開眼失行

意図的開閉眼の遅れがあるが,反射的開眼は可能な状態.
これまでの“開眼失行”に関する報告は,錐体外路系疾患が多く,無動あるいは眼瞼挙上筋に対する核上性抑制により生じると考えられている.
一方,前頭葉眼球運動野の電気的刺激により,両眼の開眼と反体側への水平性共同偏視がおこることが知られている.開眼動作への前頭葉の関与のため,運動野から運動前野での病変でも”開眼失行”は起こり得る.また,前頭葉病変での”開眼失行”は,運動の開始と維持の障害からも説明できる.
(“開眼失行”を呈したamyotrophic lateral sclerosisの1例: https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/85/5/85_5_757/_pdf/-char/ja)

開眼に関し,自動・随意運動乖離がみられる.
指で軽く上眼瞼を挙上すると開眼が促進される.
開眼失行を生じる病態機序と解剖学的な病変部位に関してはまだ不明な点が多く,視床と線条体を中心とする大脳基底核が責任病巣とする報告がある一方,基底核領域をふくまない非優位半球側の中道脳動脈領域の広範な脳梗塞により開眼失行を呈した報告があることからは,前頭側頭葉が関与している可能性がある.
(開眼失行を呈した筋萎縮性側索硬化症/前頭側頭葉変性症の1例: https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/050090645.pdf)

参考文献がALSに関連した文献2つで恐縮だが,要するに主に錐体外路疾患と前頭葉機能の低下で起こる.

治療については確たるものはなく,各医療者が種々の治療を試している.

①アマンタジン 50mg開始,100mgで奏効
②ボツリヌス治療(ボトックス)
(開眼失行に眼瞼痙攣を合併し,塩酸アマンタジンが著効したパーキンソン病の1例: https://igakukai.marianna-u.ac.jp/archives/journal/開眼失行に眼瞼痙攣を合併し,塩酸アマンタジン)
③グルタチオン1000mg→グルタチオン1400mg+シスコリン125mg+アスコルビン酸1000mg(その後,両側眼瞼の手術を受け,かなり満足のいく改善が得られたとのこと)
(鹿児島認知症ブログ: https://www.ninchi-shou.com/entry/apraxia-eyelid-opening-glutathione#f-061c6f71)
④L-dopa
(きくな湯田眼科-院長のブログ: https://ameblo.jp/yudaganka/entry-10508822682.html)
⑤SSRI(フルボキサミンマレイン酸塩(デプロメール,ルボックス)25mg開始,50mgで奏効)
⑥タンドスピロンクエン酸塩(セディール)

ざっと検索する限り上記のような治療がされているようである.
投与量について記載のあるものは記載した.
眼瞼痙攣を合併することがあると指摘されているが、眼瞼痙攣を認めない症例でもボツリヌス治療(ボトックス)が奏効することもあるようである.

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