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【全曲紹介】Dave - Psychodrama - #7 Screwface Capital

前の2曲、LocationとDisasterはラッパーとして成功したデイブの自慢話だったり、他のラッパーや敵への攻撃だったりと比較的に外に向けた曲でしたが、またこの曲で前半のような内省的なテンションに戻ってきます。”Screwface Capital”は直訳すると「怒り顔の首都」といった感じでしょうか(多分)。デイブは自らの出身地であり英国首都のロンドンをScrewface Capitalと表現します。ウェブで調べると、Screwface Capitalは元々カナダ、トロントのことを意味する造語みたいです。トロントの音楽リスナーは批評的・批判的な人が多いことで有名らしく、アーティストにとってはタフなコンサートになる、ということからこうした異名がついたのだとか(どこまで本当かわかりません。知恵袋のベストアンサーの情報です)。

デイブはロンドンをこの言葉で表現し、自分の貧乏で悲惨だった幼少時代に抱いた思い、そしてそこから成功して大金を手に入れた現在についてラップしていきます。自らのエモーショナルな思いも乗せつつ、金を巡って様々な感情が入り混じる狂った大都市、ロンドンを巧みに描写した曲に仕上がっています。

[Verse]

My linen all tailored/My outstanding payments swift like Taylor
俺のリネン(の衣類)は全部テイラーメイド。俺の馬鹿でかい支払いはテイラーみたいにスウィフト(あっという間に)するのさ

ココは解説なしでもわかると思うのですが、テイラーメイドとテイラースウィフトを掛けています。ちょっと2つ目の意味が自信なしなのですが、「テイラーメイドの高級服を買ってもサッと払えるさ」的な感じ(?)でしょうか。

Man wanna beef, don't know what the stakes is/Broad daylight, do a nigga want a day shift?/Three scales got 'em livin' on basic
あいつはビーフしたがってる(欲しがってる)が、どの種類のステーキかわからねえよ。/真昼間からさ…、お前は昼勤シフトがお好みかい?three scaleはあいつらの生活の土台を支えてるんだ(或いはベーシックインカム?)。

最初のビーフは肉と抗争のビーフが掛かってますね。その後は僕の解釈ですが、日中からビーフを仕掛けてくる輩に対して、「工場勤務は日勤がお好みですか?」と皮肉ると。3つ目のラインもこれまたよくわからないのですが、three scalesは賃金関係の規定か何かだと思うんですよね…3勤制かな…。あとon basicはベーシックインカムが支給されて成り立っているということなのか、普通の生活ができるという意味なのか…いずれにせよ、街中でビーフを仕掛けてくる連中の貧困生活を描写しているのだと思います。

My location changes quicker than gears on a brand new Porsche Cayman
俺の立ち位置(いる場所)は最新のポルシェ、ケイマンのギア変速より早く変わっていくぜ!

ポルシェケイマンのギアチェンジ、それによる加速を自分の貧困層→成功の出世の速さに例えています。ヒップホップらしい比喩表現。
さらにデイブはフレックスを続けます。

It's been fifteen minutes since me and her fucked and I'm sayin' "What you still in the house for?"/Girls say I'm rude but they won't never leave, 'cause you know the jab right like southpaws
俺と女がファックしてから15分経った。俺はこう言うんだ。「お前は何のためにまだこの家にいるんだよ?」ってな。女どもは俺のことを 侮辱的で荒っぽい男だっていうけど、あいつらは俺の下を去ることはない。
だって、わかるだろ?サウスポーのジャブみたいに鋭く突くからさ。

ここも冷徹なライン。ヤリ終わったらさっさと消えろと。どんなに横柄な態度をしても女が去らないのはサウスポーのジャブみたいに鋭いから、と。ジャブは多分セックスが上手いってことだと思います。違ったらごめんなさい。

前半でデイブは以下に自分が成功して強い立場にいるかを語っていきますが、途中から過去の苦しい思いを吐露し、仲間や家族への愛を語っていきます。

I've put blood in, I've put sweat in/I shed tears when my niggas got sentenced/I spent years with my niggas in Streatham/But you wouldn't know that 'cause you don't live this
俺は自らの血と汗を込め続けてきた。仲間が逮捕されたときには涙を拭ったよ。地元のStreathamでは長い期間仲間と過ごしたんだ。お前にはわからないだろ?だってお前は俺たちの人生を経験してないんだから。
What have you done for your siblings?/I made sure that the family's sweet/So many days that I starved myself just to make sure that my whole family eats
お前は自分の兄弟の為に何をしてきたんだ?俺は家族が大切なものだって、確かめてきた。家族全員がご飯を食べられるように、何日間も飲まず食わずだったんだ。

これらのラインから、デイブが如何に苦しい幼少期を過ごしながらもそうした自分の人生を誇っていることがわかります。辛く苦しい時期を乗り越えたからこその誇りや愛情なのでしょう。

I ain't got a memory of when dad was around/Still a child when I turned man of the house/Tell me what you know about a bag full of bills/And your mom crying out, saying, "Son, I can't take it"/And then staring in the mirror for an hour/With a tear in your eye like, "I gotta go make it"
父親が近くにいたときの記憶はないんだ。家の主(=家を守る男)になったときは、俺はまだ子供だった。大金の入ったかばんについて、何を思う?お母さんは「息子よ、もう私は無理…耐えられないわ…」って泣き叫んでる。そして涙を目の中に溜めながら、鏡を1時間みつめた。「俺は、成功しなきゃいけない…」って思いながら。

詳細はわかりませんが、父親は家を出て行ってしまったのでしょう。デイブには2人の兄がいるらしいですが彼らはデイブが11歳のころから捕まっていたらしいです。(最後の曲でガッツリ登場します。)つまりデイブは子供のころから家にいるたった一人の男だったと。お母さんは貧困から泣き叫んで、それをみたデイブは涙を目に溜めながら成功することを決意した、というラインです。胸に深く深く刺さるライン。

そして最後のライン。

Ever seen a good friend turn paigon?/A pretty girl glow down, turn basic?/Ever seen a nigga 'nough man rated/Losing his mind 'cause of food that he's takin'?/You're either a lamb or you're Hannibal
/Good kid but I grew up 'round animals/No chick can't tell me about attitude/I got girl from the Screwface Capital
良い友達がどうしようもないやつに変わっちまったのをみたことがあるか?可愛い女の子の輝きが失われて、普通の女になるのは?男が正当に評価されるのをみたことがあるか?あいつが頭がおかしくなっちまったのは、食ってるもののせいか?お前はヒツジかハンニバルだよ。俺は良い子だったけど、猛獣に囲まれて育ったんだ。どの女も俺の立ち振る舞いについて語るんじゃねえぞ。俺はこのScrewface Capitalで女(=成功の象徴?)を手に入れたんだ。

自分の育った環境の厳しさを動物に例えていますね。羊とハンニバルのラインは「羊たちの沈黙」と「ハンニバル」を掛けつつ、ヤバい奴もいればよわっちいヒツジみたいなやつもいる、ということでしょうか。めちゃくちゃな環境にいれば、俺だってこんな風にもなるよ…という自分の環境の異常さとそこで育ってきた自分の人間性についても語っているのでしょう。

こんな感じです。これで7曲目までおしまいです。

つづく

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