20180206 希望のかなた(2017;監督:アキ・カウリスマキ)

 俳優が感情表現を抑制することにより、却って観客がその人物に感情移入しやすくなることがある。この作品もその手法が上手く効いていた。カウリスマキ監督も敬愛する小津安二郎監督にもその手法は遡ることが出来るかもしれない。

 この映画を見ていてシェイクスピア劇を思い出した。主人公の青年が暴力に晒されるシーン。妹との再会シーン。人間ドラマはシェイクスピアの時代からさほど変わっていないのかもしれない。

 難民申請の審査官や、愛国心に燃える右翼のグループのことを非難すること、主人公の兄妹に同情を寄せることは容易い。しかし、それだけでは実際の問題は解決しない。カウリスマキ監督は現在の世界情勢を冷静な視点で、しかし、しっかりと描いている。ヨーロッパでイエス・キリストの時代から抱える難民とその受け入れと迫害の歴史。

 難民受け入れに対して消極的な日本にとってこれは対岸の火事ではない。二人の未来に希望を見られるかどうかは観客のこれからの行動に掛かっているのかもしれない。

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