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お悩み相談その002「マナー講習でガチギレする講師」

本日の相談

 本日寄せられたお悩みはこちらです。

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 マナー講師と受講者が取っ組み合いのケンカになりました。

 私は大学生ですが、就活を控えているのでビジネスマナー講習を受けてみました。講師の先生は40代くらいで素敵なおじさまでした。受講生は私含め5人。主な対象は若い女性ということでしたが、ひとりだけ若い男性が参加していました。


 講義は順調に進みました。お辞儀の作法や入室時のノックの作法など役に立つことも多かったのですが、存在理由の分からないマナーもいくつかありました。
 「出されたお茶を飲み干すのはマナーとして良くありません」「メモをするのにスマホを使ってはいけません。紙とペンでメモを取るのがマナーです」
 意味がわからないなと思いながらも、まあそういうものかと思って聞いていました。すると男性参加者が手を上げました。
 「お茶を残して何の意味があるんすか?」
 男性はひろゆき切り抜きを見ているようなタイプで、ひろゆきさんかぶれの理屈っぽい雰囲気で講師の方に論破型質問を投げかけ始めました。
 「講義の内容に合理性がないと思うんですけど」「合理性より形式的なマナーを重視するのはみんなが不幸になると思うんですよね」「お茶を残すのは逆に失礼じゃないんすか?」
 講師のおじさんも最初は笑顔でひろゆきの質問を流そうとしていましたが、質問が途切れない事で明らかに苛々し始めました。そしてついにその時は訪れました。

 「他の受講生の迷惑になるので御退室願います」
 「あ、そうすか。反論できないって事でいいすか?」

 次の瞬間、血管が切れそうなほど顔を真っ赤にしたマナー講師がひろゆきの胸倉に掴みかかりました。
 「ここを何処だと思っとんのじゃ!おぉ!?お前マナー習いに来たんとちゃうんか!!」
 私含め受講生みんなで止めに入ったのですが、マナー講師のおっさんは完全に冷静さを失っており、唾を飛ばしまくって怒鳴ってきました。「おれも一人の人間でよ!本気で許せなんだらマナーなんて関係ないでね!」「関係ないやつは外に出とけ!こっから先はルール無用の領域でよ!」
 ひろゆきもニヤニヤ笑って挑発を続けていましたが、そのうちだんだんヒートアップしてきたようです。「なんすか、なんすか」「論破されたら暴力っすか?」「マナーを習得しても何の意味もないってことでいいすか?」
 髪や胸倉を掴み合ってケンカする二人を見て、マナーって一体なんだろうと思ってしまいました。


 講師の人の言葉じゃないですがマナーなんて極限状態では役に立たないですし、習った中には意味のわからないマナーもありました。すべてが無意味とは思いませんが、ひろゆきの言う事にも一理あるのではないでしょうか。
 これから就活を控えた私は、マナーという実体のない怪物とどう向き合えばいいですか?

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マナーは実体のない怪物なのか

 ご相談ありがとうございます。
 大変な思いをされましたね。今回のような喧嘩には発展しないまでも、実際にマナーを巡っての議論やトラブルは多いようです。相談者さんが「実体のない怪物」と感じられたように、マナーには実態がなく何が正解かもよくわかりません。どこから来て何の役に立つのかわからないマナーを、我々はどう捉えればいいのでしょうか。

 ひとつ見落としがちなのは、マナーは目的ではなく手段だということです。
 マナーを修める目的は色々あるでしょうが、突き詰めると「他人に不快な思いをさせないこと」でしょう。生きていくうえで他者に嫌な思いをさせないよう考案されたノウハウの集合体がマナーです。マナーを知識として詰め込むのではなく、最低限相手が不快にならないよう配慮をして生きていくことが、結果的にマナーを守ることに繋がるのでしょう。

 そう考えると、相談者さんが講習で習った「出されたお茶を飲み干すのはマナー違反」の意図もなんとなく見えてきます。相手に「あ、相手の湯呑みがカラだ。おかわりを注がないと……」と気を遣わせないよう、湯呑みに少しお茶を残して「おかわり不要ですよ。気を遣わないでくださいね」と意思表示するための所作かもしれません。
 一方、講習にいた彼が反論したように「お茶を残すのは逆に失礼じゃないんすか?」という意見にも一理あります。マナーの目的が「他人に不快な思いをさせないこと」だとすると、お茶を残された側が不快な思いをするようならマナー不成立ということになるでしょう。しかしどちらが正解かは人によって違いますし、正直出たとこ勝負な側面もあるでしょう。

結局「マナーを守る」ってどうすればいいの?

 マナーについていくら丼が出した結論はこうです。

 ・相手を不快にさせない事を心掛けた行動を取るが、裏目に出たら諦める

 乱暴なようですが、マナーを重く捉えすぎてがんじがらめになり「マナーなんて考えるだけムダ」と放棄してしまっては本末転倒です。何が不快かは人によって違うので、最善を尽くした結果裏目に出てしまったら「そういうパターンもあるのか!世界は広いなぁ」と諦めて受け入れましょう。答えのない問題を扱うときは、これくらい雑に捉えたほうが意外と応用が利きますし心も軽くなります。


 残念ながら世の中には、エセマナー講師のような人達がビジネスのため適当に生み出したエセマナーも存在します。惑わされず本質を見極めるには、マナーが果たす目的にもういちど立ち戻って考えてみましょう。

本日の余計な一言

 いくら丼にしょうゆを直接かけるのはマナー違反らしいです。なぜだ……。


 ご清聴ありがとうございました。

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