まとめノート「不当な取引制限」

第1 不当な取引制限

1 適用条文 独禁法2条6項
→不当な取引制限とは、事業者が、「共同して」、「相互拘束」を、または、「共同遂行」することにより、「公共の利益に反して」「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」をいう
・行為要件→事業者が「共同して」、「相互拘束」をまたは、「共同遂行」をすること
・効果要件→それにより、「公共の利益に反して」「一定の取引分野における競争を実施的に制限すること」
(1)事業者「何らかの経済的利益の供給に対し、反対給付を反覆継続して受ける経済活動」
(2)「共同して」
「意思の連絡」を意味する。
(百21事件)
「ここにいう意思の連絡とは、複数事業者間で、相互に同内容又は同種の対価の引き上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、一方の対価引き上げを他方が単に認識・認容するのもでは足りないが、事業者間相互で拘束しあうことを明示し合意することまでは必要なく、相互に他の事業者の対価の引き上げを認識して、暗黙のうちに認容することで足りる。」
→理由。もともと不当な取引制限とされるような合意については、これを外部に明らかになるような形で形成することは避けようとする配慮が働くのが通常である。外部的にも明らかな形による合意が認められないと解すると、法の規制を容易に潜脱することを許す結果となる。
(3)「相互にその事業活動を拘束すること」
①実質的競争者
②共同行為の(ⅰ拘束目的が共通している。ⅱ何らかの拘束の相互性)→行為要件充足
※入札談合は基本合意と個別受注調整からなる。
「基本合意」→意思の連絡かつ相互拘束行為と評価される(百20)
「他の事業者と共同して」「相互にその事業活動を拘束して」
【百20事件 多摩談合事件】
「法2条6項にいう『一定の取引分野における競争を実質的に制限する』とは、当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい、本件基本合意のような一定の入札市場における受注調整の基本的な方法や手順等を取り決める行為によって、その当事者である事業者らがその意思で当該取り決めによって、その当事者である事業者らがその意思で当該入札市場における落札価格をある程度左右できる状態をもたらすことをいう」
(4)「公共の利益に反して」「一定の取引分野における」「競争を実質的に制限すること」
①当該行為の目的が独禁法1条の趣旨に照らして合理的
かつ
②その目的達成手段も他によるべき代替的手段がないような形で相当である場合
【百6 日本遊戯銃協同組合事件】
「共同の取引拒絶行為であっても、正当な理由が認められる場合は、不公正な取引方法に該当しない。」「また形式的には『一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為』に該当する場合であっても、独禁法の保護法益である自由競争経済秩序の維持と当該行為によって守られるべき利益とを比較衡量して、『一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発展を促進する』という同法の究極の目的(1条)に実施的に反しないと認められる例外的な場合には、当該行為は、公共利益に反せず、結局、実質的には『一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為』に当たらない」
(正当化理由の判断枠組み)
→「目的の正当性」と「手段の正当性」の両面から検討する。
→正当な目的を達成するうえで合理的に必要とされる範囲内の手段であるかが判断されることになり、その場合に「より制限的でない他の手段」の有無を考慮。
→正当目的としては、
①不適切な状況を防止するための不適格者排除・共同行為
②知的創作や努力のためのインセンティブ確保
③物理的・技術的・経済的な困難
④効率性向上・競争促進効果
⑤公共性
⑥緊急時の取組
⑦業績不振の他の供給者の救済
⑧他の法令等に従った行為
等が受けられる。
(5)「競争を実質的に制限する」とは、確定された市場において、複数事業者が、その意思で、価格、数量、技術等をある程度自由に左右することができる状態をもたらすことである。
ア 入札談合
→違反成立時期
基本合意の成立時点で違反が成立する。競争を実質的に制限すると認められる合意があれば、その実施等がなくとも不当な取引制限の要件を満たす。→どのような場合に離脱認めるか
【百30】岡崎管工事件「受注調整を行う合意から離脱したことが認められるためには、離脱者が離脱の意思を参加者に対し明示的に伝達することまでは要しないが、離脱者が自らの内心において離脱を決意したことにとどまるだけでは足りず、少なくとも離脱者の行動等から他の参加者が離脱者の離脱の事実をうかがい知るに十分な事情の存在が必要であるというべきである」
→競争を実質的に制限する
 当事者らがその意思で落札者及び落札価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらすことをいう。
イ 非ハードコア・カルテル
・共同購入
→購入市場、および購入した部品を組み込んだ製品の市場において、競争を実質的に制限しないか。付随的な取り決めがある場合。
・OEM供給
→コストが共通化することにより、製品の販売価格が同一水準になることを競争の実質的制限と捉えている。
・共同研究開発
・共同リサイクル
→OEM契約では、①原材料の調達市場でのシェア、②当該製品の市場シェア、③コストの共通化の程度でその適法性が判断される。③については、生産を委託する事業者が原材料を別途調達して受託者に提供する事案と、原材料の調達まで委託する事案とでは判断が異なる事が多い。
【百32 共同生産 日本油脂他事件】
「6社は、共同して、四国アンホの運営に関する協定を締結し、これを実施することにより、公共の利益に反して四国地方における硝安油剤爆薬の販売分野における競争を実質的に制限しているものであって、これは、独占禁止法第2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、第3条に違反する。」
【百33 相互OEM供給】
「事業者が他の事業者と共同して、製品の価格、数量等競争手段を相互に制限することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合は、不当な取引制限に該当し、違法となる(3条)」「相談の場合においてA社とB社(以下「2社」)は、従来どおり独自に販売を行い、互いに販売価格や取引先などには一切関与しないとしているものの、
ア 2社が相互にOEM供給することにより、地域的にみれば、関西以西の顧客に販売される両社の製品は、ほとんどすべてB社の製造にかかる製品、反対に関東以北はほとんどすべてA社の製品に係る製品となり、中部を除く地域において両社の製造コストが共通化され、また、甲製品の販売価格のうち製造コストが相当の部分を占めることから、2社の甲製品市場におけるシェアが約90%を占めることを踏まえると、2社の販売価格が同一水準になりやすいなど、販売分野での競争が減殺されるおそれが大きいこと
イ 相互にOEM供給を行うことを通じて、製造コストなど企業活動を行う上で重要な情報を知りえることは、2社のシェアからすれば、競争に与える影響が大きいと考えられることから、2社が相互にOEM供給を行うことは、甲製品の製造販売分野における競争を実質的に制限し、独占禁止法上問題となる」
【百34 共同調達】
「共同購入については、一般に、製品の販売分野における参加者のシェアが高く、製品製造に要するコストに占める共同購入の対象となる資材の購入額の割合が高い場合には、製品の販売分野において、また、共同購入の対象となる資材の需要全体に占める共同購入参加者のシェアが高い場合には当該資材の購入分野についてそれぞれ独禁法上の問題が生じる。
 オークションは、Aが提供する調達サイト上で、B及びC(以下「2社」という)が甲製品の製造に要する資材を取りまとめて購入するものであることから、共同購入の一形式と考えられる。
 2社は、甲製品の製造に要する資材の購入市場において6割のシェアを占めるところ、2社が本件調達サイトを利用して当該資材を購入するのが一般的な場合には、当該資材の共同購入を行うことにより、2社が市場支配力を行使することとなるおそれが強く、当該資材の取引における競争が制限され、独占禁止法上問題となるおそれがある。」


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