夏の思い出

ニョキニョキと海辺に生えるタワマンは向日葵のごと太陽を向く
四十度を超えし酷暑の道辺にはセミより他に生くるものなし
アフリカのサバナにそびゆるキリマンジャロその峰思わす入道雲かな
固唾のみ祈る 音なきプリウスに未だ気づかぬスズメの無事を
不意に目覚めた夏夜(かや)は静かで信号の青のまたたく音が聞こえる
私に水をお与えくださいと酷暑に首(こうべ)を垂れる紫陽花
八月の明け方に吹く風はふと子ども時代を思い出させる
朝日さすも子らは布団でスヤスヤと夏休みははや後半に入る
常ならば固く閉ざせど草枕旅先なれば嚢(ふくろ)も緩む
大好きな映画の歌を口ずさむ時ぞ心は少し疲れて

「幻桃11月号」投稿作品

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