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『IPPON!』脱稿まで打ち合わせあと何本!?(14)|原作付きマンガ一緒につくろう計画

前回までの展開はこちらから

(今回の範囲の原作)

うた、背筋を伸ばす。
野口「で、今年はどうだ?」
うた「はい! 大漁です!」
うたの満面の笑みを見て、野口と近藤、(魚じゃないんだから)と顔を見合わせる。
うた「今、半分くらい自己紹介が終わって、陸上経験者が2人、未経験だけど陸上部にも興味があるという子が3人、全部で5人ですね」
野口「おお、いいねえ。歴代最高人数じゃない?」
うた「近藤くんが作った動画の効果ですよ!」
近藤、天パを掻いて照れる。
野口「へえ、今年も作ったんだ、新入生勧誘用の動画」
うた「はい、作りました!」
近藤、(げっ、やばい)という表情。
野口、訝しげ。
野口「おや、どうしたのかね、近藤くん。ちなみに私は、その動画とやらの確認をお願いされていないが……」(“まだ主将”なんですけどね)
うた「いやいや、いい動画ですよ! 野口先輩の練習風景に“ゴリラ”って字幕がついてるところ、爆笑しちゃいまし……た……」
うた、言いながら口を手で押さえ、青ざめる。
 ×  ×  ×
(フラッシュ)ビデオ映像。
近藤、カメラに向けて笑顔で筋肉をアピールする。その近藤に“グラウンドには元気なゴリラもいます”のテロップ。
 ×  ×  ×
近藤「ち、ちがうんです。ちょっと、出来心で」
野口「ほほう。おれの筋肉のサビになりたいようだな」
野口、キラーンと目が光る。近藤を持ち上げ、頭の上でバーベルのように上げ下げする。近藤、持ち上げられながら「カメラに向かって筋肉アピールとか、女子が引いちゃうんですよ〜」と嘆く。
人だかりで「わっ」と盛り上がりが起きる。3人、「おや」という様子。

*第0話の原作全体をおさらいしたい方は『(1)第0本(プロローグ)原作テキスト』で再読できます。

◆原作担当:朽木 誠一郎
◆ネーム/解説:中村珍

※この企画は、2018年までに原作者・朽木誠一郎さんが執筆した原作テキストを頂いて、作画担当・中村が、2019〜2020年にかけて、制作と並行しながら解説しています。


通しネーム(掲載済みの分)

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今回追加されたネーム


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ここからネーム解説


うた、背筋を伸ばす。
野口「で、今年はどうだ?」
うた「はい! 大漁です!」
うたの満面の笑みを見て、野口と近藤、(魚じゃないんだから)と顔を見合わせる。

 さて、背筋を伸ばすうたさん。背筋を伸ばす、というと軍隊のように緊張感をもってビシッと伸ばすものから日常の静かなものまで様々です。うたさんと野口くんの関係性がまだ見えていないのでマイルドな伸ばし方に(…背筋を伸ばしたかどうかさえ分からない程度の、“姿勢がいい”という程度の伸ばし方に)留めておきました。

 ただ、もしこのシーンの解釈が、原作通りの(1)うた、背筋を伸ばす。→(2)野口「で、今年はどうだ?」ではなく、(1)野口「で、今年はどうだ?」→(2)うた、背筋を伸ばす。(或いは1・2がほぼ同時)だったとしたら、部長である野口くんの質問を受けてビシッと背筋を伸ばした…という体育会系のリアクション(もしくは前回分の「おい、遊んでる場合じゃねーぞ!」を受けてのリアクション)の可能性もあるので、野口くんとうたさんの間にはどの程度の序列があるのか、うたさんはどういうテンションで野口くんに対して背筋を伸ばしたのか(そもそも野口くんに対して背筋を伸ばしたわけではなく新入部員獲得というミッションに対する姿勢を表しているだけなのか)は要確認事項です。

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 会話劇が続いて読者さんが飽きを感じないように3コマ目は大漁を表すイメージとして漁船と大漁旗を差し込んであります。(風景を挟んだりモブの動向を挟むという手段もありますが、この後もしばらくグラウンドのシーンが続くため、限りあるグラウンドの風景・限りある“競り”の様子をここで消化してしまうのは避けます。)
 もともとコミカルな演出をしやすいシーンだから採用できる方法なので、シリアスな漫画の場合は風景・小物・キャラクターの動作や表情に頼ることになります。


うた「今、半分くらい自己紹介が終わって、陸上経験者が2人、未経験だけど陸上部にも興味があるという子が3人、全部で5人ですね」
野口「おお、いいねえ。歴代最高人数じゃない?」
うた「近藤くんが作った動画の効果ですよ!」
近藤、天パを掻いて照れる。
野口「へえ、今年も作ったんだ、新入生勧誘用の動画」
うた「はい、作りました!」
近藤、(げっ、やばい)という表情。

 うたさんの「今、半分くらい自己紹介が終わって」 というセリフにより、どうやら“競り”というのは本当に新入生みんなが(或いは相当な人数が)するものらしい…というのを我々が知ることになります。
 1コマ目はとりあえずストレートに自己紹介の風景を描いてありますが、全体で何人ぐらいなのか、待っている新入生たちは目で見て分かるか(待機列とかがあるから、うたさんは「今、半分くらい自己紹介が終わって」というのが分かったのか、それとも予め数字が知らされているのか)を確認の上でどう描くかを決めようと思います。
 新入生の待機列のようなものが分かりやすく存在するなら、そっちの絵を描いたほうがいいので。

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 近藤くんの動画の段。得意げ→やばい、の感情移行は2コマ並列して変化を分かりやすくしています。


野口、訝しげ。
野口「おや、どうしたのかね、近藤くん。ちなみに私は、その動画とやらの確認をお願いされていないが……」(“まだ主将”なんですけどね)
うた「いやいや、いい動画ですよ! 野口先輩の練習風景に“ゴリラ”って字幕がついてるところ、爆笑しちゃいまし……た……」
うた、言いながら口を手で押さえ、青ざめる。

 1コマ目は、“訝しげ”を限界まで拡大解釈した絵になっていますが、ストレートな訝しげな顔(エフェクトも特殊な演出も入れずに、表情だけで訝しい感じを出す方法)でも全く問題ないと思っています。…が、野口くんは元々表情が豊かな人なので(たとえばトレーニングルームの近藤くん初登場シーンなども表情をコロコロ変えておしゃべりしています)ちょっとした訝し顔などではもう表情が目立たないというか、“野口くんの割には”表情薄いなぁ…みたいなことになってしまうため、訝しげを通り越してもうこれゴゴゴゴゴって怒ってるじゃんっていう表情と演出ですが、提案として拡大解釈限界値の絵をはめ込んであります。

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 うたさんも前のページの近藤くん同様に、本音の感想→うっかり口を滑らせた自覚…の感情移行は2コマ並列して分かりやすくしています。


 ×  ×  ×
(フラッシュ)ビデオ映像。
近藤、カメラに向けて笑顔で筋肉をアピールする。その近藤に“グラウンドには元気なゴリラもいます”のテロップ。
 ×  ×  ×
近藤「ち、ちがうんです。ちょっと、出来心で」
野口「ほほう。

 唐突なカミングアウトなんですけどゴリラ好きなので、本格的にゴリラっぽく描きたいところですが、ゴリラは居るだけでゴリラですけど、野口くんはモノクロ作画の都合上で本当は結構腕毛があったとしてもそれほど毛深くは描けないし(モノクロの漫画は黒い線で描くしかないから毛深い感じを出そうとすると設定以上に毛深く見えてしまう…)そもそも言うほど毛深くない肌だし、裸では歩いていないし、どこまで筋肉鍛えてもあの毛深さとヌーディの間みたいなゴリラ感は出ないので大人しく普通にポーズ決めただけの絵が入りました。
 近藤くんも語っている通り「カメラに向かって筋肉アピール」だったと思うので、多分、それほどゴリラっぽくはない状態を悪ノリでゴリラって呼んでいるのかなと想像しています。
 本番の作画に至る場合はもっと動画っぽい画面処理と、テロップらしいデザインになります。

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 近藤くん本人も“天パ”をいじられていて、うたさんのことは虫取り少年のように構い、野口くんをゴリラと呼ぶ。うたさんも自分は虫取り少年扱いをされているし、野口くんがゴリラと呼ばれる動画を見て笑うタイプ。この三人の場合はゴリラと呼ばれる野口くん含めて一応バランスが取れているんだろうなという解釈をこのシーンでもしています。
 とは言え、外見を構う会話の受け止め方は個人差が大きいところで、本気でなんとも思わず笑っていられる人もいれば、そのまま不登校になって引きこもってしまうほど傷を感じる人も居て、どちらが正常な反応かという話ではないし、どちらが強くてどちらが弱いという話として片付けることはできません。
 デリケートなところなので、この“悪ノリ”をどう着地させるのか(自分たちの間では合意の上だけれども、一般的に誰彼構わず推奨できるノリではない。みたいなことを自覚的に語るシーンが今後出てくるのか。それとも、この悪ノリも含めて三人の今現在の等身大でここをスタート地点にだんだん変わっていくのか。或いはこのままか、などなど…)は検討の余地があるかなと思っています。三人が仲良し同士として合意の上で楽しんでいる、三人の間ではこういうノリが好きで、三人はこういう軽口をこの三人以外には絶対していない。という前提を持った上で、誰も傷ついていないという保証を受けて見ている分には微笑ましいんですけどね(笑)


(野口「)おれの筋肉のサビになりたいようだな」
野口、キラーンと目が光る。近藤を持ち上げ、頭の上でバーベルのように上げ下げする。近藤、持ち上げられながら「カメラに向かって筋肉アピールとか、女子が引いちゃうんですよ〜」と嘆く。
人だかりで「わっ」と盛り上がりが起きる。3人、「おや」という様子。

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