サナトリウムと少女/冬

訪ね来る人も少なくなりにけりサナトリウムは異国の響き
仲良しの看護師さんが点滴を打ちつつ彼氏の話を始める
「治ったらいいね」じゃなくて「治そうね」と連帯感で溢れる病室
今日は少し元気があるから大検の問題集を一ページ解く
目覚めたら不安と安堵が入り混じる両親の顔が飛び込んでくる
明日もまた目覚めさせてくださいとお祈りをして眠るに入る
生きてるとも死んでいるとも言い切れない穏やかだけど退屈な日々
寒空にこそ星々は強く光る私も今を輝いて生きる
青く澄んだ冬空を見て気がつけば指先合わせ作るファインダ
アスファルトの上に群がる木の葉たち車の後を楽しげに追う

「幻桃3月号」投稿作品

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