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どれだけ歩き回っても楽しさが尽きない魅力的な街「東京」

 子供の頃テレビで芸能人が話すのを聞いていると、東京の地名がいっぱい出て来た。新宿とか五反田とか銀座とか。俺はよく分からなかったが、とにかく東京が日本一都会である事は知っていた。そしてその東京の中にはさらに色々な街が存在するんだなと何となく分かった。なぜだか知らないが俺はそこにワクワクした。まるで遊園地みたいだなと思った。
 中学に上がって、親と東京に旅行に行く機会があった。正直記憶は曖昧だが、遂に東京進出かとワクワクした。聞き覚えのある主要な街はいくつか廻った。子供ながらに沢山の建物と人々の間を歩くのは楽しかった。気がする。
 そんなこんなで大学生になった俺は、春の長期休みに東京にフラッと遊びに行った。中学の頃よりお金や時間に余裕があった俺はテンションが上がっていた。ちなみに大学で周りの人たちに東京に行こうという話をしても、彼らは「そもそも何をしに行くのか」「限られた時間でどこを回ろうか」「あれを食べてこれを食べようか」みたいに真面目に予定を考え始める人ばかりで、とりあえず無目的無計画で飛び込もうぜ、行ってから考えようぜという頭の悪さと尻の軽さを持った奴はいなかったので、よっしゃ俺はもう1人で行ってやるぜと思って新幹線に乗った。いざ東京に着くと、もう何だかワクワクが止まらなかった。その後俺は東京23区内のあちこちを3日間歩き倒した。一応夜はネカフェでシャワーと睡眠はとったが、それ以外は動き回ったので足裏と太ももはしんだ。でも今ではすごく良い思い出だ。興味のある場所を好きなだけ歩くのはとってもワクワクした。こんなに楽しい場所に毎日いられたら幸せなのにな。そんな気持ちが俺に、将来は東京に住みたいなと思わせた。特にどこかの施設に行ったとか、観光地に行ったとか、何を食べたとか誰に会ったとか、皆そんな話ばかりするのだろうが、正直そういう具体的な事ではないのだ。建物と人々がいっぱいの街を五感で味わいながらひたすら道を歩く。そういう抽象的な部分にこそ魅力があるのだ。
 そんな事を言っていたら時は流れて俺たちは就職を考え始める時期。特にやりたい仕事なんか決まっちゃいないが東京に住みたい俺は、東京に定住できる仕事は何ぞやと思ってあれこれ調べた。結果、地方公務員しかない!となった。そして受けた!…落ちた。さて、どうしようか。今思えば他の仕事でも東京勤務はあったんだろうけど、他は全部転勤の可能性があるからやめておこう!と当時は思っていた。
 さてそんな俺は既卒の無職となり、昨年の夏頃にようやく東京の安いシェアハウスの存在を知る事となる。正直在学中から仕事は二の次だった。普通の人たちはまず働く職場が決まり、その職場が東京だから上京するのだろう。しかし俺は逆。まず東京に住む!そして住み始めてからそこで仕事を探す!そんな順番で考えていた。だからそんな人でも住める物件を検索する必要があったのだ。そして辿り着いたのだ。俺は驚いた。無職で貯金の少ない俺でも入りやすいくらい家賃も初期費用も安く、でも快適に暮らせる家が、なんと東京にあったのだ。さっそく俺は恐る恐る申し込んだ。正直不安だったが、結果有り難い事に2週間くらいで契約が決まった。俺はワクワクしながら実家を出た。
 まあとはいえお金は少ないわけで、東京23区といえど都心では無かった。しかしそういう問題ではないのだ。まあもちろん電車で簡単に都心に行けるっていうのもあったが、それよりも当時俺は、「東京都◯◯区民」という肩書きを欲していた。そう、何区民でも良かったのだ。だから練馬区暮らしが始まった俺だったが、夢が叶ったぜつって、引っ越してすぐ3日間くらいは練馬、板橋、中野辺りを、初めて東京に来てワクワクしていた懐かしのあの頃のように、ひたすら歩き倒していた。
 そんな感じで昨年の夏頃に上京したこの男だが、今は違う区で、節約しながらも楽しく暮らしているという。あれこれ夢を見ながら仕事もしながら、前向きにやっているという。彼のその後の話はまた別の機会に話そう。

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