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化石

小学生の友達が、化石を見つけたと学校に化石を持ってきました。
3センチ角程度の砂が固まったようなかけらで、確かに葉っぱを押し当てたようなエンボスがありました。
彼は、その化石を私にだけ見せてくれました。
彼は、私以外あまり人と話さない、クラスでも目立たない男の子でした。
なぜ、そのような彼と友達になったのかきっかけが思い出されないのですが、彼の家には何回か遊びに行った記憶があります。

彼は、鉱石ラジオを作ったと言いました。
初めて彼の家に遊びに行った目的は、その鉱石ラジオを見せてもらうためでした。

私は理科が好きで、科学と学習の両方をとってもらっていましたが特に科学が大好きな少年でした。
鉱石ラジオを作った彼を尊敬し、是非見せてほしいとなり初めて彼の家に遊びに行きました。

彼の家は長屋のような木造の家だった記憶があります。
玄関を開けると狭い三和土がありすぐ階段がありました。
家の中は昼間でも暗く、階段は急でした。

家の玄関のすぐ前に手作りの花壇があり花か何かが植わっていましたが、そこに小さなマムシがいて毒があるから気をつけてと言われた記憶があります。

彼は鍵っ子でした。
鉱石ラジオを見せてもらいました。
ニクロム線のアンテナが、天井に広く広がっていた記憶があります。
ラジオは、音が鳴ったのかどうか記憶にありません。
ただ、すごく大げさなアンテナが必要なのだと思った記憶があります。

私は、NHKの教育番組を見るのが好きでした。
あるときリニアモーターカーの番組を見ました。
番組でリニアモーターの原理が紹介され、電磁石と永久磁石でリニアモータの模型を番組で動かしていました。
私は夢中でその実験模型を見て、自分でも作りたいと思いました。
彼にその話をすると、数日後に彼からリニアモーターの実験に成功したと言われました。

すぐに彼の家にその実験機を見せてもらいに行きました。

ニクロム線でコイルを巻いてその上に永久磁石がのっているその実験機を見せてくれました。
電源を入れましたが、リニアモーターは動きませんでした。
彼は、昨日までは動いていたのになぜだろうと言いました。

その彼が、化石を持ってきて見せてくれました。
私は、どこで見つけたのか彼に尋ねると、他にもアンモナイトの化石などが埋まっている秘密の場所を見つけたと言いました。

次の日曜日、発掘に行こうと言うことになり私と彼はスコップを持って彼の言う化石の埋まっている秘密の場所に連れて行ってもらいました。
私は前の晩からウキウキでした。

当日、工事現場のような場所に導かれ、一生懸命スコップで土砂を掘りました。
彼は、そこでいくつもの化石を見つけました。
そのときもアンモナイトの化石と葉っぱの化石を見つけました。
私は、彼が言う怪しい場所を一生懸命に掘りましたが何も出てきません。
彼のゴットハンドしか化石を見つけることは出来ませんでした。

夕方になって一つも見つけることの出来ない私に、彼はアンモナイトと葉っぱの化石を一つずつくれました。
私は彼を尊敬し感謝いました。

ありがとうありがとうと言ったと思います。

その化石は、理科室にあった化石でした。

それ以降彼との思い出は何も思い出せません。

励みになります。