コロナワクチン接種に伴う神経障害

一年程前の話であるが,コロナワクチン接種後より接種部位周囲に痛みが出現し,私が診た接種後一ヶ月の時点で全く良くなっていない人がいた(悪くなってもいない).

サンプル1名なので,何が言える訳でもないが,治療が劇的に奏効したので,ここに記載しておく.

症状は脇から外側に向かって線を引いた辺り,肩部から上腕上部の範囲のビリビリとした痛み.かなり痛そうであった.
聞くと,コロナワクチン接種時に本来望ましい部位より高めのところに打たれていた.
これは旧来の教科書が記載していた部位に近いのかもしれない.
肩峰から3横指というのは男女でも差があるだろうし,良い表現とは思えない.
明らかな運動麻痺はなかったが,後から思えば後述する文献に記載のある微妙な麻痺を見逃していた可能性はあるかもしれない.

部位から脳や頚髄の可能性は低く,当初から末梢神経障害の可能性が高いと判断していた.
当初は第一選択薬の一つであるリリカ(プレガバリン)で治療を開始したが,ある程度の量に上げても奏効しなかった.
そこで,もう一つの第一選択薬であるサインバルタ(デュロキセチン)を投与したところ,劇的に奏効し,患者は全く痛みが無くなったと言った.
本来であれば,ガバペン(ガバペンチン)も候補に上がるが,ガイドラインにも記載のある通り,眠気等の副作用もあり,車の運転をされる職業だったので敬遠した.
とは言っても,リリカも過量であれば同様の懸念はあるが.

正直に言って,ここまでの効果は想定外であるし,かなりレアケースの可能性もある.
しかしながら,もし同様の症状に悩んでいる医師や患者の参考になればと思い,記載した.

さて,後述の文献とはこちらである.
(奈良県立医科大学整形外科 ワクチンの筋肉注射手技の国内における問題点: 末梢神経損傷および SIRVA について: https://www.jstage.jst.go.jp/article/chubu/64/1/64_1/_pdf/-char/ja)

上記の文献に従うと,私の診た患者は恐らく腋窩神経の一部の障害であった可能性が高い.
記載の通り,腋窩神経の途中で損傷を受けた場合,三角筋の不自然な収縮に注意して診察しなければ腋窩神経の部分的な障害は見逃されやすいという.
違和感なく見えたが,見逃していた可能性もあるかもしれないと反省した.

末梢神経であれば,神経や部位によっては徐々に再生し,違和感なく回復することもある.
本症例においては一年程度で投薬を中止し,違和感もないとのことであったので,そのまま終了とした.

サンプル1名であり,何が言える訳でもないが,誰かの参考になれば幸いである.

神経障害性疼痛のガイドライン


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