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図書室の思い出

小学生だった頃の私にとって図書室は楽園そのものだった。小さな私は、大好きな本が好き放題読める天国を手に入れたのだ。休み時間に1人で行って読むこともあれば、友達と一緒に読むこともあった。

冬になると灯油ストーブが現れるその場所には、生徒みんなが自然と集っていた。長期休みの時は普段よりたくさん本を借りられるのが嬉しくて、休み前になると何を借りようか考えを練っていた。
本が何冊も入った重いバッグを家まで歩いて持って帰るのは大変だったけど、早く読みたい気持ちが溢れて足取りは軽かった。

中学生になると、学校を休みがちになった。家族とも毎日喧嘩していたので、学校にも家にも居場所がないような気持ちになり、辛い日々だった。そんな毎日でも、相変わらず本は読み続けていた。家で星新一のショートショートや、吉本ばななの小説を読んでいる時だけが、現実から離れられる、安らぎの時間だった。
みんなが授業を受けている時間に、図書室によく遊びに行っていた。

私の通っていた中学校の図書室は、床から天井まで本が並べられており、美女と野獣に出てくる本棚に似ていて、とても好きだった。

高校生になっても、私は図書室に通った。お菓子作りにハマっていたので、お菓子のレシピ本を借りたり、資格試験のための参考書を借りたり、小説を借りたり、エッセイを借りたり、写真集を借りたり。友達が少なかった時期は、弁当を爆速で食べて昼休みをほとんど図書室で過ごしたりもしていた。

午後の麗らかな日差しが差し込む図書室で本を読んだり勉強したりするのはとても好きな時間だった。

大学になってからは、あれだけ読んでいた小説にパタリと興味がなくなり、英語の勉強に打ち込んだ。大学生活の4年間で小説を読んだ記憶はほぼない。大学の図書館に行く時は、グループワークのミーティングをするか、課題をするか、課題の本を借りるか、のどれかだった。勉強するためだけに図書館に行っていた。あんなにたくさんの本があったのに、勉強しかしなかったのは勿体無いことをしたかもしれない、と思う。でも、あの時の私はあの時の私なりに必死だったのだ。

社会人になってからは、読みたい本を借りに図書館に通っている。仕事で嫌なことがあった日、家族と喧嘩した日、なんとなくそのまま帰りたくない日、予定がない休みの日は、図書館に行く。

私にとっての図書室・図書館とは、シェルターであり、オアシスであり、サンクチュアリである。

どんな私も受け入れてくれ、そこにいさせてくれた空間。幾度となく本に、図書室の存在に、救われ、生かされてきた。

本があるこの時代に生まれてきて、よかった。


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