見出し画像

名大で“工学女子”増加中。産業界のニーズも背景に大学「在学部生の20%に増やしたい」

 名古屋大学で“工学女子”がじわり増加中――。工学部の在学生に占める女子の割合が今年度(2023年度)、約12%となりました。1970年代まで1%未満で推移していましたが、1980年代から増加傾向が定着。近年は大学としても女子学生の受け入れに力を入れており、学部PRでのイメージ戦略をはじめ、構内に女性向けスペースを設置したり、推薦入試に女子枠を設けたりして「女子学生率20%」を目指しています。

1980年代から増加傾向が続く名大工学部の“女子率”。大学側も受け入れに積極的だ

 男女共同参画社会の浸透が進む近年、大学の理学部や工学部といった理系で学ぶ女子学生が増え、こうした女性を「理系女子(リケジョ)」と呼ぶなど社会的な風潮として注目されています。昨今は、理系の中でも男子学生が多い工学部の女子学生を「工学女子」と呼び、“男社会”の中で活躍を目指す女性に期待が集まっています。

最先端の光計測機器を使って実験中(電気電子情報工学科)

 産業界、特にモノづくりの現場はこれまで男性主体が当たり前とされてきました。しかし、多種多様な工業製品があふれる消費市場において、消費者に好まれ選ばれる製品を生み出すためには、男性だけでなく女性の感性も不可欠だとの認識が近年定着し始めています。
 工学部によると、近年は企業から「女性の技術者が欲しい」「女子学生を採用したい」との声が届くとのこと。工学部長・大学院工学研究科長の宮﨑誠一教授は「男性の技術者は製品の機能を追求しがち。消費者のニーズを満たすモノづくりに女性のセンスとダイバーシティが求められている」と感じています。

 こうした社会や産業界のニーズを受け、工学部は女性教員と女子学生を増やす方針を打ち出し、目標として①女子学生は「できる限り早期に20%」②女性教員は「2027年度までに16%」を設定しました。
 具体的な取り組みとして、イメージ戦略として工学部をPRするパンフレットなどのデザインを刷新し、工学といえば「工場」「男子ばかり」というイメージの払拭を図りました。

昨年度の「女子枠」推薦入試パンフレットの表紙

 女性の過ごしやすい環境づくりにも力を入れ、構内に女性の学生と教職員が占有できる「リフレッシュルーム」を設置。椅子、机のほかソファやモニターなどを備えて子ども連れでも利用できるよう整備し、昨年度は9月~3月で延べ200人が利用しました。
 推薦入試では2022年度から2学科で「女子枠」を設定。面接と書類審査だけでなく、大学入学共通テストを課して基礎学力のある生徒を選抜するのが特徴です。工学部は「女子が入学しやすいよう優遇するのではなく、推薦枠を設けることで志望しやすくするのが狙い。大勢の男子の中に女子がポツンといるのでは入りにくいので『入学したら女子の仲間がいる』と思ってもらう狙いもある」と説明します。

三次元画像計測にチャレンジ(エネルギー理工学科)

 化学生命工学科の今井穂香さん(3年生)は高校時代、「トイレを作りたい」との夢を抱いて工学部を志望。「下水の整備が行き届いていない国や地域の生活環境を改善したい」と目を輝かせます。現在、女子の仲間と「ダイバーシティ推進活動委員」として奮闘中で、高校生への受験相談や出前授業などを通じ、工学女子を増やす活動にも取り組んでいます。
 大学院工学研究科副研究科長の尾上順教授は女子学生について、「自分の意見をハキハキと言え、工学への気持ちも強い」と高く評価。「産業界での自身の活躍はもちろん、後輩女子に工学の魅力や将来のキャリアパスなどを伝えてもらいたい」と期待しています。

名古屋大学工学部・大学院工学研究科
https://www.engg.nagoya-u.ac.jp/

【リンク】

名古屋大学 公式ホームページ

名古屋大学 公式 X

名古屋大学 公式Facebook