疲れた日/個だから


全て燃やす。片っ端からライターで火をつける。8年前の恋人の夢なんてもう見たくもない。向井秀徳の諸行無常ばりに繰り返すが、私は寝ている間に夢を見たくない。

寝起き、熱いお茶とマルボロの毒を身体に流し込む。回る換気扇の羽の下でわたしは一個も頭が回らない。このあと歯を磨いて、顔を洗って、掃除機をかけなければ。一つ一つ予定を確認する。全部握りつぶしたい。軽い疼きを覚えながら。キッドフレシノの歌詞くらいかっこいい文章が書けたらいいのに。


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今日は一つ、疲労困憊する恒例行事をこなした。クタクタになり、地震かと思ったら自分の目眩であることに気づく。酒さえも美味くないのでメーターを超えた疲労。全てドラム缶に放り込んで燃やせたらいいのに。でも疲れている時のほうが冴え渡っていて好きな文章が書ける。敷地内でゴミを燃やすのは法令違反です。燃え尽きて白く灰になるのを見届けてから眠る。


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3月になったからストーブを消して寝てみよう!と思って、消したら寒い。消さなきゃよかったなと後悔する。好きな人の連絡先と同じだね。そのうち忘れるけどね。


前に他のエッセイでも書いたけど、長年好きだった人の連絡先を消す時に、電話番号の下4桁の数字を覚えそうになって焦った。これから先、登録していない番号から電話がかかってきた時に、数字を覚えていたらすぐに彼だとわかるから。わかるように脳が覚えようとしたのだ。一瞬で理性のナイフを自分に刺して、連絡先を消した。
これまで彼から電話がかかってきたことなんて一度もなかったのに。
あの時の数字はもう忘れた。4と7が入っていたかもしれない。2か3だったかも。どうでもいいことだ。どうでもいいことだと思えるようになるまで季節は半周した。


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妹と先日LINEをしているときに、「家族とは言え他人だから、全ての感情をわかってあげることはできないけど」と言われて、「他人だから」と言われたことが嬉しかった。
私たちは家族だし仲はいいけれど、きちんと切り離した個として考えてくれていることに。上手く説明できないけど。