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2月29日生まれの人はいつ年をとるのか?年齢計算の方法とは

今日2月29日は4年に1度の閏(うるう)日。
2月29日生まれの人は4年に1回しか年を取らないのだろうか?
2月29日の人はいつ年をとるのだろうか?そもそも人はいつ年をとるのだろうか?
法的にどうなのかまとめてみた。

1 年齢のとなえ方に関する法律

年齢の数え方には大きく、「満年齢」と「数え年」がある。
明治6年の明治改暦以前、古来より太陰太陽暦(最後は天保暦)によって暦計算されており、年によって月の日数異なったり、1か月を足す閏月があったことなどから、暦日を実日数を以て年齢を計算することが困難なのであったのか、数え年をもって年齢を計算してきた。

しかし、後で述べるように、明治35(1902)年12月22日に「年齢計算ニ関スル法律」が施行されてからは、法律上、0歳(誕生日)から起算する満年齢が使用されている。

もっとも、一般市民生活ではなおも数え年が使用されることが多かったようで、戦後、昭和25(1950)年1月1日に、「年齢のとなえ方に関する法律」として、「数え年」を使用するならわしを改めて満年齢を使用するようにと確認する法律が施行されている。
現在においては、もやは年齢計算は「満年齢」でおこなうのが当然という感じになっており、数え年は七五三や厄年の歳にひょっこり顔を出すことになる。
以下、満年齢による年齢計算の規定をみていることにする。

昭和二十四年法律第九十六号
年齢のとなえ方に関する法律
 この法律施行の日以後、国民は、年齢を数え年によつて言い表わす従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律(明治三十五年法律第五十号)の規定により算定した年数(一年に達しないときは、月数)によつてこれを言い表わすのを常とするように心がけなければならない。
 この法律施行の日以後、国又は地方公共団体の機関が年齢を言い表わす場合においては、当該機関は、前項に規定する年数又は月数によつてこれを言い表わさなければならない。但し、特にやむを得ない事由により数え年によつて年齢を言い表わす場合においては、特にその旨を明示しなければならない。

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2 年齢計算ニ関スル法律

年齢計算をするために、明治35(1902)年12月1日に公布、同12月22日に施行された「年齢計算ニ関スル法律」という法律がある。
明治35年に公布施行された、カタカナ混じりの古い法律だが、いまだ有効である。

明治三十五年法律第五十号(年齢計算ニ関スル法律)
1 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
2 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
3 明治六年第三十六号布告ハ之ヲ廃止ス

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年齢計算ニ関スル法律の規定は、3つだけ。
Ⅰ 年齢計算は、出生日から起算して計算すること、
Ⅱ 1年間が満了して1歳を加えるという年齢の期間計算は民法143条の規定によること、
Ⅲ 太政官布告明治6年36号は廃止すること、
の3つだけである。(さらに、Ⅲは現時点では実質的意味を持たないので、ここでは言及しない)

Ⅰ 「年齢計算は出生日から起算して計算すること」とは、出生した日の何時に産まれたとしても(たとえ、0:01であっっても、23:59であっても)、その日を1日目として数え始めるということである(いわゆる「初日算入」)。
一般的な期間計算の起算点である「初日不算入」(民法140条)の例外である。

民法(明治29年法律第89号)
(期間の起算)
第140条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。

次に、
Ⅱ 1年間が満了して1歳を加えるという年齢の期間計算について、民法143条の規定によれば、
①年によって期間を定める場合は、その期間は暦にて従って計算すること、
②年の途中から起算しないときは、その起算日に応当する日(以下「応当日」という)の前日に満了すること
③最後の月に応答する日がないときは、その月の末日に満了すること
とされている。

(暦による期間の計算)
第百四十三条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

以上の年齢計算ニ関スル法律の規定をまとめると、
年齢計算は、出生日を起算日(1日目)として起算し、その期間は起算日の応当日(誕生日)の前日に満了し、1年満了したとして1歳を加える。
ただし、最後の月に応答する日がないときは、その月の末日に満了する。

さらに、厳密にいえば、誕生日の前日の終了時点である午後12時(24時0分0秒)に満了すると解されている(最高裁昭和54年4月19日判決(判タ384号81頁)、大阪高裁昭和54年11月22日判決(判タ407号118頁)。
なお、前日の午後12時(24:00)と応当日の午前零時(0:00)は一緒のように思えるが、法律上属する日が異なり、あくまで前日の午後12時(24:00)に当年が満了し、応当日午前零時(0:00)に次年が起算されることになる。

例えば、誕生日が2月28日であれば、2月28日を起算日として、
それに応当する翌年2月28日の前日2月27日午後12時に1年が満了し、1歳加算、つまり年をとることになる。

誕生日の前日に年をとるなんて変な気がするが、政府は、平成14年9月18日、国会において「社会における常識と異なるものではないと考えている」と答弁している(年齢の計算に関する質問主意書)。

3 最後に、2月29日生まれの人はいつ年をとるのか?

4年に1度のうるう年には、応当日である2月29日があるので、その前日の2月28日午後12時に1歳を加算し、年をとる。

しかし、うるう年でない平年には応当する2月29日はない。
その場合、民法143条2項ただし書にいうところの最後の月に応答する日がないときにあたり、その月、つまり2月の末日に満了することになる。

結論
平年には2月28日午後12時に1年が満了し、1歳を加算、つまり年をとることになる。

(参考文献)
・新注釈民法(1)総則(1)、小池泰、有斐閣、402頁~403頁、平成30年
・中川善之助 著『家族法のはなし』,有信堂,1963. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3003419 (参照 2024-01-29)


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