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映画「タイタニック」を観れば「女は上書き保存」説は嘘だとわかる

つい最近、久しぶりにAmazonプライムで映画「タイタニック」を観て、改めて残酷だなと思う場面を見つけてしまった。

それは、タイタニック号と共に海の中に沈んでいった無数の人々、について感じた運命の残酷さではない(この点については、若い頃観た際に痛く感じた)。映画の最後のシーン、つまり100歳を超えたローズが、最期の息を引き取るシーンである。

このシーンではローズが走馬灯のように自分の過去を振り返るのだが、その振り返りの最後を飾るのが、タイタニック号なのである。

タイタニック号と共に海に沈んでいった人々に見守られる中、ローズは死んだジャックと出会い、キスをして、そして天国に逝く、という感動的なシーンなのだが、今見返すと少し違和感を覚える。

ローズはタイタニック号沈没から生き延びた後、男性と結婚し子供も孫ももうけて幸せな日々を過ごし天寿を全うしたはずである。

確かにタイタニック号沈没と、そこで出会ったジャックという青年との束の間の恋はローズの人生の大きな転機であったろう。ローズはジャックから、何があっても絶対に諦めないことを学び、また悔いのない人生を過ごす、ということを学んだのだから。

だが、その後出会って何十年もの間一緒に過ごした夫、子供、孫を差し置いて、船上でたった数日間の間だけ出会ったちょっと悪そうでイケメンなジャックを人生の振り返りの中心に置くのは、夫や家族たちが少しかわいそうではないか。

結局ローズにとってタイタニック後の人生は余暇であり、ローズにとって燃えるような激しい恋をした絶頂期はジャックとあったほんの数日間だった、というのはローズの夫にとってあまりにも失礼な、残酷な事実ではないか。

ローズの夫がローズと過ごした何十年もの時間とは、一体何だったのだろうか。

よく「女は上書き保存、男は名前をつけて保存」と言うが、これは少なくともローズの事例には当てはまらないようである。

ローズは完全にジャックの亡霊を周囲に感じながら大半の人生を過ごしていたのであろう。

久しぶりに映画を観ると、若い頃に観たときとは違ったシーンが気になるようになる。それは自分の心が若い頃とは変化したためであろう。そしてそれが名作といわれる映画を何度も観ることの醍醐味でもある。

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