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新井も3年間がんばってきた男なんだ。侮ってはいけなかった

2012年12月、その男は崖っぷちに立たされていた。サッカー選手の新井章太である。大学卒業後に晴れてJリーガーとなったが、2年間で出場は0試合に終わりこの年所属クラブから契約満了を言い渡された。
Jリーグのトライアウトに参加し、そこでのアピールが実り新井は川崎フロンターレへの入団が決定する。GK陣の一人である安藤駿介が湘南へのレンタルが決まり、GKの枠が空いたという事情もあった。

しかし当時の順列は西部洋平、杉山力裕、高木駿に次ぐ第4GK。そのため2013年、2014年の出場は0。プロ4年間で1度も試合に出れなかった。

転機が訪れたのは2015年。この年のシーズン序盤の正GKは西部だった。しかし杉山、高木の移籍に伴い新井は第2GKとしてベンチ入りする。

そして5月6日の広島戦(等々力)でプロ初出場のチャンスがやってきた。
前の試合で西部が負傷をしてしまったことによりスタメンでデビューとなった。試合前の練習ではサポーターは「It's 章太イム!!!!!」という横断幕を掲げた。

しかし現実はそう甘くはなかった。守備陣との連携ミスで試合早々に失点してしまう。試合はそのまま終了しデビュー戦は0-1で敗戦してしまった。

それから4日後の名古屋戦(豊田)もスタメン出場。新井は無失点に抑え自身初完封を果たした。試合も1-0で勝利し勝利の立役者となった。この試合は自分にとっても現地初勝利であり、何か運命的なものを感じた。

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次のG大阪戦(万博)では個人チャントも作られ、その後もスタメンで出場し続けた。西部復帰後に数試合スタメンを外れたが2015年はリーグ戦23試合に出場し自己最高のシーズンを送った。

しかし2016年は西部に代わって加入した韓国代表GKのチョン・ソンリョンが正GKを奪取。新井は再び第2GKとなりカップ戦や天皇杯などの出場が中心になってしまう。
そんな中、4月29日のG大阪戦(吹田)では1-0とリードする展開の中負傷したソンリョンに代わって途中出場。最後まで反撃を許さず完封リレーで勝利に貢献した。

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2017年、2018年の連覇も第2GKとしてチームに貢献。オフシーズンには「誰がラッシャー板前や!」とイジられるキャラとなっていた。

2019年は3連覇を期待されていたが、チームは7月31日から9月1日までリーグ戦未勝利。正GKであるソンリョンもこの期間中の5試合で9失点とやや調子を落としていた。
そんな中ルヴァンカップのプライムステージ(決勝ステージ)が開幕。新井は名古屋戦の2試合にスタメン出場。初戦は完封で抑えるなど2試合で2失点と調子の良さをアピールした。

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そして9月14日の磐田戦(等々力)で新井はソンリョンに代わりリーグ戦でもスタメン出場する。この試合で完封勝利を果たし、それからリーグ戦でもスタメンで出場するようになった。

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ルヴァンカップはその後準決勝も突破し、2年ぶりの決勝に駒を進める。相手は初優勝を狙う北海道コンサドーレ札幌。
川崎はこのルヴァンカップ決勝では4度も敗れており(前身のナビスコカップ含む)悲願の初優勝を狙っていた。どちらが勝っても初優勝である。

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試合は札幌に先制を許すも前半終了間際に川崎が同点とする。
後半は逆に川崎が勝ち越しに成功とするが、逆に後半終了間際に札幌が同点として延長戦へ。
延長前半に札幌が勝ち越すも、延長後半で川崎が追いつく展開。3-3で試合はPK戦までもつれた。

PK戦もお互いが3人成功。しかし川崎は4人目のキッカー車屋紳太郎が外してしまう。札幌は4人目も成功、川崎は5人目の家長昭博が成功させ4-5。
しかし札幌の5人目が外さないとここで試合終了。ここで新井は相手選手のシュートをセーブ!サドンデスに持ち込んだ。

川崎の6人目長谷川竜也がきっちりと決め、新井が止めれば逆に川崎が初優勝。そして新井は相手選手のシュートをキャッチ!そしてトライ!
川崎フロンターレは悲願のルヴァンカップ初優勝を果たした。
ルヴァンカップMVPには新井が選ばれ、7年前に崖っぷちに立たされた男は栄冠を勝ち取った。
第2GKとして3年間腐らずに頑張ってきた姿はスラムダンクの木暮とやや被る。(新井は3年以上在籍しているが)
「新井も3年間がんばってきた男なんだ 侮ってはいなかった」

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本当に優勝おめでとう!そしてありがとう!

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