第3章 メッセージ 「顧客は商品を欲しいのではなく、それを使っている自分の物語がほしい」

今からお話しするのはDMに限ったことではなく、カタログやリーフレット、WEBでのコピーにも共通することなので覚えておいてください。コピーライターに成りたての人がよく陥る失敗が、商品のことしか説明しないということです。「えっ、商品コピーなのだから、それでいいのでは?」という方もいると思いますが、それでは顧客に商品が伝わらないのです。
 ここからは例を挙げながら説明していきましょう。
商品は「74か国の自動翻訳ができる小型の翻訳機」だとします。

まずは悪い例から…
「74か国の自動翻訳ができる小型の翻訳機。高い翻訳精度を誇り、大音量で聞きやすい。1回の充電で連続7時間使用可能。タッチスクリーンで操作性バツグン。Bluetooth でイヤホンに接続できる」
どうでしょうか。通販カタログやECサイトでいかにも目にしそうなコピーだと思います。これを少し変化させてみましょう。
「74か国の自動翻訳ができるから、手にした瞬間から世界中の人と友達になれる。ポケットに入れても違和感のないサイズだから、海外旅行に行ってもすぐ取り出せる。人ごみの中でも、大音量だから聞き取りやすいので安心。1回の充電で連続7時間使えるから、一日、外出しても大丈夫。Bluetooth でイヤホンに接続できるから、電車の中で外国語の勉強も思いのまま」
いかがでしょうか。随分と商品に対する興味が湧いてきたのではないでしょうか?
 コピーに何をプラスしたかというと、顧客がその商品によって、どんな風に変われるか、またはどんなシチュエーションで役立つのかをイメージさせるようにしたのです。
つまり、「74か国の自動翻訳」というのはそのスペックだけを見ても、「74か国はすごいな」とは思うけれど、顧客の心が動いていかないのです。それを、「手にした瞬間から世界中の人と友達になれる」と言われたら、「そうか、言語が多いということは世界中の人と話をできるから、どんな人とも会話ができて、友達になれるかもしれない。じゃあ、街中で道を探している外国人に声をかけてみようか」などと、具体的にその商品を持った後の、自分の変化を想像しやすくさせるわけです。

 もうひとつ例を挙げると、「Bluetooth でイヤホンに接続できる」ですが、このままだとどういうシチュエーションで使えるのかわかりません。なぜなら、同時通訳に使うのであれば、音声は自分とともに相手の外国人にも聞いてもらわないといけないからです。イヤホンを使うというのだから、個人で使うというシチュエーションです。そこで、考えを巡らせて、「語学学習」にも使う人がいるはずだと検討を付けるわけです。さらに、電車の中や家の中でひっそりと勉強するとなると、イヤホンに接続できるのは大きいベネフィットになります。そこをコピーで「電車の中で外国語の勉強なんかも思いのまま」と言えば、「この翻訳機は買って損はないかも」と学生や若い人にも受け入れられるかもしれません。
 もう一度言うと、商品コピーは性能やスペックにプラスして、使う人がイメージできるシチュエーションやベネフィットを一緒に語るべきです。顧客は商品を欲しいのではなく、それを使っている自分の物語がほしいのです。
そうすれば、「売りつけられている感」も払しょくさせて、見る人にその商品を使ったときのイメージを助長させ、「欲しいという感情を動かす」ことも可能になってきます。つまり、「①顧客は、売りつけられることを嫌う ②顧客は、感情的な理由でものを買いたくなる ③顧客は、買うことを決めて(または、買った後に) 自分の意思決定を理性で正当化する」は、ページ構成だけに限ったことではなく、単体の商品コピーでも考えておくべき点なのです。

ちなみに、③の理性で正当化するということは、「74か国の自動翻訳」のようにスペックが役割を果たしてくれます。例えば、あなたが自動翻訳機をすでに持っているのに、衝動的にこの商品を買ったとしたら、奥さんへの言い訳として「今持っているのは8か国だけど、これは74か国なんだよ。性能がまったく違うんだ」と断固とした態度をとるかもしれません。

 話を少し変えてクルマの話をしましょう。プレミアムカーの広告やカタログでは、馬力やテクノロジーを前面に打ち出すのではなく、その世界観を見せているものの方が多いのに気づかれているでしょうか? 例えば、軽自動車ならタレントさんがにっこりと微笑み、「自動衝突ブレーキも標準装備で、しかもこのお値段」みたいなコミュニケーションが多いのに、プレミアムカーは「都会のパーティ会場を、女性の視線を受けながら、さっそうとクルマで立ち去っていく」みたいな、かっこいいシーンの方が多いと思います。
 これは、プレミアムカーがいかに高性能であろうとも、結局は、「かっこいいクルマに乗れば、かっこよく見える」という単純な動機でクルマを買う人が多いからなのです。
 特にシニアの女性で輸入車を買う人ですが、「何といってもベンツが一番」「BMWの走りが最高」「安全性はボルボよね」と、盲目的に思っている方が多いのです。「テクノロジーや乗り味、コントロール性、安全性など」について他車と比較したことはないのに、なんとなくそう思い込んでいます。逆に言えば、それを実現させているプレミアムカーの長年にわたるブランディング戦略が素晴らしいともいえるのですが。

中小企業や個人商店の方へのヒント
キャラを立たせて、ファンを作っていく

この章では「メッセージ」ということで語ってきましたが、ここでは個人商店の方に「とっておきのスキル」をご紹介したいと思います。それを一言で言って、「キャラを立たせる」戦略です。
 脚本では、キャラクター設定というのが重要な要素となっています。なぜなら、ストーリーを展開していくときに、そのキャラクターに好感を持ってもらわないと、視聴者がストーリーを追い続けてくれないからです。
例えば、キャラクターが犯罪者でもいいのです。要するに、ただ悪人として描くのではなく、その人が「なぜ犯罪を犯してしまったのか」、そこに共感を持ってもらえれば、視聴者はその犯罪者というキャラクターと自分を同化して、ストーリーを追い続けてくれるわけです。犯罪者にしたのは、極端な例をしたかったので、これからお話しするあなたのキャラクターとは関係がないので誤解しないでください。

 では、本題のDMの話に戻します。
 「キャラを立たせる」というのは、あなた自身を使って、商品やサービスをブランディングしていくという戦略です。この方法は、大手企業では絶対にできない方法です。なぜなら、大手企業ではすでにブランディング戦略が出来上がっていて、いち社長が前面に出て広告活動をするというのは考えにくいし、下手をすると逆効果になりかねません。例えば、BMWの社長が毎回、あらゆる広告媒体に出てきたら、今まで築いてきたブランドを傷つけてしまうかもしれないからです。
 「キャラを立たせる」戦略は、あなたの商品やサービスに込めた正直な気持ちを前面に打ち出していくことが大切です。例えば、商品やサービスに欠点があったとしたら、それも含めて語れば、あなたという人間性が顧客にも伝わります。
このキャラクター設定ですが、「ちょっと欠点がある人。ちょっとクセがある人」の方が好感の持たれる傾向があります。例えば、「良い人なんだけど、言い方がちょっとひねくれている」とか、「頑固なんだけど、言葉の奥に優しさを感じる」というように、ちょっとスパイスのある方が親しみはわきます。
「自分は好感の持たれるタイプと違うからな」と思うかもしれませんが、その辺は芸能人でも同じです。ちょっと割り切って役柄を演じることも大切です。普段はいつものあなたでも良いので、DMで登場するときだけでも、役柄を演じる気持ちでいてください。

 ひとつ例を挙げてみましょう。この戦略と親和性が高いのは、居酒屋さんなど店主がお客さんと実際に会う機会の多い業種です。例えば、居酒屋「いつでも元気一杯」という店があって、その店主は、「脱サラして、地元の商店街外れに念願の居酒屋をオープンした」とします。
 この設定の中で、お客さんに共感をもたせやすい所はどこだと思いますか? 鋭い方はわかったと思いますが、「脱サラ」したというところです。なぜなら、お客さんにサラリーマンの比率はかなり多いと考えられるし、サラリーマンの誰もが「いつかは会社という組織から離れて、自由に生きてみたい」と考えたことがあるからです。すなわち、「脱サラ」したというスペックは顧客に好感を持たせやすいと考えられます。そこを糸口に、この居酒屋と店主のブランディングをしていくのです。
 たとえば、開店を知らせるチラシでは、「苦節30年、脱サラして夢を果たす! 居酒屋『いつでも元気一杯』今月1日、○○商店街の隅っこでオープン!」というように、見込み客へ「脱サラした男が、ついに夢を果たしたので、応援してください」という印象を与えていくのです。
さらに、店主がこの店で自慢にしていること、ちょっと実現できなかったことなど、正直に書いていきます。例えば、「旨い日本酒を探すために半年、日本を放浪しました。旅の苦労が染みた味をぜひ試してください」とか、「一人で切り盛りしているので、料理を出すのが遅れることもあります。ごかんべんください」などと欠点も正直に話せば、実際に料理が遅れても「しょうがないな」とか、「俺、ちょっと手伝ってあげるよ」などと、親しみのわく店になっていくかもしれません。
また、集客を後押しする特典なども、開店サービスとして、「がんばれよ」と言ってくれたお客さんには「生ビール1杯サービス」などとすれば、そのブランディングコンセプトを貫きながら、かつ茶目っ気を感じさせて集客効果を高められることでしょう。
 このブランディングをベースに、顧客リストが集まったら、「店主の愚痴を聞いてください」などというDMを送り、「最近、月・火が暇で困っています。助けてください」などと、その出来上がったキャラクターの語り口で、集客を促していくのです。

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