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マイクロノベル集/君はいったい何者だ? 032

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一夜漬けしたのに範囲を間違えてしまった。見知らぬ試験問題ばかりが並んでいる。くそう。唯一の救いは隣の席が学年一の秀才だってことだ。ここはカンニングを……。「これ、暇つぶしで見たテレビでやってた問題だな」こいつは暇つぶしが試験勉強になるのか!?


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星明かりを拾うために、夜の散歩に出かけた。街の明かりは天敵なので、草むらにシートをかけて中をのぞき込む。ごそごそ動く光を発見? ありゃ、なんだ猫か。お前、もしかして星明かりを食ったな? 猫はぱっと僕の目に飛び込んで、今も住んでいる。


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公園にロボット掃除機がいる。丸くて、意外にうるさくて、ちょこまか勤勉なあいつ。「あのお。ワラツ喫茶店ってどこでしょう? ぼく、今日から働くことになってて」ああ、最近は通販商品も自走式なんだね。おいで、バイト先だから。「よろしくです、先輩」


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もしお疲れならこの椅子に座りませんか。いいえ、私はあの窓から街を見ていただけです。なにもできない私を見つけて、この椅子を作ってくれたのはあなたたち。でも、もし、この街にいてもよいのなら。私は椅子に座り、今日も街を見守りましょう。さあ、どうぞ。


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重力の作り方はどうだったっけな。ヒッグス粒子までは覚えてるんだよ。この宇宙にあるんだから、ぼくが作ったのは確かなんだけど。まあ、人類が解明するのを待つとするか。「シンちゃーん、ごはんよー」はーい、おかあさん。

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