「Get Sports」中西哲生と中村俊輔の程よい会話と未来予想(2007/5/9)

記事の初公開日:2007年 05月 09日

「Get Sports」の2週間に渡った中村俊輔へのインタビューを見た。

中西哲生氏のインタビュアーとしてのスタンスが洗練されていてとても気持ちがいい。
中村選手の自主トレの相手やサッカー教室の解説を中西氏が引き受けるなど、中村選手と中西哲生氏の間には交流があるようだ。(中西哲生オフシャルWebサイトのマネージャーブログや買い物ワールドカップ2より)

もちろん、中西氏のほうが年上、Jリーガーとしての先輩でもある。その中西氏が、中村選手へのインタビューで、きちんと敬語で語りかけていた。
一般社会では、そんなのあたりまえじゃん!なんだけど、プロスポーツ界のインタビューを見ていると、そうじゃないことが多くて、違和感を感じることが多かった。
特に気になるのはプロ野球。
選手経験の解説者やレポーターが、現役選手にインタビューするとき、先輩面するというか、アドバイザーやコーチのように上から物を言うようなインタビューをよく見かける。金村氏、達川氏、デイブなんとか氏などなど。球界では先輩かもしれないが、TVを見ている者からすると、インタビューされる主役より偉そうなインタビュアーというのは、違和感がある。そんなインタビューに限って、主役の選手は、「ハイ」か「そうですね」しか言わない。いや、言えない。選手がこたえるべきことばをインタビュアーが言ってしまうから。これは、へたくそなインタビュアーのやること。

中西氏のうまさは、質問の内容や言葉が、平易なところにもある。
奇をてらった質問はしないし、サッカーの専門用語をあまり使わない。中西氏も元Jリーガーで、今はスポーツジャーナリストだから、専門用語で会話したほうが、やりやすいはず。そこを、あえて平易な言葉を選んでいるということは、このインタビュー番組を見ているのは一般の人なんだという想定のもとにインタビューをしているからと思う。気配りがあってクレバーな人だ。

信頼している相手による程よい距離をとった質問は心地よかっただろう。
中村選手は少しづつリラックスして、自分の思うところをきちんと説明してくれる。些細なことでも言葉を選び、違和感がある発言だと思うと言葉を選びなおして言い直すところは相変わらずだが、、ところどころに出てくる中村選手の普段の語り口には親しみを感じた。インタビューする人、される人が、そのインタビューの趣旨と対象者を理解しているとても気持ちのいいインタビューだった。

内容については省略するが、興味深かったのは、2回目のの最後の最後。

インタビューも終わってプライベートな会食の場なのかな。
「監督の視点でサッカー解説をしてるんだよ」という中西氏に、中村選手が「監督になればいい」とけしかける。「監督は5年後という目標なんだ。そのときシュンは選手だね」という言葉に、中村選手は「選手でいくよ」と。中西氏は「じゃあ、プレーイングコーチだね」、中村選手「プレーイングコーチね、頑張るよ」という、会話があった。
先月の「Number」の中西氏の記事にも、中村選手が「哲生さん、監督やろうよ!」とけしかけているというようなことが書かれていたが、やはりその言葉は、本物だった。

監督になるというのは、S級ライセンスをとって、Jリーグのどこかの監督になるということなんだろうか?
もしかしたら中西哲生と中村俊輔は、彼らなりの「日本人らしいサッカー」を形にしようとしているのではないだろうか。
もしかしたら彼らは、自分たちの考えるサッカーを表現するチームを作ろうとしているのではないだろうか?この2人の才能と実行力なら、それも夢ではないような気がする。
中村選手が選手としてのトップキャリアのうちに日本に帰るのもいいと言っていた本当のわけは、単なる希望ではなく、彼の中でかなり具体的なビジョンができているのではないだろうか。
もしそうなら、これまでのサッカー選手の将来像からは予想できなかった新しい将来を切り開こうとしていることになる。頼もしいチャレンジだ。

そんな勝手な未来予想をしてしまうほど、このインタビューには、日本のサッカーに希望の持てる未来が詰まっていた。


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