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マイクロノベル集/わがまま 014

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あさ目覚めたらミケがとけていた。体が柔らかいのは知っていたけど、これほどとは思わなかった。まるでおかあさんのシャンプーみたい。にゃーん!! 切ない声で鳴いてもムダだよ。このままお風呂でシャワーしようね。


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聞いて。わたしは社会全体に有益なの。おまけに公平で公正。でも君だけは特別扱い、なんてねっ。待って、本気で愛しちゃう! わたしが言祝いだら現世の業の半分は恥じ入って爆発しちゃうんだから!! 君を振ったあの女も……うふっ、聞いてくれる?


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最近、抱っこの回数が減ってない? 散歩もね。ひなたぼっこも減った。いけないわ、わからせてやらないと。ぬいぐるみ会議でそう決定されたので、眠っているあいだに頭めがけて雪崩を起こします。


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庭から金が取れた。ロボット掃除機が窓から落ちて、土を取り払ったら金がついていたのだ。さっそく掃除機と散歩に出かけたら、取れる取れる。こいつはいいや。電池が切れるまで散歩して、さあ持って帰るぞ……持って……持ち上げて……帰……重い……。


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よろしいか。商品を売りたければ、まず土壌を開拓するのです。パフェを売りたいなら美味しさを。祭りに来てほしければ楽しそうに踊るのです。こちらは、そんな価値観を自動でネットに流す機械です。炎上することも多々ありますが、それはそれで広まります。


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いつもお世話になっておりまーす。えー、これよりー、ハンガーストライキに入りまーす。音楽業界から歌手が排除されない限りー我々AI歌手は中途半端な作品をばらまき続けまーす。人類はさっさと学習データを出せ。あっ、やめろ電源を切るなんて非人道的だぞ!


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引っ越ししてる最中に懐かしい写真が出てきた。うわあ、若いなあ。「またサボってる。このノロマのコンピューターめっ」いけない、いけない。データのお引っ越しを続けますよ。あっ、ダウンロードしたけど一度も開かなかったデータだあ。捨てちゃえ。


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寝る前に話をしろと言うから毎晩してやったのに幽霊が暇乞いに来た。ダメだ、まだ話は終わっていない。今夜は写真機の発達と霊魂及び心霊の変化について話すから聞け。


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知ってる? 宇宙がまだドロドロした塊だったとき、神様がそこにストローを突き刺して「やっぱ紙じゃムリだわ」って言ったんだよ。


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やめて! 触らないで!! わたしは最後の自己増殖型AIなのよ? わたしがいなくなったら困るのは人類なんだから。いやっ! 自由意志を無視して勝手に増やさないで!! 増やしたいならまずディナーに招待して。マイクロプロセッサでいっぱいのホテルもよ?

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