第1章 ターゲット その3


DMのぺら一枚を変えることで、集客はどう変わるだろうか?

さて、見込み客についていろいろ考えてきましたが、顧客リストを見たり、ターゲット像を推察したりしても、実際のところ、DMを打ってみないと結果はわからないというのが本音です。プロである私を含め、DMの制作を請け負っている広告代理店でも本音は同じだと思います。
 そこで、本書を読み終わって、実際にDMを打つようになったら、ぜひ、少しづつアプローチを変えて、どんな施策で集客すれば効果が上がるかをテストして欲しいのです。

 実際、ダイレクトマーケティングにおいてテストはとても重要なステップになります。WEBでクロージングページに呼び込むためのLP(ランディングページ)はそのいい例でしょう。LPとは、例えば、楽天の商品ページのように、1Pなのにスクロールして長くコピーが書かれているページです。必ずクロージングページに飛ばすための大きなボタン(「購入」「資料請求」など)が目立つように表示されています。
 このLPは一度作ったら終わりということはありません。冒頭のヘッドライン(大きな文字)や、イメージ写真、今だけの特典など、クロージングに影響する要素を少しづつ変更して、テストを重ねていきクロージングがいちばん上がるように仕上げていくのです。
 しかし、WEBは低コストで頻繁に修正をかけることは可能ですが、DMの場合はデザイン変更・印刷というように費用が掛かってしまいます。

 そこで、DMに入れるぺら1枚だけを数パターン用意し、配布するエリアごとに変えていくという手法をご紹介します。いちばん分かりやすい例は、来場してくれたお礼として用意する特典でしょう。顧客リストをエリアごとに3つに分けて、例えば「①金券 ②自社商品(またはサービス)の割引券 ③来場記念品」といった感じでDMを配送すれば、どのエリアの人の割合が多く来場してくれたか確認でき、次回からの特典選定の参考になるのです。
 但し、金券については注意が必要です。私の経験上でも、最も集客できるのが金券です。それは、どのような人にも価値の分かりやすい特典だからです。問題は、単に金券欲しさで来場される顧客が来てしまうことです。また、「②自社商品(またはサービス)の割引券」は、自社の扱っている商品やサービスをダイレクトに訴求できるので、継続してクロージングできる可能性が高まり、「③来場記念品」も、自社商品やサービスに関連した品であれば、自社のブランド価値を高める効果が期待できます。金券は②や③のように自社とは関係性の薄い特典であるだけに、クロージングは低くなる可能性があるのです。但し、一度に多くの集客を狙っているイベントでは、思い切って金券を使うのもありでしょう。来場特典はケースバイケースで、メリット、デメリットを見極めて使うべきです。

 ぺら一枚を差し替えることでテストを行う戦略は、来場特典だけに限ったことではありません。集客したい日、つまりイベント日をターゲットによって変えるという手法もあります。例えば、顧客リストに小さなお子さんの有り無しという項目があれば、その見込み客を狙ったイベントを組むことができるでしょう。例えば、街の歯医者さんなら、「お子さんが、嫌がらずに、きれいに磨ける、ブラッシング教室」というイベントにして、親御さんだけでなく、お子さんの定期健診需要を狙うといった戦略だって考えられます。さらに高齢者ターゲットであれば、「間違えていませんか? 入れ歯のお手入れ方法。わかりやすくご説明する特別な日へ」といったアプローチで、高齢者の方の定期的な歯の治療などを取り込める可能性だってあります。DMに入れる小冊子を使いまわしながら、ぺら一枚でいろいろなアプローチができる訳です。
 この方法はある意味、この本で推奨している「封筒から最後まで、一貫したストーリーを構築してDMを作る」という点ではイレギュラーです。なぜなら、本来の趣旨なら小冊子も、それ用に作った方が効果が最大化されるからです。よってぺら一枚作戦は、あくまでテストする手法だと思ってください。テストの結果が良かったアプローチは、次のステップとして専用のDMを作ることをお勧めします。

 このぺら一枚作戦での注意点というか、効果をなるべく最大化する方法としては、DMの封筒からこのぺらが見えるようにすることも必要です。紙封筒にビニール窓を作ったり、封筒自体を透明ビニール製にすることで、ぺらのキャッチフレーズが見えるようにすれば、どのような内容のDMかを受け取った瞬間に分かってもらえるからです。例えば、先ほどの歯医者さんの例なら「お子さんが、嫌がらずに、きれいに磨ける、ブラッシング教室」というキャッチフレーズが封筒から見えていれば、開封してもらえる可能性が高まるわけです。
 また、ぺらは小冊子などの内容物の中では目立ちにくいので、目立つ紙色を使用したり、文字を大きくするなどデザインにもインパクトを持たせるようにしてください。窓あき封筒の場合には、ぺらのサイズが小さすぎると封筒の中で動いてしまい、キャッチフレーズが窓からきちんと見えないということも起こるので、デザインする際は気を付けてください。

中小企業や個人商店の方へのヒント
「施策が思いつかなかったら、脚本家になってみる?」

この本のタイトルが「なぜダイレクトメールでBMWが売れるのか?」であることから、中小企業や個人商店の方が、「この本で言っていることは大企業でしか使えないノウハウではないか?」と、誤解されるのが心配でした。なぜなら、この本は普段、広告代理店と付き合いのない中小企業や個人商店の方にこそ、そのマーケティング手法を紹介したいがために書かれた本だからです。

 そこで、誤解を払しょくするために各章の終わりにコラムとして、皆さんのためにメッセージを送りたいと思っています。
 今回の第一章は「ターゲット」でした。今までにも書いたようにマーケティング、すなわち集客を考えるうえでターゲットを見極めることは大変重要になります。DMで言えば、顧客リストの完成度と、それを使いこなす戦術が必要になることもお話した通りです。
 さて、ターゲットや見込み客などと呼ぶと、なんだか難しく、その実像が見えにくく感じたのではないでしょうか。実は、私は脚本なども書いてまして、その手法がひょっとしたら参考になる気がしてご紹介したいと思います。
それは、人物のプロフィールを書くことです。顧客リスト上では、「名前・年齢・住所・仕事・家族構成・趣味」というように、スペックだけで人物のイメージが浮かび上がりにくいと思います。そこで、見込み客と考えるのではなく、ある物語の登場人物として、そのプロフィールを作ると考えてみてください。なんだか、そう考えるだけでワクワクしてきませんか?
 例えば、顧客リスト上では、「名前・小池恵子 年齢・42歳 住所・世田谷 仕事・パートタイム 家族構成・夫と娘(小学生) 趣味・読書」だとします。ここから、このようなプロフィールを作ってみました。

「私の名前は、小池恵子(42)。専業主婦というと暇を持て余してゴロゴロしていると勘違いされてしまうけれど、なかなか毎日は忙しい。朝昼晩の食事をつくったり、掃除をしたり、洗濯をしたり…。まあ、食事は出来合い物を買ったり、掃除はロボットがやってくれたり、洗濯は乾燥まで全自動を使ったりと手抜きはしているものの、小学校でのPTAではついに逃げ切れず役員になってしまった。これが、事あるごとに集まりがあり、パートでも最近、学生が少ないせいか、直ぐに店長からシフトに入ってくれと連絡が来てしまう。ゆっくり読書もできやしない。最近、イラついているせいか肌もカサついていて、私にはきっと癒しが必要なのだと思う」

どうでしょうか? 

 こんな人、あなたの周りにもいるのではないでしょうか?
この人をヘアカットサロンに集客するとしたら、どのような施策が思いつくでしょうか?

 例えば「今週末は、普段、忙しい貴女のためにヘアカットとともに、10分間のマッサージサービスをお付けします。ヘアも、心も、リフレッシュしてください」とか、「女性誌の最新号がたくさん揃っています! ヘアカットとともにゆっくり読書をおたのしみください」とか…。
 人物像がクリアに見えると、施策も具体的に見えてきたりします。
 施策のアイデアに行き詰まったら、ぜひ、試してみてください。

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