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父親からもらった思い出を子供にも残してあげたい話 -川に落ちた帽子編-

だいたい4歳とか5歳とか、小学校に入る前くらいの記憶って、誰しもがちょっとは大人になっても覚えてるもんだと思って。

で、それって結構個人的には大事な思い出なんじゃないかなって思って。

そんな思い出について、ちょっとずつ書いてみたりしています。

今回書いてみるのも、そんな話。

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私は小さい頃、野球がすごい好きで、特にヤクルトスワローズのファンでした。

なぜかというと、いたって簡単で、ヤクルトを飲むのが好きだったから。

あとはまあ、父親が巨人のことが好きで、当時はテレビで巨人戦の野球を見てばかりいたので、それのアンチテーゼとして巨人は好きになれなかった、てのもあったと思います。


で、家の近くの球場にヤクルトスワローズが試合にやってくると、よく父親が私を連れて野球を見に行ってくれました。

テレビで見る野球とは違って、球場で見ると、球がすごい高いところまで上がって行くのが見えて、あーすごいなーって子供ながらに思ったこともあったし。

ホームランが出たりすると、わぁーって球場中が大きな歓声に包まれるのが、迫力あって良かったんですよね。

まあ、私が見に行く時に限って、相手側の選手がホームランを打っちゃうんですけど。

で、そんな時に買ってもらったのが、ヤクルトのロゴが入った帽子なんですよね。

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私が小さい時の写真は、そのどれを見ても私がヤクルトの帽子を被っているところが写っています。

旅行行く時やら、アスレチックとかに行く時やら、特に普通の日やら。

何かにつけてその帽子を被っていたことはよく覚えています。

なんなら、野球帽の裏のメッシュの部分で目を隠し、仮面ライダーごっこしたりとか。

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そんなある日、私の実家のそばに川があって、その近くで親と散歩してたんですけど。

その日は風が強かったんですけど、それでも、私はヤクルトの帽子を被っていて。

で、御多分に漏れず、帽子が風に煽られて飛ばされてしまい、川の中に落ちてしまったんです。


川と言っても、水がゆっくり流れる用水路的なものなので、水面は私が立ってるところよりだいぶ下にあるんです。

もちろん、手も届かないし。


ああ、飛ばされちゃったなーと思ってたら、父親がダッシュで家に帰ったんです。で、長い棒を持って、おまけに母親も連れてきたんですね。

で、川の中にその長い棒を突っ込んで、頑張って拾おうとしてくれたんです。

うわ、マジかよ!取れるのかよ!って思ったんですけど、父親が必死な顔になってて。風も強いから、一筋縄でもいかず。

そうこうしてるうちに雨も降ってきて。母親は最初は見てただけだったけど、途中から父親の体を支え出して。

もう、そりゃあ家族総出。

もう、帽子なんて諦めればいいじゃん!て思ったけど。そんなことも言わず。


そんな親の姿を見て、子供ながらにも「俺が大切にしてた帽子を頑張って拾おうとしてくれてるんだろうなー」って言うのは伝わってきて。

途中から、「パパ頑張れ!」って応援しちゃってたもんね。それは今でも忘れないなーと。自分もずぶ濡れで。

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無事にヤクルトの帽子は、父親が拾い上げてくれました。

用水路に落ちちゃってたから、ちょっと泥っぽい色はついてたんだけど。そこは母親が綺麗に洗ってくれて。

それからもしばらくは、そのヤクルトの帽子を大切にしてたなー。

成長して頭のサイズが大きくなって、別の帽子に乗り換える時も、その時の記憶が蘇ってきたし。

で、その乗り換えた帽子が何の帽子だったか全然覚えてないし。


やっぱり、自分が大事にしてるものを必死に守ってくれた親の姿は覚えてるもんだなー、と。

物を大事にする、っていうのも大切なんだけど、その親の姿を見て、ああ、自分て大切にされてるんだな、ってのを実感できたというか。

そういう背中を子供に見せれる日、来るかなー?

来るといいなー、と思って。

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