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24時間スーパー 深夜便 「刺青」


 1992年に施行された暴対法が改正を重ねる度に、どんどん肩身が狭くなって来ている、その筋の人達。

 足を洗う人達が続出していることは、TVニュースなどでも報道されているが、我が地方都市もその道に違わず、その筋の人は減っていると言われてきた。

 夏のある日、反袖の先からタトゥーとは明らかに質が異なる「絵」が、少しばかりハミ出たオジサンが、買物カゴ車を押し、買い物をしていた。表情に覇気は失われていたが、明らかに、元その筋の人だとわかった。

 レジでのバーコードの読み取り作業では、商品を買い物カゴから店外持ち出し禁止のカゴに移し替えるのだが、会計が終了した後、そのカゴをカゴ車に載せたまま店外へ出ていくので、念の為、駐車場に停めた車に向かうその人を、遠目で追いながら着いて行った。

 すると、案の定、店外持ち出し禁止のカゴをそのまま車に載せようとしたので、小走りに車に近づき、「すみません、お客様。そのカゴは店外持ち出し禁止なんです。」と声を掛けると、「えっ…」と、今まで人から注意されたことが無い様な驚き方をしたその人は、「ほ、ほな、どないしたらええんやろ?」と聞いてきたので、「お店に品出しした後のダンボールがあるので、それを使って下さい。」と伝え、店に戻って貰った。

 その後、何度かそのお客様を見かけたが、いつも駐車場で店外持ち出し禁止のカゴから、自分の車に積んであるカゴに移し替え、カゴとカゴ車は店内に返していた。

 
 暴対法がなかったら、どつき回されてたかなぁ…。(笑)

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