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青少年アスリートのための可動性トレーニング(柔軟性とは、単関節もしくは一連の多関節の絶対的可動性を意味し、静的可動域か動的可動域のいずれかを指す)

十分な可動性と軟部組織の伸展性を重視する現代的な修正エクササイズ

十分な可動性と軟部組織の伸展性を重視する現代的な修正エクササイズの技術は、大部分のストレングス&コンディショニング(S&C)プログラムにおいて、現在、比較的よく取り入れられています。

具体的にいえば、若年アスリートに対して、各種可動性傷害の予防と施術において、可動性の概念の現場での応用が広まりつつあります。

適切な運動能力を促進するプログラムとしての柔軟性

多くのS&C専門職が、適切な運動能力を促進するプログラムの作成が重要であることを意識し、従来のプログラムから、指導中のアスリートのニーズに適したプログラムに変更しています。

反対に、柔軟性トレーニングはこれまでしばしば、様々に、また大雑把に定義されており、実際の筋や軟部組織の長さ(例えば、「柔軟性の乏しい」ハムストリングス)を意味することもあれば、単関節または複数の関節が動く大きさ(例えば、「柔軟性の乏しい」足関節)を意味することもあります。

あるいは、アスリートが競技やコンディショニングの動作中にとれる姿勢(例えば、「柔軟性が足りないためにディープスクワットができない」)を指すこともあります。

柔軟性とは

柔軟性とは、通例、単関節もしくは一連の多関節の絶対的可動性を意味し、静的可動域か動的可動域のいずれかを指します。

柔軟性は、確かに全身の運動に影響を与えますが、柔軟性の概念は、運動に特異的な機能的動作のあらゆる局面に完全に対応しているわけではなく、例えば、柔軟性は通常、体重負荷のかからない状態で測定されるのに対して、大多数の競技動作は立位で行われ、柔軟性テストの性質上、比較的単独で行われることが多いため、筋膜などの全身的な制約による影響は外見上容易に明らかにはならず、結果として、柔軟性は通常、ある関節に特異的な運動性の不足または過剰に関する臨床的概念と考えられています。

可動性

逆に可動性は、アスリートが意図した姿勢や体位を達成できる(できない)ことを表す、より機能的な概念であると考えられています。

柔軟性の評価は、通常、一度に一関節または、二関節を対象としており、可動性の評価は本質的に多関節を対象とし、その結果、事実上より全身に適用される概念になります。

可動性には、活動中のアスリートが望ましい姿勢をとることのできる機能的能力が含まれ、また、同時に機能する複数の関節の安定性と適切なコーディネーションに大きく依存しています。

屈曲可動性(HFM:hip flexion mobility)

多くの若年アスリートは、股関節の屈曲可動性(HFM:hip flexion mobility)を積極的にトレーニングすることが少なく、スプリントに必要な股関節の屈曲可動域に達することができなくなっています。

HFMが不足していることが多いために、アスリートは通常、必要とされる動作を腰椎の屈曲で補おうとします。

この代償パターンでは、事実上、十分な腰椎の安定性が不足しているために、腰で生じる動きを防ぐことはできません。

さらに、不十分な股関節屈曲筋の筋力は、膝痛と腰痛の両方と関連づけられています。

コーチはこの問題の是正に、股関節後部筋群のストレッチングだけを行なうことによって、可動域を改善しようとしがちになりますが、そのような方法は、効果的なコアの安定性プログラム(股関節後部筋群のストレッチング)と関連して股関節屈曲筋群の補強が必要な状況を無視しており、コアの安定性トレーニングと同時に、股関節の屈曲可動域全体を使うエクササイズを加えることによって、この代償パターンに対処できます。

股関節の伸展可動性

不十分な股関節の屈曲可動性が非効率的で傷害の危険性のある運動パターンをもたらすのと同じように、不十分な股関節伸展可動性(HEM:hip extension mobility)も同じように問題があります。

HEMの不足は、膝前部の痛みや腰痛との強い相関関係があります。

この可動性不足に対処し、痛みを予防するエクササイズは、股関節屈曲筋の筋長に目標を定め、同時に殿筋の活性化(GA:gluteal activation)のドリルを加えることにより、股関節伸展性の改善に役立ちます。

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