ー僕はその一節に感動したって言ってるわけですよ。お客さんプロでもそれ聴くの素人でしょうが。素人の僕が感動してるのに何が屁なんですか！

　人気急上昇中のバンド、ブルックリン・ブロッサムズの桜木和馬は、アルバム曲の歌詞を書きあげるため沖縄にやってきた。偶然入ったゲストハウスで眼にしたのは、ピンクのウサギが黒スーツの男にマシンガントークで説教しているというシュールな光景。ウサギの着ぐるみを着ていたのは宿のオーナー、影井だった。
　リゾート地に不釣り合いなスーツの男と、その連れのキュートな女性。そして歌詞の書けない桜木。訳アリな宿泊客を前に、影井は今日も圧倒的な密度の言葉を淀みなくまくし立てるのだった。