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アフリカビジネスモデル図解vol.11「HydroIQ/ケニア発・世界最初の水IoT事業」

アフリカで会社とNPO経営中、ナイケルこと内藤獅友(Naikel0311)です。

アフリカビジネスモデル図解とは、アフリカ歴6年目、会社とNPOを経営している僕が、アフリカの主にスタートアップを中心に、ビジネスモデルを図解化し、そのユニークかつビジョナリーなイケてるアフリカ企業をご紹介するシリーズです。

第11回は「HydroIQ」というサービスを展開する、ケニア発のスタートアップ企業です。

ここに全てまとめたマガジンがございます。現在、最新号のみ定期購読者様あるいはマガジン購読者様限定公開となっております。それ以前のは、現在は無料公開中となっております。購読いただく方が増えると仕事そっちのけで更新し出すのでお願いします。


尚、この図解は「チャーリーさんの図解ツール」「いらすとや」を利用して作っております。ありがとうございます。

また、ここで出てくるゲストの方は、あくまで著者の想像上のインタビューとして載せておりますので、会話の癖だったり、事業と関係のないやりとりは、全てフィクションになります。


Hydrologistics Africa Limitedと創業者Brian Bosire

今年ももう残すところ1ヶ月半!あっという間の1年でしたね〜。

追い込みで休みゼロで仕事をしまくっているベナン在住ナイケルです!

いやー、アフリカンタイムって年間を通してだと全然通用しないんだな〜。休みゼロで仕事してるって、お前はブラック企業経営者だな〜。

おっと!アシスタントのベナン生まれのケビンだぜ!

ブラック企業経営者か。否めないっす。

でもね!おれらだってベナン発スタートアップだから、頑張ってこのビジネスモデル図解シリーズにも紹介されるくらいの結果をだそうとしてるんだよ!

うんうん、わかるよその気持ち。

確かに身体を壊すほど働くことは良くないけれど、国を良くしたり、イノベーションを起こすためには、普通の働き方をしていたら到底無理だからね。

まあなー。今おれたちの周りにあるものだって、先人たちが死ぬ気で頑張って出来てるものだからな。

って、誰だ貴様は!!!

口が悪いぞ、ケビン。

彼は今回の紹介するHydrologistics Africa Limitedの創業者でCEOのBrian Bosireさんだよ。

呼んでくれてありがとう。ケニアでHydroIQというサービスやってるHydrologistics Africa LimitedのCEO・ブライアンだよ。

前回ケニアのAfrican Stock Photoが出てきたときは、「なんで俺らじゃないんだ!!」って従業員一同憤慨していたんだよ。

まあ、嘘だけど。

嘘なんかい!そしてまた突然現れたから、アシスタントの座を奪おうとしてるのかと思っちゃったじゃないか!

まあまあ、せっかくきてくれたんだからさ。

簡単にケニアの説明をしておくと、ケニアは東アフリカ地域のGDPの40%以上を担う最も有力な経済国の1つだし、東・中央アフリカにおける経済、商業、物流のハブでもあるよ。日本だとマサイ族などが有名だね。

あとは、モバイルマネーが成人の74%が利用しているほど発達していて、世界的にもモバイルマネー先進国として一気に躍り出たんだ。

完璧なケニア紹介をありがとう。モバイルマネーは本当に便利なんだよね。日本よりも使われてるって聞いて僕も驚いたけど、僕らはまだまだこれからもっとイノベーションを起こしていくよ。うちの会社もそのうちの一社になるつもりだ。

いいねいいね〜!先進国と言われていた国よりも、テクノロジーが浸透するほどずば抜けた状態を「リープフロッグ現象」というけれど、こういう例がアフリカでどんどん出てくるといいな。

で、ブライアンの会社は何をやっているんだい?

うちの会社は、水を管理するシステムを作っているんだ。その名前がHydroIQというんだ。

水だって?水は確かに大切だけれど、管理なんかする必要あるのか?というか、そんなんで儲かるのか?おいおいおいおいおい、このシリーズ、もうネタが尽きちまったんじゃないだろうなー!

落ち着いて、ケビン。むしろこの水管理システムは世界的にも注目されるほどのイノベーションと言われていて、ケニアの首都ナイロビだけでも300万人の水を使う人たちを手助けすると言われているんだよ。

300万人?!

そ、そりゃあすげえ。でも、水の管理システムっていうだけじゃ全然わかんねえよ!ブライアンさん!詳しくおれにもわかるように説明よろしくぅ!

そのつもりで来てるから安心してね。

これはアフリカ全体の問題でもあるんだけれど、僕の国ケニアでは、低所得者層が負担する水の使用料金がとっても高かったんだ。データによると収入の11%が水代に消えてしまっていた。

それで、「なぜ水代が高くなってしまっているのか?」を徹底的に調べたんだ。すると、いくつか改善すべき問題が浮かび上がったんだ。

1つ目が、「水漏れ」だ。

井戸などから水道管で水を各家庭に送るわけだけれど、途中で水漏れが起こってしまった時に、業者も家庭もしばらく気がつかず、結果、ある家庭の水の使用量がグンと上がってしまい、訳もわからないままその高額な使用料を払ったり、という事例があったんだ。

なんじゃその問題は!業者何やってんだ!!責任者呼べ!!!

落ち着いて僕の話をもう少し聞いてくれ。

2つ目の理由は「未払い」だ。

先月使った水道代の請求を家庭に送るだろ?するといくつかの家庭はそれを払わない(または払えない)というケースもあり、未払い分の収益を取り戻すためにも水代を上げざるをえないという状況だったんだ。

な、なにぃー?!払ってない家があるだと?どこのどいつだー!!

別に怒って欲しいから説明してるんじゃないんだよ、ケビン。

最後の理由は「人件費」

先ほど伝えた、水漏れが発覚した際は人を送る必要があるよね。でも、どこで水が漏れているのかわからないから、それを探すのにも時間がかかってしまっていた。もちろんその分人件費は増えるよね。

さらに、水質も悪くなった場合、その原因を突き止めて、直すという流れになるけれど、少し悪くなった段階で処理できればいいんだけど、悪くなってしまってからだと処理にも手間がかかるから、また人件費がかさんでしまうんだ。


以上の3点が、水に関する大きな問題点で、これら(水漏れ&水質低下)により、なんと50%近くの水資源が供給される前に失われているとも言われいてるんだ。業者も、先ほど挙げた未払いなどの理由で、45%の収益を失っているというデータもあった。

うおー。それはとっても深刻だなー。

でも、それらを解決するシステムを、ブライアン率いるHydroIQは発明したってことだよな?一体どんなシステムなんだ?

「IoT」っていう言葉を聞いたことあるかな?「Internet of Things(モノのインターネット)」といって、要するに今まではパソコンやスマホのような専門デバイスのみがネットに繋がっていたけれど、例えば冷蔵庫とか、エアコンにもインターネット接続が可能となり、分析だったり遠隔操作ができるようになることだね。

HydroIQは、これを水道管や水タンクなどに独自の機器をつけることで、IoT化して、水漏れが起こった場合や、水質が低下していることを瞬時に知らせられるようにしたんだ。

ちなみに、自慢じゃないけどこういった仕組みを作ったのはうちが世界初だよ。

この小さな機械にネットが繋がるようになっている

世界初だってー!?すっげー!!あんた天才だよ!!

本当に天才だと思うよ!

水を使う住民には、HydroIQの信頼できるシステムを説明し、毎月使った分の使用量をスマホや携帯電話で通知を送る。そして住民はその額をモバイルマネーで支払う。水漏れ分の支払いが無くなったりしたことで、住民の払う額も下がったので大喜びで、未払いも減ったようだね。

水業者側も、紙で使用料金を送っていたコストや、お金を徴収するために訪問したりしていた人的コストも削減できたんだ。

業者は細かい水の使用状況を見られる(真ん中)
住民はSMSで使用量と支払額が届く(右側)


HydroIQのお金とサービスの流れ

ブライアンさん!あんたはすごい!立派だ!

でもね、ビジネスって人の役に立つだけじゃダメなのよ。

ちゃんと儲かっていないと経費とか払えなくて潰れちゃうんだよ?

おれなんてそれで3社も潰してるんだから。わかるかな?

うん、僕も一応この会社は3社目で、経営も17歳からやっているからね。とても心得ているよ。(彼、経営できるのかな・・・)

ナイケルが用意してくれたビジネスモデル図解ってやつを使って、HydroIQがどうやって儲けているのかを説明しよう。

我々は水供給業者からお金をもらっているんだ。


まずはその水業者側の仕組みを説明しよう。

先ほどのデバイスを取り付けることで、①水漏れがあったり、水質が下がったりなどの情報を提供する。②後ほど説明するけど、ユーザーからの支払いを代行して、水業者に支払いをする。③その際に数%を決済手数料として徴収しているんだ。


次にユーザー。

デバイスを取り付けたことで、④水漏れなどの不当請求もなくなり、水質も上がり、信頼できる安価な水料金を請求する。そして⑤支払いをモバイルマネーでうちに払ってもらい、それを先ほど説明したように、業者に代行で払う。といった仕組みになっているよ。

ちょっとだけ補足するね。

ここで使われているビジネスモデルは2つある。


1つは③の料金代行支払いをしてあげた時にもらう手数料。「手数料モデル」とも言われていて、現在多くのネット系ビジネスではこのモデルが使われているよ。

例えば、Amazonは出品する場合と販売する場合にも「手数料」を取っている。他にもクラウドファンディングの仕組みを提供する会社も、支援額を集めたり送金したりする際に「手数料」を取っている。


2つ目は⑤で使った分だけを払うというモデルで、「Pay as you goモデル」と言われている。「定額制モデル」とは逆で、こちらは沢山使う人がお得に感じやすいモデルに対して、日や月によって利用料がマチマチだったり、支払いするお金があまりない場合に適応されることが多いね。

例えば、携帯電話のプリペイド式などもこれに当たるね。日本だと定額制にしている人が多いけれど、海外出張が多い人とか、そもそもアフリカとかだとプリペイド式で電話やネットを使っている人がほとんどだよ。

さらに、この仕組みは水業者にとってもユーザーにとっても喜ばれる(収益が上がり支出も下がる)ものなので、競合が現れない限りは、双方から求められるサービスなんだ。

補足をありがとう。

ちなみに、1世帯の支払い代行をしたくらいでは、もちろん大した利益にはならないけれど、さきほど言ったように、こうした機能が必要な人は、首都のナイロビだけでも300万人いて、それは水業者も望んでいること。そして、ケニアの問題をクリアしたら、アフリカ全土にも進出をする予定だよ。

具体的な目標としては、2021年までに3億世帯にこのサービスを届けることだね。もちろん競合も出てくるだろうけど、「世界初」というインパクトと、これまでの実績やデータの蓄積もあるから、先行者優位な状況であることは間違いないよ。何より、アフリカ人が水で苦しむ時代を終わらせたいと思っている。

なるほど、水インフラは基本的に人間全員が使うものだもんな!いやー、是非とも頑張って欲しい!

ちなみにさ、おれ気がついたらポケットに入れていたお金を使いまくっちゃってたり、ポケットに穴が開いたりして落としちゃうんだけど、そのデバイスつけたら「穴開いてますよ〜」とか「使いすぎですよ〜」とか教えてくれるかな?

んな訳ねーだろ!!財布を買え!家計簿つけろ!



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