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証券アナリストジャーナル読後メモ:ワークライフバランスからワークアズライフへBy落合陽一

https://www.saa.or.jp/dc/sale/apps/journal/JournalShowDetail.do?goDownload=&itmNo=35673

証券アナリストジャーナルを2010年頃からずっと購読している。著名な学者そして経営者の貴重な講演や論文を閲覧できることができ、大変勉強になっている。年会費18,000円は維持コストとして高い、という声も周囲でよく聞くが、月にならせば月額1,500円である。月一回の外食をやめればいい程度のコストで、この水準の論文や講演が読めるのは圧倒的にコストパフォーマンスが良い、と常々思っている。

以下は2018年の人工知能に関する記事で少し古いが、今も色褪せない名言(太字部分)が掲載されており、大いに学びがある。


1.落合研究室の取り組みについて

  • 一般に大学の研究は社会実装性が悪い。新しい技術が大学で開発されてから社会に出るまでに30年を要する。

  • そこで、大学が営利企業と共同研究しながら研究室を運営すれば、もっと速いスピードで研究の成果が世に出るのではないか、と思っている。

  • 自分の研究室では、大学でどのようにIPを作るか、に取り組んだ後、それを社会に実装する。その代わり、そのIP使用権を、ストックオプションを付与するような形で国立大学に使ってもらい、我々が特許を独占的に使えるような契約を結んでいる。産学連携の進まない日本の状況に風穴を開けている。

  • 結果、大学と会社で特許が年間何十本も発生する、ベンチャーとしては珍しいスキームを構築しているのが自分の研究室。

2.日本の研究開発の課題について

  • 日本の研究開発投資、で発明といわれるものー社会問題のどれを解決したのかも、何の役ににたったのかもわからない技術開発ーが出てくるのが大学。大学から出てくる技術で、「使い道はわからないがこういうものが出来ました」というアウトプットは存在する。

  • しかし、その技術を上手に使ってさらに高く売るものが出てくるのだ。

  • 例えばスマホである。液晶、基板など、新しい技術は特にないが、それを組み合わせて新しいソリューションを提供した。これは日本の技術者が苦手な分野である。

  • なぜ苦手かといえば「驚くような技術開発はなく、見せ方がうまいだけ」と考えられてきたからだ。

  • しかし、新しい課題を発見して解いたのだから、開発者はクレバーである。低コストで実現し、しかも利潤は非常に高い。

  • そうして獲得した莫大な利益を研究開発費に回すのだから、米国式の研究所では資金体力が盤石、それが回ってノーベル賞級の発明がどんどん出てくる。

  • 「技術的に大したことはないと言っている限り、永遠に敗北する」。コストが安く、クレバー。これを訴えたい。

  • 周りが開発に動き出したタイミングにも日本は乗り遅れがちである。

  • 例えば、6万円のデバイスを1万個販売。よく売れて、次に開発した時はより多くの販売が見込めるとする。その時、シリコンバレーであれば投資資金が大量に入ってくる。そのスタートアップにR&D費用が100億円入った瞬間、日本の研究スタートアップは全滅する。

  • 6万円のタイミングで動けなかった時に負けているということになかなか気づいてもらえない。

  • 投資と研究のメソッドをとりあえず小さな場所で試し、安い投資資金で社会の反応を見た後、もう一度大きな投資資金を入れて誰にも作れないような開発段階に進ませるという行動が日本はとても下手

  • 小さな失敗を積み重ねることが重要。日本の企業風土ではそれを許さない。それではダメだ。最初の生き残りが最も難しのだから、何回か挑戦して最初の壁を突破することが重要。

  • 「未来を予測する最も確実な方法は、それを発明することだ(アラン・ケイ)」。これはロマンとして語られることが多いが、経済合理性の話でもる。

  • 「ある商材の未来における価格を予測する最も確実な方法は、それをプロトタイピングすること、と読み替えるとよい。

  • ものがいくらになるか、コストがいくらかかるかを判別するには、とにかくプロトタイピングするしかない。そのコストをいかに小さくして実際の形にいかに作り込むかが大事。

3.ワークライフバランスについて、その他諸々

  • この言葉は不思議だ。仕事は嫌なもので、生活は趣味で楽しいということだろうか。

  • ストレスの強弱で、区分すべき。現在の社会は労働時間でものを考えるが、ストレスの有無で判断すべき。

  • もしくは頭脳負荷だ。AIは1週間連続で同じことを考え続けても疲れないが、人間は1週間同じ計算を続けたら壊れる。ストレスとは時間の問題ではない。頭脳負荷の問題だ。

  • アートで頭を使うとき、サイエンスで頭を使う時、エンジニアリングで頭を使う時は脳の使う場所が違うので両立する。

  • 人間にとって大事なことは頭で考えたことを実行する能力。AI時代、名前が出ない会社で働くのは大変だ。AI時代、名前が出るかどうかは重要なファクターである。


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