見出し画像

ハム解雇について:火中の栗を拾い、チームを再建し、そして解雇されたヘッドコーチ

ロスアンゼルス・レイカーズのヘッドコーチ、ダービン・ハムがこの度、解雇された記事を読んだ。

ダービン・ハムは2年前の2022ー2023年シーズンからロサンゼルス・レイカーズのヘッドコーチを務めた人物である。

今振り返れば、当時のレイカーズのヘッドコーチなんて誰もやりたがらなかったと思う。

その前のシーズン、2021−2022年シーズンにレイカーズはスーパースターであるラッセル・ウエストブルックを加えて優勝を目指したものの、結果は33勝49敗と散々たる結果に終わっていた。これはラッセル・ウエストブルック、レブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビス(AD)というスーパースターのサラリーが他の優秀なロールプレイヤー獲得の障害となり、結果としてチーム全体でのバランスを欠いてしまい、またレブロンとADは度重なる怪我に悩まされ、ついに本領を発揮することなくシーズンを終えた。そして当時のヘッドコーチであったフランク・ヴォーゲル(現フェニックス・サンズのヘッドコーチ)は解雇された。

さらに悪いことに、当時のチームには将来が全く見えなかった。「今優勝すること」を優先したレイカーズの経営陣は、ラッセル・ウエストブルック獲得と引き換えに将来のドラフト指名権等を一気に放出したのだ。今優勝を目指したにもかかわらず、優勝どころかプレイオフも進出出来ず、チームの明るい将来が全く見通せない。レイカーズは文字通り焼け野原の状態であり、レイカーズは誰からも見放されたチームのように思えた(余談だが、2023−2024年シーズンを終えた現在、同じような境遇にいるチームが一つある。フェニックス・サンズである)。再建の見通しも立たない中、誰もヘッドコーチなんて引き受けたがらないチームに思えた。

そんな中、ヘッド・コーチに名乗り出たのがダービン・ハムだった。

彼が引き受けた当時、焼け野原となったレイカーズの再建に向けた明確なロードマップが見えていたのかはわからない。

彼のヘッドコーチとしてのキャリアのスタートが、焼け野原で失敗の可能性が高いレイカーズとなることで、結果大きく失敗に終わり、今後の彼のキャリアに大きな傷をつけてしまうのではないかとも思わされた。

当時を振り返れば明らかにレイカーズのヘッドコーチ就任はマイナス要素しかなく、賭けるにはリスクが大きすぎると思われた。

だがとにもかくにもダービン・ハムはヘッドコーチ就任を受け入れた。その行為は私には、まさに「火中の栗を拾う」ことだと思わされた。ハムにとって就任するメリットがどこにも見当たらなかったからだ。

もしチームが低空飛行を続けるようであればハムは1年で解雇され、もし仮にチームの勝率が伸びれば、それはそれで次のシーズンからは「優勝を目指すチームとして、更なる進化を遂げるためにふさわしいコーチを新たに探す」との名目で解雇され、レイカーズはまた別の実績十分のヘッドコーチ探しにでも出るのだろうと思わされた。

つまり、ハムはどう見ても焼け野原で再建中のチームにおける、中継ぎの損な役回りを引き受けているしか見えなかった。

繰り返しになるが、だがそれでもハムはヘッドコーチ職を受け入れ、時にはその采配に疑問を呈され、また批判を受けながらも、チームを再建した。

まず2022−2023年シーズンはラッセル・ウエストブルックをベンチスタートとすることでチームのスターディングラインアップにおける攻守を安定させ、オールスターブレイク明けはウエストブルックを引き換えに獲得した真メンバーをうまく采配した。結果、リーグでベストの勝率を挙げ、プレイオフもカンファレンスファイナルまで進出した。

2023−2023年シーズンは、序盤からなかなかスターティングラインアップも安定せず、なかなか勝ち星が伸びなかったが、シーズン途中のインシーズントーナメントでは見事優勝を果たした。

ハム在任中のレイカーズのレギュラーシーズン通算戦績は90勝74敗、プレイオフ通算戦績は9勝12敗である。色々言われているが、ハムは相応の結果を残したヘッドコーチだったと思う。

何よりも、あのどう見ても先が見えない絶望的なレイカーズで、敢えてヘッドコーチを引き受けるという賭けに出て、そして相応の結果を出したハムには敬意を表したい。

冒頭の記事によれば、ハムは他のチームから既にヘッドコーチの打診を受けているらしい。今後のハムの輝かしいキャリアを成功を心から祈っている。

最後になるが、以下、冒頭の記事の参考和訳である。

<参考和訳>
ロサンゼルス・レイカーズは金曜日にダービン・ハム監督を2シーズン限りで解雇した。

チームは今、レブロン・ジェームズの輝かしいキャリアに優秀の美を添えるためにも、優勝争いに参加するために最適な後任を探すべく、ヘッドハンティングを開始している。

契約期間が2年残っていたハムは、2022年にフランク・ヴォーゲルの後任としてヘッドコーチに就任した。そして、レギュラーシーズンで90勝74敗(.549)、ポストシーズンで9勝12敗(.429)、さらにプレーイン・トーナメントで2勝を挙げた。ハムはまた、12月にラスベガスで開催されたシーズン中のトーナメントでレイカーズを初代王者に導いた。

ハムの解雇は、レイカーズが2年連続でプレイオフでナゲッツに敗退した数日後に下された。

「我々はレイカーズを代表してのダービン・ハムの努力に非常に感謝しており、昨年のウェスタンカンファレンスファイナルへの目覚ましい進出を含む、過去2シーズンに達成された多くの成果を認識している。」

レイカーズのバスケットボール運営担当副社長兼ゼネラルマネージャーのロブ・ペリンカは声明でこう述べた。

「我々は皆、ハムの献身と積極性に感謝したい。この決断は難しいものだったが最善の策だと思っている。我々レイカーズは、世界中のレイカーズファンにチャンピオンシップクラスのバスケットボールを提供するというコミットメントを掲げており、それが今後とも揺らぐことはない。」

さらに、レイカーズはハムを解雇した後、コーチングスタッフ全員も解雇した。その中には、ロサンゼルスでハムとフランク・ヴォーゲルの下でアシスタントコーチを務め、クリーブランド・キャバリアーズではレブロン・ジェームズの2度目のコーチ時代にアシスタントを務めたフィル・ハンディも含まれる。

2018年にロサンゼルスでチームメイトになって以来、ジェームズ(71試合)とADは今シーズン最も多くの試合に出た(ジェームズは71試合、ADは76試合)だが、レイカーズは混戦のウェスタン・カンファレンスで第7シードしか獲得できず、第2シードのナゲッツとの対決が決まった。

ナゲッツとのプレイオフにおいて、レイカーズは、第2戦での後半20点リードを含め、シリーズでの4敗すべてで二桁リードを守れなかった。

「とんでもなく素晴らしい2年間だった。とレイカーズが敗退した月曜日、ハムは言った。「ヘッドコーチとしてこのチームを指揮した2年は、とんでもなく素晴らしい2年間だった。良いこともたくさんあったが、最終的には優勝を獲得したい」

ハムは、レイカーズが2021-22年に33勝49敗となり、プレイオフの出場さえできなかった、フランチャイズ史上最も失望したシーズンの一つを終えたレイカーズのチームを率いた。

ハムの最初のシーズンでレイカーズは2勝10敗でスタートした。その後、トレード期限までの一連の動きでロスターは完全に再編された。

チームはウェストブルックと決別し、残留組のAD、オースティン・リーブスを補うために、ディアンジェロ・ラッセル、ジャレッド・バンダービルト、八村塁を加えて再編成した。

レイカーズはプレーイントーナメントでミネソタ・ティンバーウルブズを破り第7シードを獲得、プレイオフ第1ラウンドでは第2シードのメンフィス・グリズリーズ、第2ラウンドのウエスト準決勝では第6シードのゴールデンステイト・ウォリアーズを下したが、ウエスト決勝戦で第1シードのナゲッツに敗れた。その年、デンバーはフランチャイズ史上初の優勝を果たした。

今シーズン、レイカーズは3勝5敗と再び低空飛行なスタートを切った。シーズン中のトーナメント優勝後は4勝11敗とつまずき、1月中旬にはウェスト13位まで順位を落とした。

だが、2月1日から4月中旬までのNBAで5番目に良い成績である23勝10敗でシーズンを終え、プレーイントーナメントでニューオーリンズ・ペリカンズを破り、再び第7シードを獲得した。

昨年、ナゲッツはプレーオフでレイカーズを4勝0敗で下し、4勝で24点差をつけたが、今回はレイカーズはデンバーから1勝をもぎ取った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?