時計の針が動き出す、静かに、ゆっくりと
ぼくを探しに(2013:監督;シルヴァン・ショメ)
ポール青年が失った母(と父)を探す物語。
主人公のポールは言葉が話せないが、表情や仕草で彼の感情は豊かに表される。昔からの格言にもある。雄弁は銀。沈黙は金。
不思議なおとぎ話のような内容だが、真実を知ったポールが再起し家族を築いていくラストにホッと胸をなでおろす。欠如からの回復、再生の物語。
随所で奏でられるウクレレの音が静かで穏やかで明るい。その音色が傷ついた心を手当てするように撫り、温め、癒す。
双子の姉妹がマダム・プルーストを襲うシーンは魔女狩りを思わせたし、髪を奪う描写は象徴的だった。毛は力の象徴という意味を持つ。だから、学校では規律という名目で頭髪検査をするのだろう。そう言えば、シェイクスピアの「リア王」でもリアの娘がリアのヒゲをむしり取るという描写があったなぁ。
「リア王」ついでに、「リア王」では、グロスター伯が盲目になり息子と和解する印象的なシーンがあるが、見えることへの過信が真実を見落とすことに繋がることが往々にしてある。ルイス・レゴが演じる盲目の調律師が幸せそうに暮らしていた。
ぼくもマルセル・プルーストを探しに行こう。ウクレレを奏でながら。
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