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「浜下り」について

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「浜下り」の由来についての私的解題
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民話

民話

民話が好きで、旅先でも、時間があればその土地の出版物を探してしまう。一時期、屋久島に住んでいた時もそうだった。もちろん、生まれた島である沖縄でも。

なぜ民話が好きなのか。あまり深く考えたことはないが、蛇や鳥が神様になる神話より、民話が好きだということはある。目を突かれ奴隷にされた被支配者である「民」が語り継いできた物語の中に、歴史と人々の歩みをみたいのかもしれない。大文字の歴史には描かれなかった

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マジムン

マジムン

神の化身が人の女性と交わる物語は世界中に分布している。日本では「古事記」にある三輪山にまつわる神婚説話をもとに「三輪山伝説」とか「三輪山神話」と呼ばれる。

活玉依姫(いくたまよりびめ)という美しい娘の元に、夜になると立派な男性が訪れ、姫は身ごもった。しかし、男性の正体がわからなかったため、着物の裾に麻糸のついた針を刺し、翌朝たどることにした。すると、麻糸は戸の鍵穴から通り抜け、たどってみると、三

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イノー

イノー

浜下りは、女たちによる女たちの祭りである。

琉球王朝時代、王府は薩摩に課せられた税調達と王府の経営のための収入として、民衆に重税を課した。税である作物や工芸品を効率良く生産させるために、農民の娯楽である祭りや慣習をいくつも禁じ、儒教的ヒエラルキーを導入した。その中にあって、浜下りの慣習だけは続けられた。

『琉球王国評定所文書』などの記録をみると、農村の実質的な働き手で王朝の重要な収入源である女

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チュラ

チュラ

ウチナーグチの「チュラ」は、この頃は「美ら」と表記することも多いが、漢字をあてるなら「清ら」と書くのが正しい。清らかであることを、美しいとした島の人々の美意識がそこにある。「美」の字をあてることで、それが美意識一般に回収されみえなくなっていく。

イノーや潮溜まりの海の水の力を使い、女たちは清らかになることを願った。

マジムンは存在し、人に享楽や様々な満足をも与える。だがそれと一体化することを拒

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