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写真小説 忘れえぬ人

 写真学校を卒業し、私はリベンジを図っていた。自動モードで撮っていたころにお世話になった人たちに、お礼も兼ねて写真を撮らせてもらっていた。学校で学んだ後に見る、過去に撮った写真は、とてもじゃないが見られたものではなかった。
 
 ある日、俳優の友人二人と葉山へロケに行った。男女のペア撮影をしてみたいという希望を二人が叶えてくれた。俳優さんを撮るのは楽しい。ポージングをお願いするというより、シチュエーションを想定してお願いすると想像以上の動きをしてくれる。

 撮っているうちに、”二人は夫婦で、思い出の葉山に何年かぶりに訪ねた感じで・・・”、“亡くなったあと、再び出会った感じで・・・”などと、どんどん想像が膨らみ、物語が湧いてきた。初めての経験に私はドキドキした。「愛し合う夫婦の輪廻転生を描きたい」と思った。
 その後、二人が住む家という設定で、古民家スタジオを借り、さらに撮影を進めた。春の草花、夏の食卓など様々なシチュエーションが物語をどんどん膨らませていった。

 「小説のように写真を編集してみたい」自然とそう思った。タイトルを「写真小説 忘れえぬ人」とし、写真集づくりを始めた。最初はモデルの二人とスタッフの分を作って記念にしようと思っていたが、ちょうど写真学校と代官山 蔦屋書店がコラボした、展示販売企画「photo-zine展」の案内が来た。審査に通れば書店に並ぶ!私は迷わず申し込んだ。

 4回に渡って撮影した写真は14,000枚を超えていた。なるべく写真だけで構成したいが、セレクトした量が多く、まとまらない。実際に本の形にしてみたらどうだろう?と、安価なフォトブックで制作してみる。本にすると物語感が増す。更に販売を考え、ある程度の数を安価に印刷できる業者を探し、紙選びをするが、ピンと来ない。どこか手触りの良い本にしたかったので、光沢紙は外し、画用紙のようなと説明がある紙を選択した。構成も紙に合わせて組み立てなおす。発注。黒が強く出てしまった。左綴じにしたのも小説感がないように思う。しかし、ここで審査の日を迎えてしまった。仕方なく、普通紙に右綴じの構成で刷りなおして(さらに構成も少し変えた)審査に臨んだ。結果は通過。ほっとした。しかし、納品まで悠長にしていられる時間はない。さらに構成を練り直して、別の紙で発注。今度は、紙は良いが厚さが気になる。微調整したところで、タイムリミット。これまでの作業を信じて、最後の発注をした。

 9月1日から代官山 蔦屋書店で並ぶ「写真小説 忘れえぬ人」は、こうして完成した。世の中にこうして飛び立てること、本当に光栄に思います。制作過程で師匠、学校の先生、カメラマン、モデルの皆さんにたくさんアドバイスをいただきました。本当にありがとうございました。
 この作品がたくさんの人の手元に届きますように・・・!
(まずは納品した20冊/モデルのサイン、ポストカードつきから販売となります)
 ※追記※
最初に納品したサインつきの20冊と通常版の10冊は始まって早々3日で売り切れるという嬉しい出来事がありました。追加で20冊通常版を納品しました。こちらも残りわずかとなっています。


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