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ゾンビファンドの再来

あるファンドの投資期間の終了後に、後続のファンド(通常は2号ファンドと言われるファンド)が組成できずにGPが実質活動停止となっているファンドのことを「ゾンビファンド」と言うらしい(命名したのはVenture Dealsの講師たちである)。このゾンビファンドと名前は同じであるものの、少し趣の異なるゾンビが今後増えてくるかも知れない。今後増えそうなゾンビファンドとは、ファンド存続期間(通常10年)までに投資先のExitが進捗せず、存続期間後も清算できずにファンドを延命させざるを得ないファンドのである。そんな記事をPitchbookで読んだ(以下リンクご参照)。

「GPはファンド存続期間までにセカンダリー市場を通じて投資先の株式を売却して、LPと当初約束した存続期間を守るべきだ。LPだって自分達の資金がさらに数年塩漬けになるのは嫌なはずだ」と思うかも知れない。ただしこうした手段が取れるのは、セカンダリー市場にて少々ディスカウントして打ったとしても、ある程度のリターンが見込める(当初投資した際のバリュエーションよりもセカンダリー市場での売却価値が上回っている場合)においてのみ成立する話である。特に2020年、2021年のコロナ・テックバブルの時期に投資を行った投資先についてはセカンダリー市場での売却は損切りになる可能性が高い。したがってここで早期に売却してもLPに当初約束したリターンの還元で報いることができない。したがって、将来はどうなるかわからないけれど、ファンド存続期限を延期し、少しでも良い時期で売れるようタイミングを見計らわざるを得ない。

こうしたゾンビファンドは上記のPitchbookの記事によれば2008年の金融危機時にも急増したらしい。そして、すぐに清算することも後続ファンドの調達もすることができず、かといって投資先のExitもすることができずに彷徨いながら、マネジメントフィーだけはLPからもらいながら生きながらえていたという。

ただし、直近の状況は2008年とは大きく異なっているため同じ状況になるとは限らない。シリコンバレーバンクの破綻をはじめとした米国地銀金融危機も、あくまで米国地銀という局所的な危機で、サブプライムローン問題のように世界中の金融機関に拡散されるリスクは今のところあるとは思えない。ので、同じような状況になるとは限らない。米国FRBの利上げも「あと一回だけ」というムードが漂い始め、金利上昇→割引率増加→(DCFベースでの)企業評価額の減少→株式相場の低迷 という流れも一服しそうな雰囲気をわずかではあるが感じ始めている。とは言え市場は完全に読めないので、結論、岸田政権でよく使われる「状況を注視していきたい」としか言えないのだが、願わくば2023年下期に向けて市況が回復しますように。


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