフレからインフレにより社会の雰囲気が変わり、大きく企業も変わろうとしている。

ブラックロック、Temasekをはじめ各国の大手機関投資家と話す機会があったがいずれも日本への投資の拡大を考えていることを嬉しく思う。一方で日本にはまだまだ足りない部分があると感じている。日本に期待する部分や足りない部分を教えてほしい。

(ベン・ホロウィッツ)現在、日本には追い風が吹いている。これまで中国がアジアの起業をけん引していたが、最近は中国を去っていく起業家が多い。シンガポールは暗号資産・NFT関連ビジネスのハブになっているものの、過度に規制を引き締めすぎており逆風が吹いている。日本はアジアで住むには最も魅力的。私は日本に来ていつも思うのだが、特にインフラの充実度合いが素晴らしい。起業家を引き付ける魅力は十分にある。

日本に期待したいのは、これからのAIの時代にむけてリーダーシップを発揮すること。過去、ハードウェア全盛の1980年代、日本は非常に強かった。その後のソフトウェア時代でやや他国の後塵を拝したが、これからのAIの時代ではまだ各国で勝敗がついていない。

また、日本のような単一民族・単一文化の国家は世界でも例を見ない稀有な存在である。誰もが安定した一つの文化の下で住むことができている。少しだけでもそのマインドセットを変えることができれば皆が一丸となり、再び任天堂やトヨタ、パナソニック等に企業を作り出すことができるのではないか。

(西村大臣)私は今の日本の社会を「中年おじさん社会」と呼んでいる。これまでは女性、優秀な若者、外国人等の力が足りかった。これからはもっと開かれた国にしていきたい。日本の起業家にはGo Globalと叫び、国内のスモールサクセスに満足せず、海外に飛び出してほしい。シリコンバレーのみならず北欧等にも人材を派遣し、他流試合の経験を積んでもらおうと思っている。
とはいうものの、シリコンバレーは日本人にとって入りづらい文化だと思う。今後開設を予定しているシリコンバレー拠点を我々はどう活用すべきか。海外の人とネットワークを作ること以外にないかあるか。日本は動き出すと早い一方、画一的な社会であり動きが遅い、という課題をどう打破するか。何かアドバイスがあれば教えてほしい。

(ベン・ホロウィッツ)シリコンバレーにいれば、そこにいるだけで様々な人が最新のテクノロジーについて話し合う。その中で人々は自然と次のビジネスチャンスを考えることになる。シリコンバレーに派遣された日本人がそこでビジネスのヒントをつかみ、日本に戻ってそのアイデアを実践すればいい。今、a16zが日本から受け入れているトレーニーの目を見ていると、常に目が輝いている。逆に質問したいが、日本政府が着目している分野はどこか。

(西村大臣)気候変動、脱炭素等の世界規模の様々な課題である。これらの課題を打破するにはイノベーションしかなく、イノベーションの源泉はテクノロジーにある。日本政府は前例のないチャレンジに立ち向かうため1兆円の予算を確保している。

日本には様々な技術がある。5G、医療分野等、様々なテクノロジーを支援していこうとしているが、政府だけでは対応できなきない部分はVCと組んで支援を行う。特に日本政府は半導体部分での投資を後押ししている。

実は私は経産省の課長補佐時代、孫正義さんとよく語り合っていた。孫さんは常に「デジタル、インフラ、世界一になれる事業。自分はこれしかやらない」常々と言っていた。そしてあのときから全く変わっていないな、と思っている。そして孫さんがいうインフラとは、あらゆるサービスの基盤を成すプラットフォームのことだと思っている。

A16zではFacebook等、多様なプラットフォーム企業に投資していると思うが、どんな分野に関心を持っているか。

(ベン・ホロウィッツ)プラットフォームとアプリケーションに関心を持っている。現在、非常に巨大なプラットフォームといえばAIであり、AIを起点として多数のビジネスが今後構築されていくと思っている。ここから防衛、安全保障関連のスタートアップも出てくる。一番興味深く見ているのはヘルスケア、バイオ。血液検査でガンが発見できるといったサービス等が出てきている。また、米国では介護士が不足して人手不足であり、この人手不足をAIは(定型業務・低付加価値業務の代替によって)解決することができる。

もう一つ質問だが、私が日本の助けになるにはどうしたらいいと思うか。

(西村大臣)是非、ベンチャーキャピタリストを育てたい。研修、アドバイス等支援をいただきたい。また、AIを使いこなす人材も育てなければならない。AIの構成要素は大きく分けてデータと演算装置であり、この2つで高精度のAIを開発できるかどうかが決まる。言語モデルだけでなく、ロボットの製造現場の画像、データ、マルチモーダルのAIを開発してきたい。また、日米でのデータ解放等の協働も検討していきたい。

(ベン・ホロウィッツ)ベンチャーキャピタル業務であれば我々に一日の長があると思うので貢献できると思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?