茶番と晩餐(22)

2024.8.8 23:00

   東京の深夜は白くて案外静かだ。そろそろ中央線も終電が近いのかもしれない。
   私たちは快楽を貪り尽くして、果てていた。三人は覆い被さってシングルベッドに横たわっていた。
   百合さんは私の髪を優しく撫でていた。
「ありがとう。もう、私の人生で思い残すことはないよ⋯⋯」
   彼女は軽く笑っていたが、その瞳は潤んでいた。
「もう、思い残すことはない。核ミサイルに焼かれる前に、私は自分で始末をつけようと思う」
「はい。色々ありがとうございました」
   雛は安らかな寝息を立てて眠っている。
「じゃ、さようなら」
   私の目にも涙が浮かんでいた。百合さんの最期にしては、東京はあまりにも静かだ。
   百合さんはゆっくり彼女の舌を噛みきった。その口から美しく赤い血が流れた。やがて彼女の息が詰まり、心臓の鼓動が止まっていた。彼女は裸のまま息絶えた。美しい最期だった。
    私は彼女の死体を抱きしめた。命は尽きたが、何となく暖かかった。

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