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二デック(旧日本電産)の永守重信会長「運をつかむ」を読んで、なぜ経営者は験担ぎをするのかを少し理解する


なぜ多くの経営者は手相占い、神社の参拝等、自分を超越した存在により縋ることが多いのか。

その思考回路の一端について、二デック会長・永守会長の著書「運をつかむ」を読んで少し理解ができた気がした。

永守会長の人生観は、「運が7割、実力が3割」というものである。

ここで重要なのは、始めから運任せにして7割の成功が自然にやってくるのでではなく、自力で3割の努力を積み上げた上で、運の7割がやってくる、という考え方である。決して7割の運が誰にでもやってくるわけではない。

精一杯自分の力で努力して、もう自分の力ではどうにもできないというレベルまで努力した上で、最後に神社への参拝等の神頼みを行うのである。

このあたりは永守会長と同じく京都出身の経営者、稲盛和夫氏の言葉「あとは神様に祈るしかないというくらいまで、すべてのことをやったのか」にも通じるところがある。

この思考からは、凡人にとっては非科学的で迷信だ、と考えがちな神頼みにすがってでも成功させたい、という思いが伝わってくる。逆に言うと、神頼みや占いさえしていないと言う時点で、自分はその仕事に本気で打ち込んでいないのかも知れない、とも思える。

以下、「運をつかむ」から印象に残った言葉を挙げておく。

  • 私は常々、人生は「運が7割、実力が3割」と考えている。精一杯努力をしても、最後に結果を決めるのは「運」である。そして、努力に努力を重ね、もうこれ以上できることがないといった果てに、初めて運はやってくる。

  • 不運は幸運の入り口である。然るべき努力をすれば、不運な状況もオセロの石がひっくり買えるように、必ず幸運へと転じるはずである。

  • 人生における運の総量は決まっていないので、努力次第でいくらでも増やせるものである。

  • IQは高いが、EQが低いために思うように成果を上げられない。反対に、頭は決して良いわけではないが、EQが高いゆえに目覚ましい成果を上げる。私は実際にこれまでそんな人たちを数えきれないほど見てきた。

  • 私はEQが高い凡人が100人集まれば、傑出した一人の天才型社員が成果を上げるより、高い成長力が約束されると考えている。

  • 高いEQを身につけるには、その人の核に真剣な思いや情熱、誠意がなくてはならない。そうでなければ、相手を深く理解すること、相手を本心から動かすことはできない。

  • 「足元悲観、将来楽観」という考えを基本にこれまでやってきた。

  • 創業当時、ライバルに勝てるものは何一つなかった。だが平等に与えられているものがたった一つあった。時間である。そこで思いついたのが、「がむしゃらに働いて、他社の半分の納期で製品を納める」という戦略をとった。与えられた時間をフルに活用して人の何倍も働きに働くという姿勢でやってきたことが、会社を成長させる強力な動力源となり、運もついてきてくれた。

  • 失敗の99%は欲が原因である。強欲になると、いろいろなことがよく見えなくなり、正常な判断ができなくなる。いちはやく察知しなくてはならないリスクが、欲によって覆い隠されてしまうのだ。ただし、向上心につながる欲は無限に持っても良い。

  • 会社の経営は、余計なことを考えず、それらを一つ一つ抜かりなく実践する意志と決断力、そして行動力さえあれば必ず成功する。それゆえに経営は簡単なのである。

  • 本当に優秀な人の思考は、的を射たシンプルさを持っているものだ。シンプルに考えられると言うことは、思考が整理されているからにほかならない。

  • 海外の取引先から手紙をもらったりすると、仕事ができる人ほど、シンプルな英語を使っている。

  • 「すぐやる」「必ずやる」「できるまでやる」は日本電産の三大精神である。「泣かない」「逃げない」「やめない」の三ない主義は極めて重要な姿勢である。6S(整理・整頓・清潔・清掃・作法・躾)も重要。

  • 謙虚さを欠くと、運から見放される。慢心とは言ってみれば、自分に負けることだ。

  • これから個性の時代である。頭の回転が速く、素直で人当たりもよいといった欠点の少ない人を個性的だとは言わない。会社組織は往々にしてそのようなタイプを好むが、金太郎飴みたいにどこを切っても同じような人間ばかりだと、会社の行く末が見えてしまう。金太郎飴人間の集団は、同じ方向にみんなで進むときは強いが、環境が変化すればたちどころに弱点を曝け出す。欠点を削いで没個性に仕立てるより、欠点を含めた個性をいかに伸ばすかが、とても大切なのである。

  • 月の一度の神社への参拝で心を清める・運気の流れを引き込む「方角」にこだわる。

  • 「やらないこと」を決めることで運をつかむ。ゴルフ、カラオケはやらない。

  • アイデアは、もう出ないと思ってからが勝負である。

  • いい経営者というのは、みな小心者だと私は思っている。先のことを常に考え、わずかなリスクでも察知し、予防策を講じ、細心の準備をする。傍からは心配性と思われるほどの小心者でなくては、ビジネスの荒波を乗り切ることはできない。

  • できる、できると唱えて自分に暗示をかけよ。

  • やるべきことは必ず書き留め、実行する。

  • プライドが高すぎると、失敗するのが怖いため自分で仕事の範囲を狭めたり、自分の至らなかったところを素直に反省できなかったりするので、伸び代があまりなくなる。そのため成長できるせっかくのチャンスを逃しがちになるのである。

  • 開き直りは運を落とす。失敗を犯したとき、人が取る行動パターンは2種類ある。一つは失敗した事実を謙虚に受け止め、その原因を分析することによって考え方や行動の仕方を変更し、次に活かすと言うもの。もう一つは、失敗したことは仕方ないと思って開き直ることだが、開き直りは運を落とすことになる。


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