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ベンチャーキャピタルから見た良いビジネスアイデアとは?

前回からの続きで、今回はビジネスアイデアについて概要を説明したい。テーマは題名の通り、「VCにとって良いビジネスアイデアは何か?」である。

注:この「良い」の基準はあくまで投資家(ベンチャーキャピタル)の観点によるものであって、スタートアップ創業者の思い・動機付け等が考慮されていない点についてはご留意いただきたい。あくまで資金の出し手はこう見ていますよ、ということだけご認識いただければと思う。

1. 「一見悪いアイデアに見えるが、実は良いアイデア」がベスト

アイデアを大まかに「良い/悪い」「一見して良い/一見して悪い」2軸4カテゴリーで区分した場合、結論から言ってしまえば、良いスタートアップアイデアとは「一見悪いアイデアに見えるが実は良いアイデア(Good ideas that look bad ideas」である(この点については、著名VCアンドリーセン・ホロウィッツのGeneral Partner Chris Dixonを始め、多くのベンチャーキャピタリストが同様のコメントについて言及)。

一見、いかにも平凡だ・機能しなそう・論理的には矛盾している・・・だがそれを紐解いて見ると、非常に緻密に構成されており機能する(しそう)なアイデア、というのがこれに該当する。一番わかり安い例はAirBnBではないだろうか。他人を自分の家に泊めるというAirBnBのビジネスアイデアについて「誰が知らない人間を自分の家に泊めたいのか」「宿泊者が殺人犯だったらどうするのか」と言った疑問がすぐさま浮かぶが、AirBnBはそれらの疑問点を払拭するストーリーを語り、初期投資家からの調達に成功した。

ちなみに、他のアイデアについての評価は以下の通り。

・一見良いアイデアに見えて実際に良いアイデア(誰が見ても良いアイデア):これ自体は素晴らしいことだが、投資家の観点から見た場合「すぐに過当競争に陥る」「そんなに素晴らしいアイデアであればきっともう誰かがやっている」というリスクがあるため、評価は低い。

・一見良いアイデアに見えるが悪いアイデア:実はこうしたビジネスアイデアはとても多く、この見極めがベンチャーキャピタリストの腕の見せ所になる。

・一見悪いアイデアで実際に悪いアイデア:問答無用

2.プロダクトは「Nice to Have」か、「Need to Have」か

これもすでに広く流布されている問いであるが、アンドリーセン・ホロウィッツのGeneral Partner Ben Horowitzの以下コメント引用をもって説明文としたい。
「今、目の前で頭痛で苦しんでいる顧客に対し、あなたが提供しようとしている のはビタミン剤(Nice to Have) か、アスピリン(鎮痛剤、Need to Have)か」 
少し例えがわかりづらいのは否めないが、彼が言いたかったことは「長期的にはビタミン剤も重要かも知れないが、VCの観点としては顧客の目に見えた喫緊の課題を解決できるアスピリンに投資する」ということである。

3. ソリューションから入るな、顧客のペインポイントから入れ

上述の1, 2を読んだところで「どういうアイデアがこの基準に該当するんだ?」というのが頭に浮かんでくる疑問である。端的にいうと「顧客のペインポイントを起点としたアイデア(=Need to haveに相当)」であり、「そのペインポイントの内容について、世の中で知っている人が自分以外に誰もいないインサイトを含んだアイデア(=一見悪いアイデアに見えるが実は良いアイデアに相当)」である(ペインポイント及びインサイト発見手法についてはすでにデザイン思考を始め多くの著作で言及されているためそちらをご参照)。

Y Combinatorでも語られていることだが、起業家(特にテクノロジーバックグラウンドを持つ起業家)は、顧客のペインポイントを軽視し、ソリューション開発に没頭するという罠にしばしば陥る。結果として、まずは「こんなものを作って見よう」というソリューションありきで事業を開始し、その後「これが市場・顧客に受け入れられるかどうか」というペインポイントの探索でスタックするケースが多い("Solution in Search of a Problem")。本来は逆(ペインポイント探索・発見→ソリューション開発)である。

今回は「良いビジネスアイデアとは」について概要を説明した。次回は「市場規模」について言及したい。


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