カズに失礼だとわかっていない自民党の恥ずかしさ(2007/5/17付)

記事の初公開日:2007年 05月 17日

自民党が夏の参議院戦に向けて、比例区の候補擁立にやっきになっているようだが、よりにもよって、「キングカズ」こと三浦知良選手を擁立候補として発表した。
そして、丁重なお断りの言葉をもらったようだ。

自民党は最近とても気持ちが悪い。小泉政権も、なんとなくパフォーマンスばっかりに見えたけれど、安倍政権になってから、そのパフォーマンスが権威をえさにした特権階級意識に裏打ちされているようで見るに耐えない。
そもそも、参議院比例代表というのは、その人の力で勝ち抜く選挙ではない。政党の看板で戦いその議席を手に入れるやりかた。比例区代表の候補者は、人寄せパンダ、人気取りの要素が大きい。
そこに、よりにもよって、サッカー界の至宝でもある「キングカズ」を持ってこようなんて、失礼極まりない。

キングカズこと三浦選手は、40歳だが現役選手だ。「40歳の今だってまだまだサッカーがうまくなれると思う」と言い放つバリバリのプレーヤー。サッカー以外には興味もないように、サッカーにまい進する姿が多くのファンを持ち、チームに関係なく選手たちからも尊敬されている人。
今現役をやめる気もない、政界入りに興味もない人だろう。
そんな人に、「議員になりませんか?」と持ちかけた。
「政治には素人でいいんです、票さえ集めてくれたらおいしい権力とセカンドキャリアがまってますよ」といっているようなもの。
これって、三浦選手を貶めているのと同じこと。失礼すぎる。
一サッカー選手が政界にデビューできるチャンスをあげるんだからサッカー界にも喜んでもらえるとでもおもったのだろうか。もしそうなら、自民党のあまりの尊大さに、はらわたが煮えくり返る。

プロサッカーは、まだ15年ほどの歴史しかないので、政界のアブラギッシュな親父たちにはわからないだろうが、「キング・カズ」に自民党の客寄せパンダになってくれということは、「ミスタージャイアンツ・長嶋茂雄」が現役のころに、政党の客寄せパンダになれということと同じなんだ。
さすがの安倍首相だって、すでにピークは過ぎたとはいえ現役時代のミスターに選挙に出てくれとはいえないはず。今だっていえないだろう。

「キングカズ」は日本のサッカー界では、「ミスター」に匹敵する人なんだと思う。
今回のことは、サッカー界に対しても失礼なことをしたということだ。

そんな失礼なオファー(正式にオファーをしていたのか、擁立ニュースを先行させてカズを絡めとろうとしたのか)に対しても、三浦選手は「自民党より要請がありましたが、お断りしました」と、公式な記者会見という場で、きちんと応えている。

この礼儀正しく、正々堂々とした姿が「キング」なる所以。

最近、中村俊輔選手が、インタビューで「キングカズは器が違います」と言っていた。
20歳代がピークのサッカー選手のキャリアのなかで40歳まで戦うモチベーションを持ち続けるのは至難のことらしい。中村選手は、自分も「キング」の年齢までモチベーションを持ち続けられるか、新しい目標だと言っていた。日本とスコットランドのサッカー小僧たちの憧れでもある中村選手が、さらに憧れている「キングカズ・三浦知良選手」。
私のように、すでに「キング」より年上の人間にだって、「キング」はすごいね!と無邪気に手をたたいてしまいたくなる陽性のオーラを持つ人だ。

横浜FCの高木監督は、生涯現役にこだわるカズが、この話を受けるはずがないと言いつつ、「どうせやるなら総理大臣くらいやってほしいけどね」と記者たちを笑わせたと、スポニチに書かれていた。

そうだよね、総理大臣の椅子あげます!くらいなら受けてあげてもいいかも。
でもね、それでも「ありがたいですが断りました。次の試合に向けてがんばることしか考えていません」と言いそう。
それが、「キングカズ」なんだろうね。


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