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36年間寄り添った、黒いアイツにさようならをした

私の顔には大きなホクロがふたつある。いや、あった。

結婚をして韓国に渡ったとき、このホクロをどうして取らないのかと、多くの韓国の友人に聞かれた。

美容大国韓国ではホクロは取ってしまう人が多い。

日韓ハーフの娘曰く、韓国人と日本人の顔の違いはホクロがあるかないだというから、笑ってしまった。

ホクロを取りたいと思ったことはたくさんあった。でも、いざ取るとなると、なんだか愛着が湧いて、取ってしまえなかった。

無駄なものかもしれない。けれど、36年間一緒に連れ添ってきたし、長い人生のいろいろな経験を一緒に過ごしてきたと思うと、邪魔にしてはいけないような気がしていた。

初めて恋人ができた時の心躍る気持ちも、失恋をして何日も泣き続けた日も、いろんな国へ行ったことも、バリバリと自分らしく生きていた日も、痛みに耐えて出産をした日も、何日も眠れなくて産後うつになった日も、この黒いコイツは私の一部として、ここにいた。

コイツを取ってしまうと、今までの自分を全て捨ててしまうような気がしていたのかもしれない。

そんな私が、ある日黒いコイツをやっぱり取りたくなった。どんどん大きくなってきたし、やっぱり邪魔だった。

黒いコイツに愛着を持っていたのは愛着ではなくて、執着だったのかもしれない。ずっと過去に執着して、未来を見ることができなかったかのもしれない。

今日、私はコイツにさようならをした。
未来を生きる覚悟が持てたのかもしれないと思った。

今まで、見守ってくれてありがとう。
また会うかもね。その時はよろしくね。

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