大人が忘れかけた“コドモ”の生態を解説します
大人になったと感じる時、それは小学生がかわいいと思った時だ。
小学生というのは我々と同じ人間なのに、まるで別の生き物のように感じる。きっと、“コドモ”という生き物なのだろう。
彼らは独自の文化の中、独自の思考回路を回し、毎日元気に生活をしている。
誰しも元はコドモだったはずなのに、いつしかそれがどんなだったか忘れてしまう。親戚や近所など、近くにいない場合はなおさらだ。
そこで今回は、教育雑誌の仕事上、月1で小学生に「将来の夢」を聞いて回る仕事をしている私が、コドモの生態について明らかにしていこう。
【生態その1】やたら正義感が強く、どうでもいいルールに拘る
彼らは基本的に真面目。どこでそう教わったのかは知らないが、人の間違いは必ず指摘して、自分が相手に勝っていることをアピールする。
私 「(午前11時59分)はい、おはようございまーす!」
コドモA「はい! もうお昼だから、”こんにちは”が正しいと思います」
コドモB「はあ? 何言ってるの。まだ12時前だからおはようございますでいいんだよ」
コドモA「はい! 12時になったー! 僕が正しいー!」
コドモB「……」
このように、どうでもいいことに引っかかってしまい、前に進まないのも特徴と言えるかもしれない。学校から帰ってくる途中に、水たまりやら野良猫やらに引っかかって、大したことをしていないのに、帰りが遅くなった経験はなかっただろうか。それに近いと思う。
【生態その2】やたら平等を好む
「将来の夢」の誌面を作っていて、一番困るのは内容が被ること。「米倉涼子のドラマを見て医者を志すコドモ」が多過ぎるのだ(まず医学部の受験で失敗するかもしれない)。
そんな中、他の子と被らない独特な夢を提示する男の子がいた。取れ高が十分だったので、早々に終わりでいいと判断した。
私 「OK! 終わりです、ありがとうございました」
コドモ「えーもう終わり? ずるいよ! ○○くんには5つ質問したのになんで僕は2つだけなの? あと3つは?」
彼は、他の人が取材を受けているのをちゃんと聞き、質問の個数を数えていた。そして、自分が聞かれるのを楽しみにしていたのだ。これは申し訳ないことをした。仕方ないので好きな給食や動物、テレビ番組を聞いて、平等に仕立てた。
【生態その3】大人を完璧なものと思い込む
彼らは大人を”完璧なもの”だと思い込み、どこか敵対視している。こちらがコドモだと定義しているのに対して、先方はオトナという風に区別しているのかもしれない。
私 「将来の夢は何ですか?」
コドモ「チャレンジャー海淵の大深度小型無人探査機$%&¥でしたい!」
私 「それって、どんなことする仕事なの?」
コドモ「えー大人なのにそんなことも知らないの?」
私 「そうなの。教えてくれる?」
コドモ「世界一深いマリアナ海溝をね%&&’&$#”だよ!」
興味のあることにだけはやたらと詳しく、それが常識なのかどうかという区別はつかない。
そして「大人なのにそんなことも知らないの?」と言った後は、ドヤ顔をしながら教えてくれる。彼らは“物知り”だと思われることが大好きなのだ。
ちなみに1回の取材で4~5回は「大人なのにそんなことも知らないの?」と言われる。それが流行語なのか、はたまた私がバk……そんなはずはない。
【生態その4】嘘がつけない
先程のように明確な夢が決まっている子もいれば、そうではないコドモもいる。
私 「将来の夢は何ですか?」
コドモ「世界を飛び回る弁護士になりたいです」
私 「へーすごいね! どうしてそうなりたいと思ったの?」
コドモ「お母さんにそう言えって言われたから」
悲しいかな、彼らの辞書に嘘という文字はない。親は、その夢を持ったきっかけまでセットで覚えさせるべきであった。
しかし、私も編集長もみんながコドモじゃなくて本当によかった。コドモだったら、このまま雑誌に掲載して、親は発狂しただろう。
【生態その5】可能性が無限にある
もしかしたら、これが一番の特徴かもしれない。とにかくコドモは自由で、将来が無限に考えられる生き物なのだ。
私 「将来の夢は何ですか?」
コドモ「どんな難病患者も治して笑顔にできるお医者さん」
私 「(おうちで練習してきたのかな)へー!お医者さんになろうと思ったきっかけは?」
コドモ「結構前にテレビで救命救急24時を見て、かっこよかったから」
私 「それって、いつ頃見たの?」
コドモ「えっとねー、2週間前!」
コドモにとって2週間は、結構前のこと。そして、夢は無限大で、次々と移り変わる。これからの頑張り次第で、医者にだって俳優にだってなれちゃうんだから、うらやましい限り。
そんな彼らと話していると、楽しくて仕方がない。次は何を言うんだろう?とワクワクする。
書いていて気づいたのだが、こういったコドモのような生物は、大人にもいるのではないだろうか。
現に還暦を過ぎたうちの父は「そんなことも知らないのか!」が口癖で、母にドヤ顔でマニアックな解説をしているし、会議中にどうでもいいところで引っかかってしまうおじさんだってたくさんいるはず。
そんな時にイライラせず、コドモだと思って笑って許せる時がきたら、「本当に大人になった」と言えるのかもしれない。
編集:アカ ヨシロウさん
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