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運動神経がいいとは何の事だろう?

「あの人は運動神経が良い」と評される人がいますよね。

もちろん、運動が得意な人の事を指し示しているのでしょうけれども、実際のところは定義が曖昧です。

今回は「運動神経が良い人」について考察してみます。

1)運動神経って何だ?

そもそも運動神経とは、いったい何のことでしょうか?

医学用語としての運動神経とは、日常生活の基本動作である歩いたり、座ったり以外にも、右を向いたり左を向いたり等、筋肉を動かすために必要な神経のことを指します。

運動神経と対になっているのが知覚神経で、こちらは、痛いだの暑い冷たい、はたまた、硬い柔らかいなどの情報を得るための神経です。

両者の性質上、運動神経は遠心性(脳からの命令を実行する)神経、知覚神経は求心性(脳が情報を得る)神経とも呼ばれます。

2)運動神経が良い人の定義

運動会

いかがでしょう。運動神経に対する印象が少し違っていたのではないでしょうか?

それでは、一般的に運動神経が良いと言われるのは、どんな人なのか考えてみます。

運動が得意な人のこと、子供であれば、体育の授業や運動会で活躍する児童のことですよね。ところが、その運動が得意な人も、よくよく観察すると、大きく2種類に分けることができます。

① 走るのが速い、ボールを遠くまで投げる事ができる
② 早く走れるわけではなく、ボールも遠くまで投げる事はできないが、球技やダンスなどをすると、驚くほど滑らかな動きを見せる

①②共に間違いなく、運動神経が良い人、と称される機会があるでしょう。ですが、実際のところ両者はまったく違う性質を持ちます。

まず、①は備わっている筋力に影響を受けます。小学生の頃に運動会で活躍するタイプですね。

ですが、運動神経とは無関係、とまでは言いませんが、実はあまり関係ありません。運動神経が優れているわけではなく、単純にパワー、瞬発力に秀でているだけです。

それに対して、②は脳でイメージした通りに、身体を動かす事を要求されます。イメージ通り無駄なく効率的に筋肉へと伝達されるからこそ、力みのない滑らかな動作が可能になるのです。

つまり、①は筋力を主体にした運動能力のことで、②は神経の伝達が鍵となる運動センスです。従いまして、俗に言う「運動神経が良い人」というのは、②のタイプにこそ相応しい称号でしょう。

なお、稀に神経の伝達がスムーズで自在に身体を動かせるうえに、筋力に裏づけされたパワーまで兼ね備えている人もいます。その場合、あらゆる競技において、異次元のパフォーマンスを発揮するでしょう。

3)運動神経を良くするために何が必要か?

運動神経2

それでは、頭でイメージした通りに身体を動かすためには何が必要かと言いますと、いろんな身体の動かし方を経験していることが重要になります。

大脳(額から後頭部に及ぶ)から、運動に関する命令がでると、その情報は小脳(後頭部と首の間くらい)に送られます。また、動いている、あるいは静止しているなど現在の身体の状態も、末梢(指先からつま先、あるいは肌等)から小脳へと送られてきます。

小脳は脳や身体からの情報に基づき、身体の平衡や姿勢の保持を含めて運動の計画を微調整し、使用するべき筋肉、力の入れ具合など、最適とされる情報を大脳や運動神経に出力します。

この手の運動に必要な神経回路は、幼少期の5歳から12歳くらいにかけて猛烈に発達します。

つまり、幼少期にいろんな身体の使い方をしていれば、あらゆる運動に必要な神経伝達回路が形成され、大人になってからも身体を動かす際になると、しっかりと機能してくれます。

例えば、自転車に乗れるようになるには相応の訓練が必要です。ところが、いったん乗れるようになってしまいさえすれば、その後、何年も自転車に乗る機会がなくとも、乗り方を忘れたりはしませんよね。

それは、自転車に乗る際に必要な運動の記憶が、小脳に残されているためです。

幼少期に運動をまったくせずに過ごすと、効率的に身体を使うための神経伝達回路が形成されない、もしくは不十分であるため大人になってからも、運動は苦手なままです。

ひとつの競技(運動)をひたすら続けるよりも、身近にあるブランコや鉄棒、あるいは、すべり台で遊ぶことにはじまり、木に登ってみたり、海や川で泳いでみたりと、様々な身体の使い方を経験しておくことが大切になります。

そういう意味でも幼稚園や小学校での、身体を動かす授業や屋外での活動はとても重要なのです。

4)イチローさんの場合

イチロー

プロのスポーツ選手を目指す場合はどうでしょうね。色んな運動を経験させるのが良いのか、ひとつに絞ってひたすら磨きつづけた方が効率的なのか判断できません。

例えば、イチローさん。誰でも知っていますよね。阪神大震災の年、神戸に優勝をもたらした際には、心底感動しました。海を渡り、メジャーで活躍する姿からは何度も勇気をもらいました。個人的に大ファンです。

そのうえで、あえて言わせて戴くなら、運動神経は良くないです。控えめに評して人並みでしょうか。

気になる方は、ネット上に色々と動画が残っていますので、調べてみてください。

ご自身でも「僕は天才ではない」と、幾度となく語っていらっしゃいました。つまり、野球に必要な動作を優先的に、何度もなんども繰り返したのでしょう。「運動神経に恵まれなかったけれども努力で全てを凌駕した」そういう事例です。

5)結論と致しまして

「結局、大人になってから運動神経が良くなることはないの?」と問われると、残念ながらその通りです。小学校を卒業する頃には、運動センスはほぼ確定します。

だからと言って、新しく始めた運動は上達しないのかと言えば、そんなことはありません。根気良く、しつこくやれば上達します。それこそ、イチローさんの生き様が希望になりますよね。

あくまでも「経験している人と比較すると、上手くなるまでに時間が掛かりますよ」という事です。

「運動を始めたけど上手くいかない、どうすれば良い?」という方のために、実践的なお話もしたいのですが、すでに長文になってしまいました。今日はこのあたりで。


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